「シェイプ・オブ・マイ・ハート」シェイプ・オブ・ウォーター 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
シェイプ・オブ・マイ・ハート
今頃も今頃になってしまったけれど、
やあ、アカデミー賞作品賞&監督賞受賞、おめでとうございますです、デル・トロ監督。
『ミミック』の頃から彼のファンだったし、元々『パシフィックリム』のように日本の
サブカルを超リスペクトしてくれてる方なので今回の受賞はホント、素直に嬉しい。
まあ賞を受賞したからといって好みに合うかは人に依る訳だが、今作は個人的にも大満足の4.0判定です。
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映像美と滑らかなリズム、まずはここである。
クラシカルで暖かみのある琥珀色に彩られた'60年代の風景。
幻想的な碧が印象深い、イライザと“彼”とのロマンスシーン。
デル・トロ監督作品はいつもいつも色遣いが美しいが、
今回の作品では特に琥珀色と深碧色が映えている上、たゆたうような映像
(監督曰く、水をイメージして常にカメラが静止しないよう意識したらしい)
と併せると、もうずっとこの流麗たる映像世界に浸っていたくなるんである。
モノクロテレビで流れるミュージカル映画や、今や見られなくなった華やかな
造りの映画館などノスタルジイを感じさせる小物の数々も利いているし、それこそ
『大アマゾンの半魚人』公開時期に近い年代が物語の舞台な訳だが、その時代の
風景・衣装・意匠も、神秘的で温かくロマンチックな空気に一役買っている。
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そして魅力的なキャラクター。
脇を固めるキャストも好きだが長大になるので主人公たちだけに絞って書く。
ヒロインのイライザ。いわゆる美人ではないが――
椅子に座ったまま繰り出すタップダンスや窓を滑る雨粒をつうっと指でなぞる場面、
モップや卵で“彼”の興味を引こうとする場面等の、控え目だが愉しそうな笑顔が心に残る。
音楽やリズムを愛し、シャイではあるが剽軽にも振る舞える彼女は可愛らしいし、
言葉を発せられない彼女が必死で相手に気持ちを伝えようとするシーン2つには思わず涙。
そして、“彼”だ。
鋭い爪やヒレは恐ろしげだが、均整の取れたしなやかなフォルムは力強く美しく、時に神々しくすらある。
そのくせ大きく丸い瞳は猫のように表情豊かで、穏やかな時は愛らしくも見えるという絶妙なデザイン。
元居た土地では神のように崇められていたという“彼”。だが畏怖はされても、
イライザのように男女として、一個人としての愛情を注がれたのは初めてだったのかも。
「違う、私達は一緒じゃない」と、終盤でイライザは“彼”を引き離そうとしたけれど
(それは“彼”の為を想って絞り出した言葉だったけれど)、
棲む世界が違っても、同じ種ですらなくても、言葉も利けないままにこの世界に放り込まれた立場は同じ。
音楽や、ダンスや、茹で卵が好きなのも、ずっと寂しい想いを抱えて生きていたのも、
お互いに言葉も要らずに心を通せられることも、そしてなにより、心を通わせたいと願っていることも。
それならたとえ姿形は違っても、心の形は同じ。
ラスト、イライザは人魚になって幸せになったのか、それともあれは
画家がそう願って想像したハッピーエンドだったのかは分からない。だけど、
口の利けない人魚姫なら、言葉も要らずに想いの通じる相手と出逢えて幸福だったのは疑いようもない。
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二人の共通の友人となった画家は“彼”に向かって呟いた。
「今の時代に合っていないんだ、我々は遺物だな。」
世間から忘れられ、弾き出され、傷付いたからこそ、同じように傷付いた者の
気持ちを理解して優しくなれる。アウトサイダーに向けたこの優しい視線こそが
まさしくデル・トロ監督の“味”であり、そして本作の堪らなく美しい点だと感じる。
<2018.03.01鑑賞>
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余談1:
アカデミー賞作品賞&監督賞受賞について。
個人的には、脚本の妙や役者のアンサンブルといった点では対抗馬
『スリー・ビルボード』の方が上手だったと感じたが、映像表現や美術面、
またクラシカルで落ち着いた味わいといった異なる魅力が本作にはある。
最近とみに思うのだが、同一競技ならともかくジャンルも作風も全く違う映像作品を横に並べて
「さァさ選びねェッ!」と決めるって割と酷な話。カレーとラーメンどっちが好き? てやんでェ!
どっちも食わせろィッ!って言う話ですよ(ジャンキーな食生活してるのかしらとか言うな)。
最近は『その年のベスト作品を知る』ではなく『面白い可能性のある作品を
まとめて知る』というスタンスでアカデミー賞を楽しませてもらってますです。
余談2:
「手を洗うタイミングで男が知れる……」じゃないよ!
カッコつけてないで手ェ洗いなさいよッ! バッチい!
コメントありがとうございます♪
色々思い感じる作品でした。
差別・偏見へのメッセージ。
モンスター/怪獣への眼差し…。
“愛”を謳った作品ですが、ギレルモ・デル・トロがありったけの思いや愛を込めた、自分的には感動作でした。
これからもデル・トロを追い掛け続けますよ!(^^)