シェイプ・オブ・ウォーターのレビュー・感想・評価
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ピュアでファンタジックなラブストーリーを想像していたので、ちょっと...
ピュアでファンタジックなラブストーリーを想像していたので、ちょっとグロいシーンが多々あり驚きました。サスペンスも好きなので、個人的には良かったのですが。主人公は見た目によらず積極的だったな。同じ掃除係のふくよかなおばさんが、気が良くて飾らない性格で好きでした。残忍なようで割と苦労もしてて人間味のある悪役さんとか、信念を貫こうとする博士とか、なんだかんだ言って広い心で"彼"や主人公を許しちゃう売れない画家とか、登場人物が個性的かつ人間味があって面白かったです。一方で結局正体ははっきりしない"彼"とか、お風呂場を水で満たしちゃうシーンとか、普通じゃない、いかにも映画らしいところもあり、そこもまた味わい深かったです。
冷戦時代アメリカの人魚の御伽噺
メモと感想
プロローグ、水の中を漂うように、この物語へ入って行ける没入感が気持ちよかった。
美術が女性的で綺麗。
歌と古楽器のレトロな音楽に彩られた、
水中を見るような色彩と、古い色彩の合わさった、カラーリングがファンタジックだった。冷戦時代の、まだ平和ではない寒さもあった。
ヒロインは、歳を取ったアメリのようにロマンチックだった。アメリを思い出したのは、彼女も言語のコミュニケーションに長けておらず、「語られる」側の描写が多いからかもしれない。
車や靴、映画館や研究所の建物に、こだわりを感じた。物語のキーアイテムがたくさん散りばめられていて、画面全体を見ていたくなるワクワク感が楽しかった。
シークエンスの切替時に、BGMや音が次シークエンスに繋がっていることが多かった。その余韻が独特で強く、心地よかったり、怖かったり、色んな表情があった。
半魚人を始め、
発語障害、同性愛者、戦後まもない黒人の、マイノリティな人たちや、権力が決して大きくない人たちが、「同じ人」だという温かみがあった。
職場では乱暴な「人間の王子」に、子どもたちがキスするシーンを見ると、不思議な気持ちになった。どんなモンスターにも好きでいてくれる人がいた。
後半の銃撃の悲劇と、描かれていないけれど、残されたストリックランドの子供たちを思うと、どんな争いも喪失は辛いなど、観終わってから思った。
前半で「見世物小屋のマーメイド」という言葉が出てきた時、「人間の残酷さ」が書かれた悲しい童話がモチーフだとドキッとして、どんな物語になるんだろうと主人公たちが心配になった。
だけど童話の神秘的で美しいところが、たくさん抽出されていた。
人魚が人間に狙われる理由になる、不死伝説。美しい歌声を失い、人間に生まれたお姫様、呪いを解く口づけ。
二人のメインテーマ曲が、水に溶けるように甘くて綺麗だった。
性的表現の多いおとぎ話
正直、期待外れだった。話の筋が荒唐無稽なうえ、不必要なベッドシーンや性的表現が多い。特に、悪役のベッドシーンなんて、本筋とまったく関係なかった。モザイクまでかけてあんなシーンを入れてまで、15禁にする意味がわからない。話の筋は子供が喜びそうなものなんだから、ベッドシーン削って子供に見せた方が受けたんじゃないかな。半魚人がほとんど人間だったのも残念。主人公もそれほど孤独ではなく、どうして半魚人に惹かれたのか、よくわからない。ストーリーも繋がりがおかしい感じが多々見受けられた。
信じられる恋。
脚本がおもしろい。
おとぎ話みたいな話だけど、特殊効果がリアルで違和感なく見れた。あれがちゃちかったら、内容に集中できてないと思う。
オープニングの海の中の部屋がとても美しかった。
窓の水滴が踊って、二つが一つになる、、そして赤い靴。乙女心ある美しい表現だな〜と思った。音楽も美しく、なんとなくアメリを思い出した。
職場では威張りちらす軍人さんも、家では家族にダジタジ。。だから、何も語らない主人公が魅力的に思えたのかな?
