劇場公開日 2018年2月17日

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サニー 32 : インタビュー

2018年2月17日更新
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4回死にかけた北原里英の根性を称えるピエール瀧&リリー・フランキー

人気アイドルグループ「NGT48」チームNIIIのキャプテンを務める北原里英が主演する「サニー 32」が2月17日、全国公開された。国内の映画賞を席巻したクライムサスペンス「凶悪」(2013年)の白石和彌監督、ピエール瀧、リリー・フランキーとタッグを組んだ異色の“アイドル映画”。北原、瀧、リリーの3人が、過酷だったという厳冬の撮影現場を、爆笑トークで振り返った。

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北原が演じるのは、平凡な毎日を送る中学教師・藤井赤理。24歳の誕生日を迎えた夜、2人組の男(瀧、リリー)に突然拉致され、雪深い山麓の廃屋に監禁されてしまう。2人組は、14年前にカッターで同級生を殺害し、「犯罪史上、最もかわいい殺人犯」として、ネット上で神格化された11歳の少女サニーの熱狂的な信者。赤理をサニーだと信じて、犯行に及んだのだ。正気を失いながらも、必死に逃亡を試みる赤理。やがて、その立場が逆転して……。先読み不能、どんでん返しの連続のストーリー展開。意外なことに、「凶悪」のスタッフ、キャストとの仕事は、北原たっての希望だったという。今春のグループ卒業発表後、初の主演映画となる。

北原里英(以下、北)「(映画のスーパーバイザーを務める)秋元(康)先生から『北原はどんな映画に出たいの?』と聞かれた時、『凶悪』を見た後だったんです。すごく面白くて、心に残っていたので『凶悪のような映画に出たいです』と言いました」
 リリー・フランキー(以下、リ)「もうちょっとねぇ、映画の趣味が良けりゃねぇ……(一同笑)。1発目にやるべき映画はいっぱいあるはずじゃないですか。普通、卒業した後は横に山崎賢人くんとかいそうだけど……」
 北「いえいえ、ベストアンサーだと思っています。『凶悪』のお二人に囲まれて一番幸せです」
 瀧「『凶悪』の、どのポジションに自分を当てはめていたわけ?」
 北「自分を当てはめたりせず見て、すごい映画だなと。見終わった後にものすごく精神的に……。ズシンときまして。でも、そこがとてもいいな、と」
 リ「アイドルとしては正統派だったのに、映画の趣味は全然、正統派じゃないね」
 北「そうなんです。元々、暗いというか、救いのないような映画が割と好きで」
 リ「病んでいるってことじゃないかな(一同笑)。やっぱり、AKB48で長年、活動して華やかな世界にいたから、やっぱ薄暗いものに対する憧れが出てくるのかも」
 北「そうかもしれません。わたし、影がないんです。明るくて……自分で言うのも何なんですが(笑)。太陽の下が一番似合うと思っています。色も黒いし。だから、影のある人に憧れがあるのだと思います」

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映画は2017年2月2日、北原が所属する「NGT48」の拠点でもある新潟でクランクイン。厳寒のロケは想像以上に過酷だったという。横殴りで吹き付ける雪、風、霙。おまけに、サニー信者たちから祀り立てられるヒロイン役の北原は、アイドルの舞台衣装のような薄着で、しかも、素足、裸足同然。瀧も低血糖症に陥るほどの寒さだった。

瀧「浜で撮っていた時は多分、氷点下。横殴りの雨に混じって5ミリぐらいの雹がバチバチ飛んでくるんですよ。生き埋めのシーンなので、下には死体となった役の方が唇の色を紫にしていて、その顔に雹がバンバン積もっていく。これはエラい状況だなと思ったんですけど、1回引っ込んじゃうと、またセッティングに時間かかるじゃないですか。だから、僕ら結構な時間、立ち尽くす状況になってしまった。そしたら、どんどん体温が下がってきて、ちょっとガタガタ震えてきた。これは、富士山で食らった低血糖症だと思って、『ブドウ糖を持ってきてくれ』と言ったんです。飲みながら天気を待ちました」
 リ「雪がない、海岸線のシーンが一番寒かった。海岸線は風が吹いていて、雪が積らないじゃないですか。雹が顔にバチバチ当たるのに、まだカメラを回しているんだ?って、思いましたね。俺と瀧はもうバリバリ防寒していますけど、この人は生足で、ドン・キホーテで売っているみたいなベラベラの衣装。もう死んでもおかしくないですよ」
 北「4回くらい死にかけました。雪山でピンクの衣装を着て逃げるシーンが一番死にかけたなって思うのですが、横殴りの雹の時もつらかったですし、最後のワイヤーアクションで、屋根から飛び降りるのも怖かった。瀧さんにふきんを口に突っ込まれた時も、死ぬかなと思いました」(一同笑)

白石流演出を「肉体的にサディスティックなことを強いる」と評するリリー。そんなリリーも瀧も、北原の女優根性には頭が下がる思いだった。そのすごさとは何か?

