劇場公開日 2018年2月17日

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「こじらせがなんだ」パンとバスと2度目のハツコイ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5こじらせがなんだ

2022年7月7日
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鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

幸せ

萌える

“こじらせ女子”や“こじらせ男子”という言葉を良く聞くが、どういう人たちの事を指すのかいまいち分からない。何でも、
自分や恋愛に自信が無い。恋愛に妙な価値観を持っている。ひねくれた性格。…などなど。
本作の主人公、ふみもそう。

2年間付き合った恋人からプロポーズされるも、「ずっと好きでいて貰える自信が無いし、ずっと好きでいられる自信も無い」と踏ん切り付かず。結果、オサラバ。
人が人を好きになる理由が分からない。
でも、そんな彼女だって“好き”になった事が。

中学時代の同級生で、初恋の相手、たもつ。
突然の再会に“こじらせ女子”も心浮き足立つが、相手には困った事情が。
結婚して子供もいるが、現在バツイチ。浮気した元妻の事を今も想い続けている。しかも、復縁したいとまで…。

たもつとの再会を機に、中学時代の友達、さとみとも再会。
彼女も結婚し、利発な子供もいて、絵に描いたような幸せママ。
…中学時代、彼女とはちょいと“訳あり”。さとみはふみに想いを寄せていた…。

“こじらせ女子”と、
“彼女が好きだった人”と、
“彼女を好きだった人”。
もし、自分がその渦中だったら?…と思うと、何と言ったらいいか、何て言ったらいいか。
そんな関係故、ロマンチックだったり、ハッピーエンドな方向には転がらない。
好きだった人と再会して未だ想っている心に気付くが、相手の心は別に。
復縁など無理なのは分かってるのに、それでも忘れられない。
一見今幸せだが、かつての想いときっぱり決別した訳ではない。
歯痒くて、もどかしくて、不器用で。
切なさや哀しさをちょっぴり滲ませつつ、何だか不思議な気持ちに包まれる。

ふみの楽しみは、勤めるパン屋の仕事終わって帰り道、パンを食べながらバスの洗車を見る事。
そのバス会社にたまたまたもつが勤めていて、洗車中のバスの中に乗せて貰う。
変わった趣味嗜好だが、誰だって少々変わった好きなもの/事がある。理解されなくとも、それに触れられれば、小さな幸せ。
突然妹が上京してきて、姉妹二人暮らし。歯磨き、目薬指し、パジャマトーク…。萌え~。
美大の予備校に通う妹の画のモデルになるふみ。実はふみも以前美大に通っていたが…。
コインランドリーに置いてある“孤独”を題材にした本の数々…。題材とコインランドリーの空間と自身の境遇が妙にリンクし…。
夜明けの空。たもつを自宅アパートに泊め、その帰り道、一緒に見る。
何か特別なものではない。何かがここから劇的に始まるという訳でもない。
でも、その“何か”の糧になりそうな…。

深川麻衣、山下健二郎、伊藤沙莉、志田彩良らのナチュラル好演。
それぞれのやり取り、触れ合い、佇まいに魅せられる。
恋愛映画ではあるが、くっついた惚れた腫れたようなタイプの恋愛映画ではない。
何処か風変わりだけど、人と人の心と交流、この作風=空気感が心地よい。
こじらせながらも、愛おしい。
それが、今泉力哉の恋路。

近大