親友が年上のゲイのおじさん、ルーティンの毎日。
分かりやすい綺麗なヒロインではないけど、他人から見たら理解されない恋かもしれないけど、自分らしく生きてる彼女を見ていてとても素敵だと思った。
ひとからなんと言われようと、なんで?って思われても、恋に落ちたら仕方ないよね。
最後、ハッピーエンドで良かった。
女性が同感できる映画だと思う。
アカデミー賞を取るべくした、完成された作品
主人公の女性が想像の中で着たドレスがフリフリでちょっとミスマッチで、それが可愛くて良かったです。
物語は主人公の内面の美しさを良く引き出すことに成功しています。
神のような蘇生能力は解剖じゃあ解明できませんね。
言葉がなくても
TSUTAYAが全面にオススメしてたのでレンタル。アカデミー賞13部門ノミネート、4部門受賞。作品賞・監督賞・美術賞・音楽賞。これだけで、この映画がどれだけ評価されてるのかわかる。
が、個人的にはそこまで衝撃的なモノは感じなかった。
話せないヒロインと謎の生き物が心を通わせる物語。言葉が無いからこそ繋がることができた。表情とか仕草、行動で伝わるものって大きいのかな。でも正直、あまりにもかけ離れた種同士が、ここまで繋がるか。。。彼の方から、あなたと私は同じだと伝えてたけど、うーーん、なにが同じなんだろう。難しい。
デリラの優しくて実は小心者なキャラが素敵。博士が国益ではなく科学者としての信念を貫こうとした姿は良い。
でも肝心の、イザベラと彼から何を汲み取ればいいのかわからない!
もう一回見ればわかるのかな〜。アカデミー賞って難しいな〜。
LGBT
私の周囲での評判は余りよくなかった。
私もアカデミー作品賞との相性は必ずしも良くなかったので、
観る機会はあったのだが二の足を踏んだ。
結果オーライ、BDで十分だったと思う。
愛の形はいろいろあっていい。
但し、それに対する感じ方も多様であっていい。
私は生理的に受け付けない。
動物愛護の範囲と感じられるうちはそれなりに楽しめたが、
獣姦?にまで至るとさすがに気持ち悪い。
時代背景もあって全体がレトロで暗い雰囲気なのも気が滅入った。
また騙された・・・
作品賞受賞?
「バードマン あるいは」も酷かったけどこれはそれ以上だ。
ヒロイン?のルーティンとなる自慰行為は許せるが、半漁人とのHには恐れいった・・・
本当に馬鹿馬鹿しい作品。
わかるでしょ 言葉で伝えなくても
映画「シェイプ・オブ・ウォーター」
(ギレルモ・デル・トロ監督)から。
とても切ない「ファンタジー・ラブストーリー」だった。
幼少期のトラウマで声が出せない主人公の彼女「イライザ」と、
摩訶不思議な生き物(人魚の男性版?)の「彼」が、
言葉という手段を使わずに、愛を育んでいく過程に、
もどかしさを感じながらも、これが本当の愛なんだな、と
ちょっぴり涙腺を緩めながら観終わった。
何度となく登場し、作品の「キーワード」とも思える
「あなたには決して分からない」という歌が印象的だった。
作品冒頭、TVから流れてくる曲は、
「あなたには決して分からない、私がどんなに寂しいか・・
あなたには決して分からない、どれほど深く私が想っているか」
そして、なぜか2人のダンスシーン。(この場面だけ???)
