「ルポルタージュのような」泣き虫しょったんの奇跡 P CATさんの映画レビュー(感想・評価)
ルポルタージュのような
一度は年齢制限で奨励会を退会したものの、冷めることない将棋への情熱で以てプロへの道をこじ開けた実話の映画。
●ストーリー
瀬川君が将棋を本格的に初めて奨励会へ入り、そして挫折し、再度プロヘの挑戦を行うまでの過程を描き、プロ入りを決めた所で物語は終わります。実話が元なので、このストーリー自体を批評することはできませんが、驚く程ドラマティックですよね……
●演出
時間の割り振りはどの過程も割と均等で、演出についても「あっさり目」でした。ノンフィクションということで、余計な作為を入れたくなかったのかもしれませんが、少々物足りないかな?という印象を受けました。しかし元になったストーリーが十二分にドラマティックなので、あまりクドクドした演出を入れるよりはあっさりしていた方がマシな気もするので、塩梅が難しい所でしょうか。
将棋を指しているシーンの緊迫感の描き方は素晴らしかったです。現実ではありえないぐらいの早指しや強打も、かえって緊張感をもたらしていて良い演出だったと思います。将棋盤の周りを回るような映し方も斬新でした。
そういえばタイトルに「泣き虫」というワードが入っている割に、そこまで泣き虫な印象は抱きませんでした。別にそれが演出上悪い訳ではないですが、折角なのでもう少し違うタイトルにしても良かったのにな、と思わないでもないですね。
●演技
特に不自然さを感じた点はありませんでした。NHK杯だか銀河線だかの久保王将と対局するシーンでご本人登場していたり、その他なんか見たことのあるプロ棋士が複数登場していたのはちょっと笑いました。(ちなみに久保王将の演技も自然でした)
●総評
元になったお話が既にかなりのドラマ性を備えていたが、これをくすませることなく映画化した政策陣に拍手。将棋という動きのない物を映画にしつつも退屈しない出来栄えになっていたと思います。夢とかロマンとか、そんなものを追い求めていたくなる一本でした。あと良い駒欲しい。