劇場公開日 2018年9月21日

  • 予告編を見る

パパはわるものチャンピオン : インタビュー

2018年9月20日更新
画像1

棚橋弘至×高橋優、映画というリングで火花を散らした異種格闘技戦

悪役プロレスラーとその家族の絆を描く板橋雅弘(作)、吉田尚令(絵)による人気絵本を実写映画化した「パパはわるものチャンピオン」(藤村享平監督)。かつてのトップレスラーから、悪役に転身した男が自らのプライドのため、そして愛する家族のために、現役チャンピオンに挑む感動のヒューマンドラマだ。主人公・大村孝志を演じるのは、“100年に1人の逸材”の異名をもち、人気実力ともにトップクラスを誇る新日本プロレスの棚橋弘至。そして、人気シンガーソングライターの高橋優が映画のために主題歌「ありがとう」を書き下ろした。本職のプロレスラー×ミュージシャン。ふたりが映画というリングで火花を散らした異種格闘技戦とは?(取材・文/内田涼、写真/江藤海彦)

画像2

「むちゃくちゃ大変でしたけど、やりきったという充実感がすごかったです」と誇らしげな棚橋。テレビドラマやアニメの声優、「仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー」への出演など演技経験は少なからずあるが、実写映画での主演は初めてのチャレンジ。「座長として現場全体を引っ張っていきたいという思いがあったんですが、そのノウハウがなくて(笑)、何をどう一生懸命やればいいかわからない部分もあり、毎日がプレッシャーでした」と本音を明かす。

さらに本職でもあるプロレスラー役を演じるという難題も。「僕自身、クセが強いタイプなんで(笑)、最初の(台本の)読み合わせでは、監督さんから『棚橋さん、マイクパフォーマンスみたいですね』って(笑)。監督さんが書いてくれた脚本が、すごく良いんで、セリフの言い方が不自然だったり、表情が硬かったりすると、ファンの皆さんが楽しむ邪魔になってしまう。いかに自然に演じられるかが課題でした」と試合同様、演技に対するポリシーも真摯そのもの。「41歳になってまだ、こんなにも夢中になれることがあるんだっていう発見が、今回、一番の喜びでしたね」と瞳を輝かせる。

そんな棚橋の姿に、高橋は「おぉ、それはすごいですね!」と目を見開く。劇中、主人公の大村孝志は悪役レスラー“ゴキブリマスク”としてリング上で暗躍するが、くしくも高橋が2016年に発表した5枚目のフルアルバム「来し方行く末」には、ゴキブリを意味する「Cockroach」という楽曲が収録されており、「叩かれても踏まれても、前進し続けるぞっていうメッセージソングで……。そんな偶然もあって、(主題歌の)オファーをいただき、シンパシーを感じました」と運命的なタッグ実現を語る。

画像3

映画はピークを過ぎたプロレスラーの再起に加えて、自分の父親が“わるもの”だという事実に反発する小学生の息子・祥太(寺田心くん)との確執と和解の物語をハートウォーミングに描いている。

「一番感じたのは、親子の物語だということ。やっぱり、親子って一番親密な人間関係ですし、近すぎるから、ときにはお互いのイヤな面も見えてくるじゃないですか。この映画でいえば、ずっと尊敬していた大好きな父親が、実はみんなの嫌われ者のゴキブリマスクだったっていう祥太の気持ちもわかるし、お父さんはお父さんで、そんな自分を理解してほしいと悩みますよね。そういった気持ちの“ズレ”にこそ、強いドラマがあるし、『ありがとう』という主題歌が生まれる重要なポイントになりました」(高橋)

ジャンルこそ異なるが、第一線で活躍し続け、試合/ライブで数千、数万人のファンを前に“真剣勝負”を見せつける棚橋と高橋。ただし、その道のりは「平たんではなかった」と口をそろえる。だからこそ、倒されても再び立ち上がる主人公の姿に共感し、棚橋は俳優として、高橋はシンガーとして、「パパはわるものチャンピオン」でも全身全霊のパフォーマンスを披露した。日常生活で壁にぶち当たり、悩みや不安を抱える観客は、本作を通して力強く背中を押されたと感じ、大きなエールを受け取るはずだ。

画像4

「物事がうまくいかないとき? そうですね……。僕の場合はIWGPチャンピオンになった2006年、ブーイングがすごかったんですよ。自分でも『なんで、自分の良さをわかってくれないんだ!?』ってひねくれていて(笑)。でも一度、ブーイングを真正面から受け止めようと決めたんです。すると、初めて“次の一歩”が見えてくる。僕がブーイングされるってことは、対戦相手が応援されている。それで試合が盛り上がれば、夢中になったお客さんがまた来てくれる……。そんな相乗効果が生まれれば、それもいいんじゃないかって。困難は人それぞれだと思いますけど、都合の良い面だけを捉えて、避けてばかりでは現状を打破できないんだと気づきました」(棚橋)

「転がって、傷ついて、失敗して……。そんな経験が曲になることが多いので、自分のスタイルが、実はプロレスの世界と共通する点もあるのかなと思いましたね。悩んだり、立ち止まっているなと感じるときって、結局、自分が100%の力を出し切らず、生半可なときなんですよ。例えば、やろうと思っていたことをやらずじまいで寝てしまえば、やっぱりモヤモヤしますもんね。だからこそ、悩みや逆境が生まれたときは、自分が空っぽになるくらい“出し切る”しかない。ライブでもレコーディングでもいい。たとえ、疲れてぶっ倒れても、頑張っちゃって、またゼロからインプットすればいいんじゃないかって思っています。その繰り返しですね」(高橋)

「パパはわるものチャンピオン」の作品トップへ