「あなたには決して分からない、私がどんなにあなたを愛してるか
あなたには決して分からない、どれほど深く私が想っているか、
隠そうとしてもあふれてしまう、あなたへの熱い想い」
さらに「わかるでしょ、言葉で伝えなくても。
あなたの行く所に私の心もついていく。
あなたのことはいつも祈ってる、他に方法があればいいのに、
愛を証明したいのに、どうしていいか、私には分からない、
永遠にこのままよ、今あなたが気付いてないなら」と続く。
しかし、ラストシーン、このフレーズに変わる。
「あなたの姿がなくても、気配を感じる。
あなたの愛が見える。愛に包まれて私の心は優しく漂う」
うまく言えないけれど「愛」って、こういうことかな。
ちょっとビクビクした。
最初はワクワクして観ていたのだけれども後から怖くなってきた!
音楽が良かった。ワクワクした。
エリサが可愛かった!
何故だろう不思議な気分。
猫食われているところかわいそうだった!
アメリーを観ている感じだった。
撮影はどこでしたのだろうか?調べたくなった!
愛の心情を映像で表している
愛とは何か?を考えさせられた。
半魚人とイライザは、異種同士であるにもかかわらず、お互いを怖がらず尊重しあい、共有しあい行動した事により、お互いに惹かれて行く。
だが、その生活は長くは続かない。
ヤマアラシのジレンマの様に、生活が長くなるにつれ、イライザの心は、互いが別のモノだからこの世界では通じ合えない。と落胆して行き、半魚人は彼にとって過酷な環境のため、衰弱して行く。
だが、互いに心で通じ合い愛し合っている。この言葉では言い表せない衝動や心情を水の流れの如く映像として表現している。この渦めく感情・心情・衝動を水で表している事をわかる人とわからない人で、この映画の評価が大きく変わると思う。
また、ストリックランドは悪役であるが、彼も彼なりの考えや衝動・心情があり、プライドがある。彼もまた他者に尊厳を踏みにじられている被害者として描かれているところにこの作品の深さを感じた。
また、ストリックランドも博士と同じような結末を迎える事から、彼らは彼らなりの考えがあり、それに従った行動の結果だという暗示でもある。
この物語は、登場人物の心情をよく描けており、それを水(ウォーター)として表し、また、形(シェイプ)とは行動ではないかと推測する。
心と行動、抽象的なものと具体的なもの。
シェイプオブウォーター。行動の中にある心。心を表す行動。がこの映画のメッセージではないかと思う。
まだまだ細かな描写での隠れたメッセージはあるが、一度観ただけでは全て回収しきれないのであと何度か観ようと思う。
美しい
見ていてとても美しいなと思った。なんだか不思議な気持ちになった。声が出ない女性と異生物の恋、、
途中何度か過激なシーンがあり驚いたが色んな人の世界に入り込めるような作品だった。イライザとの恋がどうか上手くいっていますようにと思わず願ってしまう。
不美人中年必見のラブファンタジー
美女と野獣は大好きですが、結局美男美女やんか、とは思ってました。ちょっとね。
ダサい女たちや、冴えない女が見初められる的な恋愛ものにしたって、アンハサウェイ(プリティプリンセス、プラダを着た悪魔)やらサンドラブロック(デンジャラスビューティ)がダサくてガサツなモテない女として頑張っても、やっぱ結局中の人、美人やん?
ちょろっと眉毛抜いてお化粧したら絶世の美女ってさ。
美人すぎない役者が美に頼らず、愛し愛される物語を欲していました。ひそかに。
そんな私にうってつけっぽいシェイプオブウォーターです。楽しみにしていました。うん、ほんと良かったです。
わたしの仲間(不美人中年ひとりもの)はみんな見たほうがいいと思いました。
サリーホーキンスは最近とてもよいなぁと思っていて、ブルージャスミンのジンジャーが良かったし、パディントンでもとっても良かったし、僕と世界の方程式も大好きで、シェイプオブウォーターでもよかったです。モードルイスの幸せの絵の具もみようと思っています。
監督が美人を主役にせえという映画会社の圧力を受けないために、結構自腹で映画作った話、かっこええなと思いました。
ギレルモデルトロさんの映画は初です。パシフィックリムとかは絶対見ない類のジャンルなので私に関係ないと思っていましたが、ジャンルで切り捨てちゃダメですね…今回見られてよかったです。グロいらしいけどパンズラビリンスみよっか、な?
