「貧しい者たちを「独立」の名のもとに放置する罪。」ウインド・リバー お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
貧しい者たちを「独立」の名のもとに放置する罪。
アメリカのインディアンが、住んでいた肥沃な大地を追われ、もとの土地とはまったく無関係で、極寒で痩せた土地をあてがわれ、居住地として押し込まれたことは、ご存じと思います。
ただし、その土地がなかば独立国のように扱われていること。
それは本来は良い意味であったはずなのに、実は居留地自治体が、教育や警察を含めて、あらゆる行政サービスを自分たちだけのお金で賄う必要があることに思い至ると、ここに基本的人権すら無視された人々が捨てられるように住んでいるのだという重大さに慄然とさせられます。
この映画の舞台ウインド・リバー居留地も、居留地が極貧であることから、部族警察には警察官がたったの6人しかいない、これでどうやって治安が守れるの?という背景から、映画が作られています。
国民としてのサービスをほとんど満足に受けられない極貧の者たち。
凶悪犯罪が起きても、中央政府は、たった一人の若いFBI係官を派遣して、それでおしまいなのです。
しかし、自らの娘も失った失意のハンターが、FBIと二人で悪に立ち向かう、そういうストーリーです。
内容的には、アメリカ映画伝統の、勧善懲悪ストーリーなのですが、上記のような舞台背景があり、その問題点を訴えるという目的意識が明確に据えられているので、登場人物たちの心を表現する芸達者な役者たちの名演技もあり、一味も二味も違った佳作に仕上がっていました。
ヒーロー物とも言えるかも知れませんが、スパイダーマンのような話とは異なり、もしかすると明日、自分にでもなれそうな、まさに等身大のヒーローの活躍話なので、たいへん共感し、感動しました。
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