「どうにもならない不条理な世の中だけど」デイアンドナイト とえさんの映画レビュー(感想・評価)
どうにもならない不条理な世の中だけど
善と悪の境界とか、世の中の不条理について考えさせられた映画だった
父の訃報を受け、東京から秋田の実家に帰った明石(阿部進之介)は、父に何があったのかを調べているうちに、父の知り合いだという北村(安藤政信)と知り合う
しかし、この北村には謎が多く…
残念なことに、歳をとればとる程、世の中には不条理なことが多いなと感じることが増えていく
何か事件が起きると、良い人が亡くなって、悪い奴が生き残る
真面目に生きていても報われず、嘘をついたり、法を犯した人間が金持ちになる
確かに法を犯してはいるけれど、その気持ちは理解できるという人が、極悪人のような扱いを受けてしまうこともある
この映画は、そういう善と悪の境界にあるグレーな部分や、真面目なだけでは生き残れない不条理さを描いている作品だった
この映画のキーパーソンとなる安藤政信は、昼の顔と、夜の顔を持つ男 北村を演じている
昼は、児童保護施設の施設長をする「善人」
夜は、車を盗難しては、売りさばいて金儲けをする「悪人」
その二つの顔は、一見、真逆のようだけど
その保護施設の子供たちを養うために、お金が必要だから、夜の仕事が必要なんだと言われると、100%悪でもないなと、思ってしまう
しかし、もしも、社会がちゃんと機能していて、そういう施設がなければ生きていけないような子たちを国が全員面倒を見ていれば
夜の仕事も必要ないはずだ
それを一例に、世の中には、あまりにも不条理なことがありすぎて
真面目に生きているのが、バカらしくなってしまう
これは「ギャングース」を観た時も思ったのだけれど
世の中は、大きなところには光をあてるけれど
底辺でコツコツがんばっている人には、なかなか日が当たらない
そして、底辺で働いていても、生活をしていけなくなり、やがて、犯罪に手を染めるようになる
という悪循環の繰り返しだ
それでも、人はどこかに希望を見出して、前を向いて行動するしかない
その、どうにもならない悪循環の結果、起きてしまったできごとに胸が痛くなる映画だった
日頃、生活していて、路地裏で起きていることから、目を背けることは誰でもできるし簡単なことだけど
気づいた時には、日当たりよりも、闇の方が大きくなっている…
なんてことにならないうちに、社会の構造を変える必要があるのだと思う
そして、なぜ、地方は疲弊し、過疎化していくのかも
理解できる作品になっている
かなり重い映画ではあるけど、そこに、日本の現状が描かれているので、気になった方には、是非、観て欲しい作品