結構ユーモラスで、そしてグロテスクで、幻想的でうっとりしました。
イライザの自慰シーンが何度もでると聞いていて、非婚中年女性の性を普通のものとして描いてくれてるなら嬉しいけどどんな風に?と思って注目してしていましたが、卵タイマーの後ろでピンぼけ、という描写で、うーん…と思いました。
がっつり正面から映してくれってことではないですが、ただあれじゃ察しの悪い人には何だかわからない。
でもあれが限界なのかもとも。
1962年がどんな時代かはあまりわかってません。
冷戦真っ只中なのはわかる。
キューバ危機前?後?くらいな感じですが大丈夫です。
精神的に抑圧が強い時代だという認識で良いかと思います。
ロシアのスパイの研究員の人が、多分君の名前で僕を呼んでのエリオのパパ役の人じゃないかな?最近よく見ます。
彼もなんだか切なかったです。
イライザは声が出ないけど、辛いこともいっぱいあるだろうけど、毎日に楽しみを見出して生きています。窓を走る雫をうっとり眺めたり、ミュージカルの主人公になった想像で楽しんだり。ああいう空想が支えになるんだよね。わかる。
そしてイライザは強い。マイケルシャノンにどやされても負けないし、手話でFワードでやり返すし、大好きな彼を助けようと大冒険するし、めちゃかっこいい。
女で、孤児で(イライザは孤児の苗字をもっているそうです)、障がいがあって、黒人で、老人で、ゲイで、少数派、という人たちが、
男で、強くて、白人で、体制側の人たちに、立ち向かって、「人間」である彼を助ける訳です。
やー、興奮しないでいられようか。わたしもイライザだし、ゼルダだからさ、みんなの戦いを応援しましたよ。
そして人間の定義について、今も考えています。
イライザにとって、あのふしぎな生物は人間のなのです。
彼を助けないなら私たちは人間と言えるのかという旨の発言をします。人間としての境界に否が応でも立たされてきたイライザのこの言葉は、ずんと心に突き刺さりました。
彼は、最初はヌメヌメ感にギョッとしましたが、外見は見慣れるます。最後には可愛く見えました。つか美しい目にわたしもメロメロに。
イライザと彼とのラブシーンは、とてもロマンチックに思いました。うっとりです。
はみだしっ子たちが傷を癒し合う様に寄り添い、やがて愛し合うというプロットは、たぶんわたしが自分に訪れることをずっと待っている筋書きなんだと思います。
なので、そういう流れにはもう、だいぶやばいです。
ラストシーン、首の怪我がエラに変わったイライザは、あのまま彼の住む世界で幸せに過ごしたと思っていていいのでしょうか?
そこが確信が持てなかったのだけど、そう信じていようと思います。たぶん隣人のかつらの画家さんもそう思っているはず。
イライザの性的日常をもっと踏み込んで!ってところと、猫の首バッサーが辛かったので4.5です。
エラ
絵本のようなと思いきや、白黒テレビのロマン映画。
古き良きロマンチックな雰囲気。
恋をして色めき鮮やかになっていくイライザに眼を奪われる。
でもなんでラストで魚人まで撃つし。
ストーリーが進むにしたがって、指の壊死がよく描写されるのは何故?
まだよく落とし込めてない。
何はともあれ結ばれてよかった。
傷がエラになってちょっと感動。
うっとり眠れた。
アカデミー作品賞を獲ったので期待したけれど
アカデミー作品賞を獲ったので期待したけれど、普通の映画でした。映画の後はどうなったのだろ?二人で暮らしたのかな?人間が水中で暮らせるのかな?
様々な愛とその喪失の物語。親近感から異形を愛し、身体的人間性を喪失...
