「負けるときは負けるべくして負ける」泣き虫しょったんの奇跡 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
負けるときは負けるべくして負ける
1980年代、勉強もスポーツもあまり得意でない小学生高学年の"しょったん"。
好きなことは、将棋。
新たに担任になった若い女先生に後押しされるように、隣に住むユウヤくんと将棋を指すようになり、街の将棋クラブに通うようになった。
ユウヤくんは諦めたが、しょったんはプロ棋士育成機関の奨励会に入会し、プロを目指すが、プロになるまでの制限年齢までに、壁を突破できなかった・・・
というところから始まる物語は、実話の映画化。
粗筋にあるとおりで、その後も、映画化されるのだから、予想通りに進んで行きます。
なので、この映画の見どころはストーリーにはありません。
その時、そんな時、登場人物たちが、どんなことを思って、どんなことで挫け、どんなことで再びやろうという気になるか。
そういう映画は、端から分が悪い。
いっちゃなんだが、登場人物たちが序盤でどれだけ魅力的に描かれているかに、に勝負はかかっていて、この映画、そこいらあたりは上手くいっている。
奨励会をやめていく3段の見習棋士たちの心情、特に、妻夫木聡、駒木根隆介が演じる棋士の無念さはよくわかる。
けれど、しょったんが年齢制限をクリアできないのは、あまりに努力不足で、その心情はわかるのはわかるが、負けるときは負けるべくして負けているとしか感じない。
ということは、後半、、負けるべくして負けた人物に、どう肩入れして観ていくか、ということになるのだけれど、そこがまた弱い。
端的に言えば、「しょったん、将棋、好きか?」という問いかけに、しょったんが答えていないようにみえる。
たしかに、年配アマ将棋指し(小林薫)に、そのように問いかけられ、そのように答えるのだけれど、そこはあざとい演出でもいいから、将棋盤に向かって、「将棋が好き」と問い続けるしょったんを描いてほしかった。
しょったん役のの松田龍平は「負けるべくして負ける」雰囲気はあるのだけれど、それを「勝ち」に転じる雰囲気がなく、もしかしたらミスキャストかもしれない。
雰囲気的には、やはり、若いころの小林薫がぴったりではありますまいか。