「夜明けの地平線への憧れは永遠に」スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
夜明けの地平線への憧れは永遠に
2010年代の締め括り、SF超大作シリーズ
『スターウォーズ』新三部作の完結編が遂に公開!
前作が「基本面白かったけどこんな好き勝手
やって収拾つくの?」という出来だったので
かなり不安だったのだが……蓋を開けてみれば、
エイブラムス監督は頑張った。めっちゃ頑張った。
『最後のジェダイ』の伏線をきっちり
回収しつつ、『フォースの覚醒』路線
そして王道エンタメ路線へと回帰。
宇宙SFエンタメとして史上最大スケールの
冒険活劇でありながら、“家族”を巡る熱い
ドラマも両立させた、見事な完結編だった。
...
まずは壮大なアドベンチャーとして大満足!
上映時間は前作より短いけれど、物語は
前作以上に濃くてスピーディ。そのうえ
冒険活劇としての見せ場は前2作を凌ぐ出来。
砂漠での猛速チェイス、敵船での疾走白兵戦、
歴代シリーズ最大スケールのドッグファイト、
「これを大スクリーンの『スターウォーズ』で
観たかった!」というアクションのつるべ打ち!
ライトセーバーでのバトルも質・量ともにアップ。
最もライトセーバー戦が苛烈なEP2,3級とまでは
いかないが、荒海でのレンVSカイロの一騎討ちの
緊張感は見事だし、ラストバトルではレイVS
パルパティーン、ベンVSレン騎士団という
展開で盛り上げてくれる。
画の壮大さも見事。
荒涼とした星にそびえ立つ巨大建造物、砂漠の
星でのカラフルな祭り、崩落したデススターの
浮かぶ鈍色の海、曇天を覆い尽くす戦艦の群れ、
そして最後の夜明けに至るまで、圧倒的スケール
の画をたっぷりと拝むことができた。
...
前作からの不満点もしっかり解消。
前作『最後のジェダイ』は過去シリーズから
連綿と続いてきたジェダイの血筋を巡る物語を
“無名の者だって銀河を救える”というテーマに
持って行こうとしていたように思うのだが、
・単一の作品を盛り上げる為に重要な駒を
惜し気もなく消費(ルーク/スノーク)
・テーマに噛み合っていない展開
(フィン/ポー/ローズのパートの不毛さ)
・世界観を拡大するべき所を出来ていない
(全銀河を巻き込む戦いにまでは見えない)
など、シリーズの中継ぎ役としては問題のある
作品だったと思っている。おまけに銀幕外では
C・フィッシャーも逝去。シリーズの有終の美を
飾る上では、正直言って不安要素だらけだった。
が!
エイブラムス監督はその不安要素3点を序盤15分
でいきなり全修復する荒業をやってのけている。
すなわち、
・スノークの10倍怖い黒幕パルパティーン帰還
・強大な戦力を蓄えていたファイナルオーダー
登場で物語のスケールを拡大
・レイは無名(ゼロ)どころか超危険因子(ネガ)。
前作テーマを引き継ぎつつ、従来シリーズの
フォースの血筋の物語へと再回帰。
これらがシリーズ当初から予定されていた設定
かは不明だが、最終章に相応しい壮大さな
物語へと流れを引き戻せたと感じた。
...
ただ、一方で別の不満点も。
“こうなったら嬉しい”という展開を上手に
広げてくれてはいるものの、終盤に向かうにつれ、
あまりにキレイに話が進み過ぎてしまい、驚き
や緊張感は弱まっていった気がするんですよね。
妙な表現だが、“安定し過ぎている”と感じる。
あとは全体的に展開がややせわしない点。
まあこれは、完結編を盛り上げるための
御膳立てを、その完結編自体にすべて
詰め込んでしまったから、という気もする。
三部作全体で眺めたとき、パルパティーン
暗躍や彼の右腕(つまりスノーク、カイロ
の後釜)であるプライド元帥については
前作時点で多少でも語られるべきだったのでは。
結局、前作での展開や路線変更は、三部作
全体を盛り上げる上であまり機能していた
とは言えなかったな、と残念に思う。
...
しかしそれでも映像的な興奮やキャラクター
達の魅力がそれらの不満点を大きく上回る。
壮大な物語を通して描かれてきた各キャラクター
の成長と決着には目頭熱くなりっ放し。
C-3POの「最後にもう一度だけ」には
ウルっときたし(記憶失ってもノリは同じで
安心したけど(笑))、R2-D2がきっちり記憶修復
できるデータを残していた所にも友情を感じる。
チューイの退場には「エイブラムスの野郎また
やりやがった!」と思ったが、再登場で安堵。
フィンとポーも前作の失点が嘘のような大活躍!
EP7での名コンビっぷりは益々向上で気持ち良い。
レイアは前々作の撮影シーンを再利用したとの
ことだが、殆ど違和感を感じず存在感もしっかり。
短いながらも物語の重要な部分を支えていたし、
その最期も切ない。
ルークは思ったよりアッサリとした登場だけど、
かつて自分の修行の為に持ち上げたXウイング
を、最後は弟子を助ける為に再び持ち上げる……
あの流れには泣いた。
新三部作の影の主役であったカイロ・レン=
ベン・ソロ。彼と亡き父ハン・ソロの再会……
この1作品でいったい何度泣かせてくるんだ……。
あれはベンの後悔と改心が生んだ幻だったのか、
それともフォースの導きか。いずれにせよ、
カイロはようやくハン・ソロの息子として
生きることを自分に許すことができた。
彼がベンに戻れたのは束の間だったけど――
ベンが消えると同時に消えたレイアの亡骸。
彼女はようやく、息子に会いに行けたのだろうか。
...
