劇場公開日 2018年2月1日

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「ハートとマインドに久し振りの豪速パンチを食らったような感動!」スリー・ビルボード Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ハートとマインドに久し振りの豪速パンチを食らったような感動!

2018年12月5日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

知的

とても残念な事に私は本作を劇場で観る事が出来なくて、やっとDVDで観た。
だが、DVDで観ても本作の素晴らしい脚本の出来栄えと、迫力あるベテラン俳優達の芝居に因り本作は見応えが劣るような安っぽい作品では決して無かった!

ヨーロッパの多くの国々から新天地を求めて、大勢の人々が集合し、それぞれの人々が夢と希望を胸に自由に夢を掴む事が出来る理想の国としてアメリカが出来た時から約250年の時を経た今も、現実にはアメリカ社会では様々な人種差別やマイノリティー差別等が現実の壁となり、人々の日常に重く、暗い影を落としている。

本作の主人公ミルドレッドは、愛娘をレイプされた末に焼き殺されると言う信じられない状況で娘を亡くす。
その事件から7カ月も経過しても、警察の捜査は思った程の成果を挙げる事も出来ずにいた。
その事に豪を煮やし、町外れの道路沿いにデカデカと無能な警察を揶揄するような3枚の広告を出す事で町中を巻き込む事件へと問題を拡大させてしまう。この事に因り、様々な憎しみや差別の連鎖がエスカレートしていく。
だが、本作の素晴らしい処は、人は誰でも、何かしらの弱さを持ち、その弱さこそが、時に人を傷つけ、間違った選択をさせてしまう状況を描いている。
決定的な悪人も存在しないかわりに、根っからの善人も存在しない。
唯一広告会社の担当係の人は根っからの善人そうだった。しかし、それ以外の人物は、それぞれに一癖も二癖も有るような人達ばかりだった。だが、しかしそんなくせ者も特別な存在では無く極普通の庶民。一般市民なのだ。
ミルドレッドのキレ易く、暴力的な行動の総ても、娘を殺害されていなかったら、起こり得ない事だろう。

しかし、中盤で、警察署長の死がきっかけとなり、彼の遺書に因って善に目覚めて行く人に因って物語は急転していく。
誰が本作のこんな結末を想像する事が出来るだろうか?
意表を突かれたと言う様な単純なものでは無い。
物語を普通に追っている限りでは、誰もが本作のラストを予測する事などは出来なかった筈だ。
しかし、実際に示された結末に違和感の欠片は、微塵も感じられない!

人は憎しみの眼で人を観る事も出来れば、愛の眼差しで人と接する事も出来る。そこには一人一人の自由な選択が存在するが、どちらを選ぶかに因って人生その物が180度違った未来へと繋がっていく事を本作は教えてくれた。言葉に書くと容易い事だが、自己の生き様として選択してゆくには容易な事ではない。久し振りにズッシリと奥深い映画に出会えた事を感謝したい。

ryuu topiann