「ネズミ―帝国の黄昏」スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 2Bさんの映画レビュー(感想・評価)
ネズミ―帝国の黄昏
遠い昔、遥か彼方のどこかの町で、ルーカスという若者がラーメン店を始めた。彼のラーメン作りにかける情熱はすごく、店のために製麺所まで建てるこだわりようだった。今まで誰も体験したことのない斬新な味はたちまち評判となり、彼の店「星斗ラーメン」は行列のできる店となった。それから約30年。
「新メニューを出すと、客が『大将、理屈っぽい味になったね』なんて言いやがる。定番メニューにちょっと手を加えただけでも文句が出る。もう、ラーメン作りも飽きた。そろそろ店をたたもうか…」と、ルーカスがこぼしていたところに、世界中で外食チェーンを展開するネズミー・フーズが声をかける。店の経営に行き詰まりを感じていた彼は、一切の権利をネズミーに売り渡してしまった。
そして、ネズミー資本となる、「星斗ラーメン」1号店がオープン。幻の味に再び会えることを期待した大勢の客たちで、店の前は長蛇の列。
ネズミーのリサーチは完璧だ。膨大なデータをもとに徹底的に分析を行い、どのチェーン店でも、常に高い顧客満足度を誇っている。今度の1号店も、きっと昔からの常連たちの舌を満足させるに違いないと思われた。
しかし、食べ終わって店から出てくる客の反応は一様ではなかった。初めて食べる星斗ラーメンを絶賛する若者もいたが、かつての常連たちからは、「なつかしい味だけど何か違う」という声が多かった。1号店はそこそこ繁盛したが、リピーターが来ない。そこで、客の反応に敏感なネズミーの経営陣は考えた。
「30年前の星斗ラーメンそっくりに作ったのに、何がいけなかったのか。もう、客はルーカスの味を求めていないのかも知れない」と分析し、続く2号店のラーメンには、大胆なアレンジを加えた。すると、多くの客から、「スープから作り直せ」という苦情が殺到した。
最後にオープンする3号店には、1号店のJJ店長を迎え、再度、ルーカスの味に挑戦することとなった。今度こそ客から認めてもらいたい。JJ店長は提案した。
「ルーカスのラーメンでお馴染みの特大チャーシュー。あれを載せれば、きっと客は納得するはずです」
はたして、3号店のラーメンには、パルパティン地方産の黒豚で作った特大チャーシューがトッピングされることとなった。オープン当日、3号店を視察したネズミーの役員が、客の1人に尋ねた。「どうです?このチャーシュー。これが食べたかったんでしょう」と。
客が不機嫌そうに答える。「チャーシュー自体は懐かしいけど、味がこのスープになじんでない。ただ置いただけって感じで浮いてしまっている。それと、スープの味がやっぱり違う。いろんな材料を使っているけど、素材の良さが全く活かされていない」
隣の客も口を開く。「まずくはないが記憶に残らない味だ。そこへいくと、ルーカス大将のスープは、店を出た後でもうまかったなあって思い出す。で、また食べたくなる。店主の思いとかこだわりをドンブリに入れた、ラーメンの形をしたメッセージ。それが、大将のラーメンだった。おたくらは、客が何を望んでいるかってことばかり気にしている。だから、どっちつかずで深みがなく、印象に残らない味にしかならないんじゃないか」
ネズミーの役員は、がっくりと肩を落とし、店を後にした。
そして、かつての星斗ラーメンの常連たちは、もう記憶の中でしか味わえないあの味を思いながら、地平線に沈みゆく2つの太陽を見つめるのだった。
素晴らしいです。皮肉が効いてます(笑)
まさに僕が抱いた感想です。
客の好みばかり気にしていては、良いラーメンなど出来るはずはありませんよね。
悲しいことです。