様々な愛とその喪失の物語。親近感から異形を愛し、身体的人間性を喪失した女。同性愛者でありながら(あるいはバイ?)ただ友と言うにはあまりに深く隣人を愛し、喪失した男。あくまで友として友を愛し、喪失した女。科学を愛し科学に殉じた研究者。他者を力と地位で抑えつけ、自分のみを愛し全てを喪失した男。
なんかまとまってないけどそんな感じ
自分は好きになれた作品
雰囲気や音楽は素敵。
オチは読めるけれど後味はとても良い。
悪役さんの家族やスパイさんのことは少し気になるけれど、モヤモヤするほどではない。
粗というか穴、突っ込まれても仕方ない部分は多いように感じました。
施設のセキュリティ、主役二人が惹かれ会う過程など。
しかしこれらの穴はこの作品においてそこまで重要な部分ではないのかなとも。自分はそういう「ご都合主義」に目をつぶれる質だったのでこの作品を楽しめて好きになれたけれど、合理性や整合性を求める人には合わないと思います。
性的描写や猟奇的な描写が多いけれど、自分にとってはこれもグロテスクさや生々しさの一要素として良い調味料になったと思う。
逆に不潔なものが苦手な人には堪えられなさそうだとも思います。
主人公を好きになれない人が多いみたいだけれど、これも主人公のキャラクターをどう捉えるかの違いかな。
遅刻、映画館水浸し、猫の死亡の件など確かにどうかと思う部分もあるしその点について良い気分にはならないけれど、冒頭の自慰シーンのおかげもありあくまで主人公は「欲求を持ったごく普通の女性」であって「美しいヒロイン」ではないと捉えられたため、自分はそこまで気にせずすみました。
この映画をエンターテイメントと捉えられて(好みに合って)、かつエンターテイメント性があれば細部は気にしないという人向きの映画だと思います。
クオリティや説得力を置いておいて、良くも悪くも作品に酔えるか否か。
「作り手と好みが合うか」によって評価が大きく変わる作品だと感じました。
自分の好みに合うという意味では星5だけれど、人におすすめするという意味では星3です。
おとなのためのおとぎ話
性も生もひっくるめて描きおとぎ話のような浮遊感と綺麗だけどあとに引く切なさがたまりませんでした。
冒頭の部屋一杯の水のシーンはまるでタイタニックの導入部分のようで、物語の終着点はここで、ただのハッピーエンドではすまされないんだ…という期待が押し寄せてきました。
「彼」とイライザが出会って心を通わせていく過程はもちろん可愛くてどこまでも綺麗で哀しくて童話めいていてどの場面も惹き込まれ、まるで自分が寂れた静かな町のミニシアターで映画を見ている気分になりました
勝手な私の妄想なのですが
イライザの首の3本の傷は最初エラ呼吸みたいだと思っていたけどラストでまさにエラになっていて彼女正体は本当に人間だったのかと思ってしまいました。
普通に見れば「彼」の力でそうなったのですが
出自は川に捨てられていたため若しかしたらパンズ・ラビリンスのようにもとは水の世界の王女ではないのか(プロローグも含めて)と勘ぐってしまいました。
それくらい、読み手の勝手な妄想を膨らましてしまうくらい、深くて繊細なお話でした。
シェイプ・オブ・マイ・ハート
今頃も今頃になってしまったけれど、
やあ、アカデミー賞作品賞&監督賞受賞、おめでとうございますです、デル・トロ監督。
『ミミック』の頃から彼のファンだったし、元々『パシフィックリム』のように日本の
サブカルを超リスペクトしてくれてる方なので今回の受賞はホント、素直に嬉しい。
まあ賞を受賞したからといって好みに合うかは人に依る訳だが、今作は個人的にも大満足の4.0判定です。
...
