「第十三代石川五ェ門見参」スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け かぴ腹さんの映画レビュー(感想・評価)
第十三代石川五ェ門見参
もはや昨年末となった超話題作。いまさらネタバレでもないだろうけれど、Blu-rayの発売で見る人のために一応付けときます。
トレーラーで一部チラ見せがあったシーンだが、まさか生身のレイがジャンプしてライトセーバーだけでタイファイをぶった切るとは。ルパン三世の五ェ門のお決まりシーンを想い出した観客は少なくないはず。笑いをこらえるのがやっとだった。
まあ、とにかく今回のレイのフォースは縦横無尽。飛ぼうとしている宇宙船を落としちゃうんだから驚き。こんななんでもありって……でも、前回のルークのテレワーク決闘を思えばかわいいほうか。超能力か神通力か知らないが、そんな便利な力があるのに崖っぷちのライトセーバーの戦いはお決まりなのか愚直にとり行われる。
ツッコミは絶えないのだが、そんな冷笑にムキになって辻褄を合わせようとしている狭量さが見え隠れする。
まず、レンのマスク。エピソード7から「もう素顔見せるの?あれ、必要?」との声が上がってエピソード8にいたってはほとんどかぶっていないかったのだが、今回想い出したように傷を金継ぎまでして再登場させていた。でもやっぱり脱いでいる時間が長い。マスクのエピソードがないとね。
そして「フォースとかジェダイとかいうけど、結局、巨大戦艦とかデススターに勝てるもんじゃないのになんでそんなに重宝する?」という、「必殺技をなぜ最初にやらない?」的な黙殺していいツッコミに、無謀にもパルパティーンのフォースで船団を沈めるという暴挙で答えた。お約束なんだから無理して辻褄あわせなくても……と誰もが思うのだが、かなりの神経症的気質が見受けられる。やはり前作のテレワーク決闘の非難が強かったのだろうか。
さて、このシリーズ、やはり最後まで「父性」との葛藤がついてまわった。エディプスコンプレックスの古代ギリシャといわず、恐らく人間の祖先が家族を構成したときからあったテーマだったのだろう。宇宙を飛び交う時代になってもそれを克服できないという示唆かもしれない。
そしてそれに伴う血統のテーマ。自由と人権の共和国、アメリカでこんなにも血統に羨望にも思える信奉があるのは意外であった。このシリーズに限らず、娘の見ているディズニーチャンネルにお姫様物語の多いこと。血は水より濃し、は万国共通なのかもしれない。
シリーズのなかで最初のアナキンの父親についてはとうとう触れられず終いであった。これがまことしやかにうわさされているように、パルパティーンだとすれば理屈の上では調和する。孫にあたるレイも「スカイウォーカー」を名乗るのが、ただルークやレイアを慕っているからだけではなく、同じ血統だから、もしかするとパルパティーンがダークサイドに落ちる前の姓かもしれない。
思えば最初の三部作の最後、エピソード6はまだシネコンもない時代だった。たまたま東京にいて新宿の劇場で初めて立ち見、それが2時間超えで長く感じた。エピソード3はコマ劇場改修前の歌舞伎町の映画館。シネコンはあったけど、見たのは昔ながらの古い映画館だった。そして今回も新宿。ずいぶんとこの地に縁がある。大作の終わりはIMAXで満喫したが、どんな劇場でもそのときの印象に古さを感じないのは大作たる由縁だろう
ディズニーのことだからこれからスピンオフも出るだろうし、新シリーズも作るかもしれない。でも恐らくもうオリジナルメンバー、マーク・ハミル、ハリソン・フォードは出ないだろう。キャリー・フィッシャーは死んでるし。それが名残惜しかったのだろうか、この筆を執るのに4か月を要した。少年時代に描いた空想は一区切りを迎えた。随分長い間たのしい夢を見させてもらった。感謝したい。
完全に蛇足だがツッコまずにはいられない。
賛否、というか批判の多かったレイとレンのキスシーン。私にはレンの生気をレイが吸い上げて生き返ったオカルトに見えた。
毎回共和国とかレジスタンスの大勝利で終わるのに、その次の回で帝国は大艦隊を整備しているのにもかわらず、レジスタンスはまた地下に潜っているのはどうして?戦後の政治に問題でも?レイアに至っては王女だったはずなのに将軍にまで格下がっている。
C3POのメモリーを削除するのに、みんな薄情だったのは意外だった。ひどい。