「時代とも設定ともミスマッチ」マイ・プレシャス・リスト つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
時代とも設定ともミスマッチ
そもそも、キャリーが全然コミュ障じゃないんだから、感想にも困っちゃうわね。週末パーティーに行かなかったり、いい歳して恋愛経験が少なかったりしたら「コミュ障」認定されちゃうのかしら?アメリカ怖いわー。
「凡人にレベルを合わせてまで話したくない」と臆面もなく言えちゃうのは、天才だからではなく子どもだからだ。話が合わないのは「レベルが合わない」のではなく「興味が合わない」のだよ。
知的活動に興味がない事を「低俗」と喝破するのはいささか早計というものではないかな?
キャリーの「天才」エピソードも特に無いので、天才コミュ障よりフツーの引っ込み思案女子にしか見えないのが、この映画の最大の弱点。
「引っ込み思案」と書いたけど、本当に奥手な女子ならば窓の外のイケメンには話しかけないだろうし、金魚も返しに行けない。
お父さんの恋人発覚や、セラピストの不倫発覚にこの上もなく動揺するのも、天才とかコミュ障とか関係なく、ただの思春期女子だよ。
そう、ただの思春期だと思えばそんなに悪くないのかもしれない。
キャリーを演じたベル・パウリーは可愛かったし。
子どもの頃好きだったことをして、自分を取り戻すメソッド自体も何だかな~、と思う。
だってキャリーの一番好きなことって読書でしょ?それって今でもどっぷり、生活の大半を占めてることでは?
一番好きな本は確かに特別な本で、それを元彼から取り戻すエピソードが一番大きい「リストの項目」かもしれない。
…じゃあキャリーが今もグジグジ悩んでることって、初恋を失った痛手なんじゃ?
そう、これは期待通りに運ばなかった初恋を乗り越え、新しい恋を探すラブコメだったのだ!
そう考えると辻褄あっちゃうな~。いつもトゲトゲ心を苛めてくる恋の傷。そのささくれを一個ずつ癒して、親の新しい人生や他人の価値観を許容できる、優しい気持ちになっていくの。
失恋から立ち直る、新しい恋の物語ならそんなに悪くないのかも。それを「すべての女性に贈る、新しい自分を見つける物語」とか言われちゃうと、ちょっと苦しいよね。
だって新しい恋を見つけられない女は無価値、って言われてるみたいな気持ちになるから。社交的で、仕事も恋も順風満帆じゃなきゃ幸せとは言えないの?それって価値観の押し付けじゃない?
「私は私、Born this way!」がトレンドの現代で、この締めは無いよね。
そんなわけで、なんともむず痒い気持ちになった映画なのでした。