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リ「やっぱり、今まで(アイドルとして)舞台に立っている回数って、すごい数じゃないですか。だから根性が違います。普通の役者だったら断るところを、『できる』という前提でやりますから。キャリアって、年月じゃなくて場数じゃないですか。すごいキャリアを積んでいる人の根性を見たと思います」
 瀧「この現場でお会いするまで、(北原の)AKB48の側面は全然知らなかった。これも、アイドル映画の一種なんで、アイドルたるもの、そこでどう見られたいかというのは、計算や戦略はあると思うんですよね。これはできる、これはできない、とか。そのリミッターを解除している感じがしましたね」
 北「約10年間、AKB48グループの活動をしてきて、学んだことを活かせる場面はあったかなとは思います。例えば、教師役。今、グループのキャプテンをやっているのですが、一番の年離れている子だと、中学生。教師と生徒くらいの年齢差があるんです。その子に何を言っても響かなかった経験があるので、『赤理の気持ち、分かるな』と思ったことはありました。精神的にも肉体的にもツライ思いもちょくちょくしてきていたので、乗り越えられたというのはあると思います(笑)」

「凶悪」の路線を継承するバイオレンスな展開だが、白石監督の中では「純然たるアイドル映画」という位置づけ。「往年の角川映画でも、アイドルに過酷なことを強いていた」といった趣旨の発言をしている。

リ「いやいや、薬師丸ひろ子さんが、ピエール瀧から顔を舐められるシーンとか、ないでしょ? 同じアイドル映画でも、アイドル虐待映画ですよ、これは」(一同笑)
 北「確かに。初めて舐められました」
 リ「撮影中に瀧が『俺が北原さんの顔を舐めるのと、殴るの、北原さんのファンはどっちが嫌かなぁ』って言うから、俺は『どっちもじゃね?』って言ったんですよ」
 瀧「じゃあ、俺もうヤバイんじゃん、両方やっているし」
 リ「ファン心理の中では、アイドルを自分だけのものにしたいってあるじゃないですか。そういうものを、映画では状況的に描いている。ある意味、アイドル映画としてはほんと、ダークサイドでいいですよね。里英ちゃんの中では、アイドル映画として見られるのはすごく抵抗があると思うけど、白石さんが、アイドル映画というカテゴリーで撮っているんだとしたら、多分、アイドル映画の中でも、一番ヤバイ映画にしたかったんだろうな」
 北「そう、思いました」
 リ「この映画の中で描かれているヤバさは、いわゆるネット社会のアイドルに渦巻く周辺じゃないですか。邪悪さとピュアな感じが混じっている感じっていうか。だから、ポカーンとするところはいっぱいありますけど、現実って、こんな感じだなーっていう風に感じます」
 北「完成したものを見るまで気付かなかったです。サニーは神だと思って演じていましたが、確かに言われてみれば、これって、ネットアイドルじゃないですか。映像を配信して、信者を集めて……。完成してから、あ、これはアイドル映画なんだと気付きました。(監督は)撮る前からアイドル映画を撮りたいとはおっしゃっていましたが、脚本からはアイドル映画感を読み取れなかった。私の力では(笑)」
 リ「アイドルっていうのは、偶像っていう意味として。ネットの偶像としてのアイドル映画なんですよ」

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今春、グループを卒業する北原。これまでも、「グラッフリーター刀牙」(12)、「ジョーカーゲーム」(12)、「任侠野郎」(16)などの映画に出演してきた。今後は女優業をメインに活動するのか?

北「AKB48に入る前から、女優さんになるのが夢でした。AKB48をやりながらも、ずっとお芝居がやりたいなと思っていました。4月に卒業するので、これからはお芝居をやっていけたらなと思います。普通の女の子を普通に演じられる人になりたい。今回は特殊な役をやらせていただいたので(笑)。主人公の妹など……」
 瀧「いやぁ、次は恋愛映画あたりで回収しないと、やっぱし」(一同笑)
 リ「もう2度と白石さんとやらないことですよ」
 瀧「マイナスからスタートしているから…」(一同笑)
 北「いえいえ、そんなことはないです」
 瀧「次、何やっても右肩上がりだって、ほんとに」
 北「全然、マイナスじゃないですよ!」
 ピ「マイナスですよ(笑)」

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