劇場公開日 2018年10月20日

  • 予告編を見る

「ひたすら広島を愛でる作品」恋のしずく あいわたさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ひたすら広島を愛でる作品

2018年11月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

広島は酒どころだったのですね。美しい風景も数多く出ていて、広島に行きたくなった。
観た後のすっきり感が素晴らしい。

テーマ性もしっかりあるのだから、後半をもっと丁寧に描いて欲しかった。
命なりけりがあっさり完成しすぎで、あれならとっくの昔にできてるでしょ。試行錯誤を描くとか、詩織のアカデミックな知識が役立つとか(序盤からの伏線が全く生かされず)、いくらでも思い入れの強さを演出することはできたはず。
詩織の迷いも結局何だったの?絵馬の内容も迷った末の決断という類ではなく単なる願掛け、しかも少なくとも新酒作りについてはあっさり達成。
あっさりしすぎた終盤は物足りなかった。でも、何かを得るために何かを捨てるなんて古い価値観をあっさりと超え、欲したものを全て軽々と取りに行く、そういう強かさが最近の優秀な女性らしさなのかもしれない。

制作に観光推進したい行政が絡んでいるからだろう。ご愛嬌とはいえもう少し細部まで拘って映画作りに徹して欲しかった。西条って内陸でしょう。絵になるのは重々分かるが、海が見える場面は無理があった。それに途中で杜氏の部屋で田酒が見えたけど、広島で田酒は流石にないでしょう。(と思ったらあれは公平性の観点で広島県内の酒造に配慮したから?いやいやそれじゃ本末転倒でしょ。)
お酒がテーマなのに車移動でないと成り立たないストーリーだし、もしや美咲を妊娠させたのは専属運転手になって詩織に色々なところで日本酒体験をさせるため?(もしや車はマツダ車だった?色もカープを連想させる赤だったし。)首を傾げる描写が多いが、広島県の魅力を欲張りに伝える県外に向けたPR映画と割り切れば、色々と納得する点は多い。

とはいえ、ここまで粗に目が行くのも基本的に良い作品だからこそ。
川栄李奈は本当に良い作品に出ている。所謂華のあるタイプではないが、息の長い女優さんになりそうだ。

あいわた