映像美と滑らかなリズム、まずはここである。
クラシカルで暖かみのある琥珀色に彩られた'60年代の風景。
幻想的な碧が印象深い、イライザと“彼”とのロマンスシーン。
デル・トロ監督作品はいつもいつも色遣いが美しいが、
今回の作品では特に琥珀色と深碧色が映えている上、たゆたうような映像
(監督曰く、水をイメージして常にカメラが静止しないよう意識したらしい)
と併せると、もうずっとこの流麗たる映像世界に浸っていたくなるんである。
モノクロテレビで流れるミュージカル映画や、今や見られなくなった華やかな
造りの映画館などノスタルジイを感じさせる小物の数々も利いているし、それこそ
『大アマゾンの半魚人』公開時期に近い年代が物語の舞台な訳だが、その時代の
風景・衣装・意匠も、神秘的で温かくロマンチックな空気に一役買っている。
...
そして魅力的なキャラクター。
脇を固めるキャストも好きだが長大になるので主人公たちだけに絞って書く。
ヒロインのイライザ。いわゆる美人ではないが――
椅子に座ったまま繰り出すタップダンスや窓を滑る雨粒をつうっと指でなぞる場面、
モップや卵で“彼”の興味を引こうとする場面等の、控え目だが愉しそうな笑顔が心に残る。
音楽やリズムを愛し、シャイではあるが剽軽にも振る舞える彼女は可愛らしいし、
言葉を発せられない彼女が必死で相手に気持ちを伝えようとするシーン2つには思わず涙。
そして、“彼”だ。
鋭い爪やヒレは恐ろしげだが、均整の取れたしなやかなフォルムは力強く美しく、時に神々しくすらある。
そのくせ大きく丸い瞳は猫のように表情豊かで、穏やかな時は愛らしくも見えるという絶妙なデザイン。
元居た土地では神のように崇められていたという“彼”。だが畏怖はされても、
イライザのように男女として、一個人としての愛情を注がれたのは初めてだったのかも。
「違う、私達は一緒じゃない」と、終盤でイライザは“彼”を引き離そうとしたけれど
(それは“彼”の為を想って絞り出した言葉だったけれど)、
棲む世界が違っても、同じ種ですらなくても、言葉も利けないままにこの世界に放り込まれた立場は同じ。
音楽や、ダンスや、茹で卵が好きなのも、ずっと寂しい想いを抱えて生きていたのも、
お互いに言葉も要らずに心を通せられることも、そしてなにより、心を通わせたいと願っていることも。
それならたとえ姿形は違っても、心の形は同じ。
ラスト、イライザは人魚になって幸せになったのか、それともあれは
画家がそう願って想像したハッピーエンドだったのかは分からない。だけど、
口の利けない人魚姫なら、言葉も要らずに想いの通じる相手と出逢えて幸福だったのは疑いようもない。
...
二人の共通の友人となった画家は“彼”に向かって呟いた。
「今の時代に合っていないんだ、我々は遺物だな。」
世間から忘れられ、弾き出され、傷付いたからこそ、同じように傷付いた者の
気持ちを理解して優しくなれる。アウトサイダーに向けたこの優しい視線こそが
まさしくデル・トロ監督の“味”であり、そして本作の堪らなく美しい点だと感じる。
<2018.03.01鑑賞>
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余談1:
アカデミー賞作品賞&監督賞受賞について。
個人的には、脚本の妙や役者のアンサンブルといった点では対抗馬
『スリー・ビルボード』の方が上手だったと感じたが、映像表現や美術面、
またクラシカルで落ち着いた味わいといった異なる魅力が本作にはある。
最近とみに思うのだが、同一競技ならともかくジャンルも作風も全く違う映像作品を横に並べて
「さァさ選びねェッ!」と決めるって割と酷な話。カレーとラーメンどっちが好き? てやんでェ!
どっちも食わせろィッ!って言う話ですよ(ジャンキーな食生活してるのかしらとか言うな)。
最近は『その年のベスト作品を知る』ではなく『面白い可能性のある作品を
まとめて知る』というスタンスでアカデミー賞を楽しませてもらってますです。
余談2:
「手を洗うタイミングで男が知れる……」じゃないよ!
カッコつけてないで手ェ洗いなさいよッ! バッチい!
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