「ガンダムを舞台にした韓流ドラマ」機動戦士ガンダム Twilight AXIS 赤き残影 曽羅密さんの映画レビュー(感想・評価)
ガンダムを舞台にした韓流ドラマ
本作の劇場パンフレットの冒頭にサンライズ・プロデューサー谷口理の「気軽にご覧になってください」という言葉が掲載されている。
またストーリー・コンセプトデザインを担当した光吉賢司と石川孝一がインタビューに答えて「サンライズは若い客層へ向けると判断」して本作を制作したとも述べている。
おい!待ってくれ!
そもそもこのパンフレット自体がサンダーボルトのパンフレットとの抱き合わせでしか買えない2200円もする特別版であって、むしろ完全なるオタク商法にしか思えないし、映画の日ですら1100円にならない一律1800円の入場料金のどこが若い世代向けなのだろうか?
本作は実験的な作品の位置づけらしいが、料金のせいで結局は頭の固いオールドファンしか劇場で観ないのでは全く無意味だと思うが、そこはどう考えているのだろう?
筆者が観た時は、金曜日の午前中で観客の大半がおっさんでちらほらと妙齢の女性を観ただけである。
平日でも午後や土日では客層が変わるのだろうか?
東京以外の地方の映画館では2本同時上映が当たり前だった筆者が高校生の時ですら、1800円の入場料金は高いと感じた。
20年デフレが続き貧困化した日本で一律1800円の料金設定で若い世代に作品を観て欲しいという発言がどれほど実情に即していないかもう一度考え直した方がいい。
そもそも海外では映画の入場料金自体がもっと安いと知っていれば尚更である。
内容はシャアやサザビー、ララァに絡めても絡めなくてもどちらでもいいと思えた。
女性が主役の作品があってももちろん構わない。
宮崎駿作品も主役が女性の作品は多い。
攻殻機動体の主役も草薙素子だ。
しかし本作の主役のアルレット・アルマージュには戦争という現実世界を生きてきた女子としてはとても埋もれてしまうようなか弱い印象しか受けず、30分にも満たない短編の本作では感情移入しにくい。
それにニュータイプ実験で心の傷を負った少女という設定はもう見飽きた。
キャラクターデザインやメカデザインは本作のようなものがあってもいいと思うが、ダントン・ハイレッグとの淡い恋愛劇はガンダムでやらなくてもいいような気もする。
モビルスーツの戦闘もあるにはあるが、酷なことを言うと全体として何も残らなかった。
監督である金世俊の名前を見て在日朝鮮人かと思ったが、パンフレットによれば金は韓国出身らしい。
上記ストーリー・コンセプトデザインの2人がどこまで脚本に関わっているのか不明で、脚本も金が担当しているという。
以前は筆者も韓国映画を観ていたが、暴力も含めてやり過ぎる多情気質な作風がどの作品にも共通しているように感じられてうんざりしてしまい今や韓国作品というだけで食傷して一切観ない。
さすがに本作は日本の作品であり、短編であることも手伝ってかそこまで過剰ではない。同時に面白くもない。
さしずめガンダムを舞台にした韓流恋愛ドラマといったところだろうか。
例えが寒流…で申し訳ない。
制作者側は「若い世代」を強調しているが、そもそも本当に若い世代に本作が受けるのだろうか?
そして言うほど新しい試みなのだろうか?
是非「若い世代」に話を聞いて、頭の固い筆者の駄目な部分を打ち壊してほしい。