「類まれな演出力に舌を巻きます。」僕の帰る場所 バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
類まれな演出力に舌を巻きます。
本作の何が驚くか?その作風です。
ドキュメントタッチ、、、と言うか
ドキュメント「風」じゃないんです。
演技、カメラワーク、演出、ざらついた映像
完璧なまでに「ドキュメント」なんです。
本当にある家族の密着ドキュメントを
観ている気がしてきます。
これは単純にすごいことです。
家族役の皆さんは演技経験ないのです。
ですが、演出プラン実現のための準備を十分に
念入りに行うこと、プランを全うすることで
このような作品が作れるのですね。
驚きです。本当に素晴らしいです。
子供達の演技・・・いや縁起超えてます。マジで。
本作はある在日ミャンマー人家族の物語です。
その家族に発生した事件によって、家族それ
ぞれが心落ち着ける場所を見つけようと足掻く
お話。人間がどのように居場所を作り、家族が
どのように困難に立ち向かっていくのか?
家族の在り方は?リアリティー感200%で
伝えてくれる作品です。
ですが、藤元監督はこの家族の物語を描いた
のは「ある現実を報告する」目的があったと思います。
この家族の物語は、ある出来事が発生した
「後」の話です。後の姿をリアリティーたっぷりで
描くことで、Keyとなる「出来事」に重みををつけよう
としているのでしょう。
その問題点は「低い難民認定率」と
「入国管理局の外国人への対応」です。
(だと思います)
今、こうなんですよ!ということを広く報告したい
のだと思います、藤元監督は。
確かに、僕自身はよく知りません。
最近、入管施設でスリランカ人の女性が亡くなられた
ことが報道されていて、何か変だなぁって思う程度。
本作の事案とは異なると思いますが、同列かな?と。
年々、海外から日本にくる方々が増えてきていますが
進化、改善していない日本の入国の仕組みについての
問題提起として本作があるのだと思います。
問題提起の作品としては十分な作品になっています。
ただ、残念な点もあります。
本作では入国管理局(窓口対応含め)の対応が
描かれていますが、これはあくまでミャンマー人側の
目線で語られていることを忘れてはいけません。
つまり、当該のミャンマー人の方から見たら「こう見える」
ということです。
その対応をせざるを得ない理由があるはずなのですが
描かれていないのです。ミャンマー人家族の立場から
見た入国管理局が描かれるので悪印象しか持てない
のです。(意図的にそうしているように見えますが)
本作はドキュメンタリーではないですからそれまでを
求めてはいけないことは十分わかっていますが・・・・、
少なくともなぜ国側はそのような対応をするのか?を
描いて欲しかった。そうすればより問題点が明確に
なったのではないか?と思います。
願わくば、この心象的にもよろしくない入国管理局の
方々を見ただけで「けしからん!これではいけない!」と
短絡的な考えに陥る人が生まれないことを祈ります。
単純な話ではないと推測します。
さまざまな事象に対応しきれない、時代に合わない
現実あるという事実を知り、より詳しく知り、考えたいと
思うキッカケになる作品であってほしいと願います。
良作です。