わたしは、幸福(フェリシテ)のレビュー・感想・評価
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リアリズムとスピリチュアルが混在する慈愛の物語
経済状況も治安も最悪の街、コンゴのキンシャサで、バーのシンガーとして日々マイクに向かうヒロイン、フェリシテの、まず、一見疲れているようで,実は現実を受け容れていこうとする強い目線に釘付けになる。アフリカン・ミュージックがなぜ人々の心をかくも揺さぶるのか?そこには限りなく乾いた大地と、そんな自然との語らい、そして、人々のおおらかさが凝縮されていることを、この物語から読み取ることが出来る。厳しい日常と対峙しながら、夜になると精霊に導かれるようにして森や湖に分け入り、その都度生まれ変わったかのように再生されていくフェリシテ。リアリズムとスピリチュアルが混在する物語からは、神から命を与えられたすべての人々への慈愛がこぼれ落ちて、見終わると何とも幸せな気分になれるのだ。
タイトルなし
むせかえるようなコンゴ
音楽目当てで観に行ったのでわりかし満足。
エンタメ要素がない作品なのでそういうのが苦手な方にはお勧めできない。
幸福という名を持つ主人公のフェリシテだが、常に不機嫌でちっとも幸せそうじゃない。
日本人の私には、ふてぶてしくて超自分勝手でワガママにも見え、いまいち同情できない。ずっと異質なものを見せつけられている感じだった。
ただ、彼女はけして愚痴をこぼさない。不満に満ちた現状を変えるための意見やお願いの言葉は口にするのだけど、愚痴ではなく行動だ。そんな態度は清々しくてカッコよかった。彼女は自分の生活を守るために必死だった。厳しい現実をパワフルでタフに生き抜こうとしている。
フェリシテたちの目線を通じてコンゴの街のリアルな熱量を鬱陶しいくらいに感じた。誇張も美化もしていないであろう彼らの暮らし。(アフリカへ行ったことはないのだけど)
オカピが登場する夢のシーンの森もきっと身近に実在するのでは。
そしてお目当てのコンゴ音楽。
場末の酒場での演奏シーンは、場所、音楽、場にいる人々が混じりあって圧巻だった。そこでしか聴けない音楽。
独特のリズムで歌われる彼女の歌は諦めのような怒りのようななんともいえない哀愁があり、カサイオールスターズの演奏とあいまって、エネルギーにあふれていた。
ストーリー的には、うんざりするほど貧しさと不幸がひたすら続くのだけど、ラストには彼女の笑顔も見え、ほんの少し幸福の兆しも感じられる、そんなラストで少し安心した。
出口のない陰欝から賛美へ
最後に
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