そして最後、主人公レイの帰結。
人々が歓喜にわく中、固く静かに
抱き合うレイ、フィン、ポーの三人。
この物語は銀河を揺るがす壮大な戦いの物語
だったけど、と同時に、何者でもない孤独な
少女レイが、家族の絆を紡ぐ物語でもあった。
幼い自分を命がけで匿った両親、旅の仲間
フィンとポー、自分の価値を認めてくれた
ハン・ソロ、共に暗黒面に打ち克ったベン、
そしてフォースを説く師として、人生を導く
第二の両親としてレイを支えたルークとレイア。
血筋だけで、人の価値や運命は決まりはしない。
彼ら家族の絆でレイは暗い運命をはねのけ、
そして新たな名として、誇り高きジェダイの
血筋スカイウォーカーの名を継ぐと決意した。
ひとつの伝説が終わっても、伝説を継ごうという
強い意志を持つ者が、新たな伝説を紡いでいく。
彼らそして僕らが真っ赤に燃える地平線の彼方
に憧れ続ける限り、伝説は続いていくのだろう。
...
2010年代をドカンと盛り上げた『スターウォーズ』
新三部作はこれにて終劇! 不満点はあるけれど、
前作からよくぞここまで綺麗に完結させたという
点を加味して4.5判定です。
<2019.12.21鑑賞>
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余談:
と、盛り上がったばかりなのに……なんか
ディズニーは新たなスターウォーズ
三部作の計画を進めてるらしいっすね。
2022/2024/2026公開予定だとか。
以前の情報では主人公や惑星の異なる
シリーズになるらしいと噂があったけれど……
あのさ……最近のディズニーって
ちょっとガッつき過ぎじゃない?
“売れるから”ってこうも安易に
関連作を量産するのってどうなん?
“作品”じゃなく“商品”として扱ってる感じ
が物凄く厭だし、それでファンが離れたら
けっきょく誰も幸せにならないと思うんだけど。
もっと作品を丁寧に扱うべきじゃないかしら?
きびなごさん、共感ありがとうございます。
SFは好きなジャンルなんですがこの映画はまだ観てません。スター・ウォーズは1作目からイマイチ乗れなかったんですよねえ。
けど前作迄はWOWOWで鑑賞済みなんで、これもWOWOWまで待とうと思ってます。
御健勝であれば次のレビューを気長に待ってます。
あ、少し短めなのね(笑)
> 連綿と続いてきたジェダイの血筋を巡る物語を、"無名の者だって銀河を救える”というテーマに持って行こうとしていたように思う
なるほど! そうですね。前の監督も頑張ろうとしたんですね。
(きびなごさんのコメントで、何回「なるほど!」って言うんだろう、俺)
スピンオフならまぁいいかなと思いますが、もうストーリーはこれで終わらせてほしいですね。
エールありがとうございます🥺🥺
フォースは私も気づかないと思います(笑)
もうここで終わらしてほしいです!むしろ私は新三部作も🥴な部分が多いので、もちろんシリーズファンとしては見たい気持ちはありますが、お金儲けの手段に使わないでよと純粋な気持ちで思ってしまいます。
> 孤独な少女レイが、家族の絆を紡ぐ物語
なるほど。この見方は、好きです。
新シリーズは、どうなるか不安な面は確かにありますが(スターウォーズと名乗る必要があるのか、という点は否めませんが) でも、やるなら観たくないですか? そしてまた、あーだこーだと話すのは、楽しみかな?
こんばんは。
スターウォーズだけでなくマーベル作品等も含め多くの作品を提供してくれるディズニーには大変感謝していますし、楽しませて頂いているのですが、最近のディズニーはあざとさが目立つように思います。取り敢えず多くの観客が望んで収益に繋がる作品にしておけば良いという考えが前面に出過ぎていて、作品に対する愛情は二の次になっているような気がするんですよね。商売としては正しいのかもしれませんが、クリエイターとしてその姿勢はどうかと思うんです。
素晴らしいレビューありがとうございます。SWサーガは自分にとって生き方を照らしてくれた、人生の糧や標といったとってもとっても大事な作品でした。まだ、1回しか観てないなら2回目に真摯に時間をかけて作品に向き合いたいと思います。年末まで後少しお体に気をつけて一杯映画観ましょうね。ではでは。
浮遊きびなごさん、bionさんへ。
俺、捻くれ過ぎなんです。「チューイは絶対に生きてる。だってディズニーじゃん!」としか感じなくて。
それでも、今からレイトショーで3回目、見て来ますw だって、やっぱり楽しい!
こんにちは♪
衝撃と興奮と感動の大満足のフィナーレでしたね。
終わって見ればこのディズニー新シリーズもワクワク楽しませて頂きました。
更なる新シリーズには反対ですが…。