劇場公開日 2018年2月17日

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「【”人をキチンと愛する事が出来ない女性が、少しずつ”孤独感”に気付いて行き、新たな一歩を踏み出す過程を抑制したトーンで描いた恋物語。】」パンとバスと2度目のハツコイ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”人をキチンと愛する事が出来ない女性が、少しずつ”孤独感”に気付いて行き、新たな一歩を踏み出す過程を抑制したトーンで描いた恋物語。】

2020年11月19日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

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幸せ

ー2年間付き合って来た男性から、ある日プロポーズをされても”私をずっと好きでいて貰える自信もないし、ずっと好きでいられる自信もない‥”と言ってやんわりと断ってしまうフミ(深川麻衣)。そんな言葉を口にしてしまう、理由が後半徐々に明らかになる。-

◆”少しこじれた恋愛映画を作らせたらこの人!” 今泉力哉監督が作品で展開させる妙味の数々。

1.”ベーカリー ナチュラリー”で働くフミとバスの運転手のタモツ(山下健次郎)と主婦ホシ・サトミ(伊藤沙莉:良い。ここ数年ずっと注目している女優さんである。)との関係が中学時代から続いており、
 ー フミはタモツが好きで、中学時代にサトミのアドバイスを貰いながらレヴ・レターを出している。だが、サトミは実はフミの事が好きと言う、微妙な関係性の設定の上手さ。ー

2.フミはタモツと偶然、再開するが彼には、既に奥さんアイコと男の子がいた・・。だが、アイコさんは不倫をしているらしい・・。
 - フミは表面上、冷静さを装っているが・・-

3.フミの自宅の洗濯機が壊れ、コインランドリーで洗濯をしている時、置かれていた本棚の中の数々の”孤独”な本。
 ー フミは”ポール・オースター”の「孤独な発明」を手に取り、洗濯が終わる間、読んでいる。本棚には、”ガブリエル・ガルシア・マルケス”の「百年の孤独」もある・・。ー

4.時折、呟かれる台詞。
 ・”どうしたら、本当の気持ちを伝えられるんだろう・・”
 ・サトミがフミに”フミちゃんは結婚しないの!” と言うシーン。
 -彼女はフミの事が今でも好きだが、男性と結婚して、子供もいるのだ・・。ー
 ・”片思いだから、ずっと好きでいられる・・。”

5.タモツとフミがサトミの家で、”クッキーやパン”を作るシーン。本当はサトミも一緒の筈だったが・・。
 - 直ぐに分かる、サトミの計らい・・。-

6.タモツとフミが高原で叫ぶ言葉。タモツはアイコが不倫相手と”ルクセンブルグ”へ行くのにまだ、好き・・と言い、フミは、”中学からの想いを叫ぶ!”

7.タモツにある景色を見せたいと家に呼ぶフミ。
 ”ベーカリー ナチュラリー”の包装紙に、”Alone Again"と書くフミ。
 - 上手いなあ・・。ギルバート・オサリバンを聞いた人なら、あのシーンを見たらすぐ分かる・・。-

8.早朝の風景をタモツに見せるフミ。
 そして、呟く言葉。”その本質を知っても・・”
 - 一歩、壁を乗り越えたね。フミさん・・。-

<フミが緑内障の進行を抑えるために、定期的にさしている目薬の意味。それは、自分の視野そして観ている世界が”これ以上、狭まらないように・・”という大事なオマジナイ。
 そして、彼女は中学から好きだったタモツと二人での新しい一歩をあの、朝日が上がる前の”ブルー・アワー”の中で踏み出したのだ。
 今泉力哉監督が紡ぎ出した、素敵な恋物語である。>

NOBU