「☆☆☆★★★(1回目) ☆☆☆☆(2回目) 2回目を鑑賞しましたの...」泣き虫しょったんの奇跡 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
☆☆☆★★★(1回目) ☆☆☆☆(2回目) 2回目を鑑賞しましたの...
☆☆☆★★★(1回目)
☆☆☆☆(2回目)
2回目を鑑賞しましたので、レビューを少し補足しました。
本人自身による原作…と言うか。プロ編入試験までを書いた回想録(完全版)は読了済。
その回想録を未読の人にとって、この監督にしてはとてもウェルメイドな作りが分かり易い。
但し、回想録を読了済の人には。色々なところで違和感を感じてしまう筈。
予告編で松たか子が「しょったん…」と、言っている台詞を観た時に「はて?」と思った。
回想録にて登場する女性は主に3人。
その内1人は母親で有り、本人が将棋のプロを目指すきっかけを与えた。この回想録の中でも1番重要な女性が学校の先生。
だけどその先生は、本人の事を【しょったん】とは呼ばず、【セガショー】と呼んでいた。
それでは松たか子は高校時代の同級生なのか?
でも彼女は回想録にて、2〜3回程度しか登場せず、特に重要な人とも思えない。
「そうか!恋愛要素としての脚色をしているのか?」
あれ?普通に先生役じゃないの…と(-_-)
そう言えば他にも何となく違和感を感じる場面がそこかしこに。
少しだけ思い出すままに…。
本当は3人兄弟の末っ子なのだが、映画本編では2人兄弟の様に描かれる。
尤も、回想録自体でも。長男はほとんど登場しないから、まあ分からなくはない。
奨励会時代に知り合う上白石萌音だが。本当は高校時代の同級生にあたる女性なので。突き飛ばしてしまうエピソードの真実は、本来ならば高校時代の話。
幼馴染の健弥と共に出場し。その後の、2人の将来を代える事になる。中学生選抜選手権の結果が、事実とは全く違っている。
この時に。全国的には全く無名な2人が、若くして全国に名を轟かせ。現在のA級有名棋士を次々となぎ倒すエピソードは描かれてはいない。
この辺りは、何らかの配慮が有ったのかも知れないのだけれど。その後に本人が感じる。《負けた時にこそ、その後に強くなれるか否かが決まる》その大事な時間の過ごし方が有ったからこそ、現在でもA級棋士であり続ける理由が、奨励会を落ちた後に分かるのだが…。
町の将棋道場の店主役にイッセー尾形。
回想録の中で1番泣けるエピソードが、この人物との別れの場面。回想録自体でもアッサリと描かれてはいたが。映画の中でも実にアッサリとした感じ。まだ映画が始まってすぐの辺りだからなのだろうか?
彼は、本人にとって。夢を叶えた事実の中で、とっても大切な人物でも有る。
同じ様に大切な人物達は数多くおり。その中でも松たか子演じる恩師の先生とのエピソードは。回想録でも1番最初の辺りに描かれていて。本人に「夢を諦めるな!」…と、叱咤激励する大切なエピソード自体が、回想録全体の。回想録を読んでくれる読者の人の。まだまだ夢を求めて前を向いている人達への活力となるべく書かれている。
その恩師から来た1枚の葉書。それは最後に…。
一旦戻ると、イッセー尾形の役名は工藤だが。本当は今野。
他にも渋川清彦演じる山川は、本来ならば小野である筈だろう。
この人物は。回想録に書かれている数多くの志半ばで消えていった元奨励会の人達の中でも、1番やるせなさを感じさせる人物。
回想録未読の人にとっては。何故、この年齢で奨励会に居るのか?が疑問だろうし。読了済みの人にとっては。本当ならば…と思わずにはいられず。回想録を読んでいる人といない人との中で、考え方の隔たりが有るとおもう。
また、プロ編入試験の対戦相手の名前も。色々と配慮している為なのか別な名前になっている。
他にも色々と脚色されている箇所が有るのだけど。事実とは違う描かれ方で、映画作品として逆に効果を上げている場面も多い。
そんな中の1つが、奨励会退会後に再び駒を手に取る場面。
作品中では。幼馴染の健弥と、昔を思い出すかの如くに対局をする。
次のショットでは。初めて町の将棋道場へ向う際の、心の昂りを抑えきれない自転車での疾走場面とのこの対比。ここは、観客の1人として。映画的な興奮を抑えきれない秀逸な場面だった。
もう1つ恩師の先生の葉書。
回想録は、プロ編入試験の第1局に敗れ。残りの対戦相手を考慮すると、既に絶体絶命の立場に追い込まれていた。そこで送られて来た恩師の葉書に勇気を貰い。第2局以降の対局に活かしての突破だった。
まさに、ドラえもんから貰ったのび太君への【夢】の切符。
先生自身が、何度も挫折を味わいながらも。夢を決して諦めなかった象徴の人。
回想録の始めに有ったこのエピソードを、敢えて最後に持って来た事で。この1枚の葉書か感動的な葉書へと昇華していたのは、まぎれもない事実だった。
そんなこんな…と、色々と文句を並べたてたものの。作品自体は良作で有るのはちゃんと伝えたい。
最後に、先にこの監督としてはウェルメイド…と書き込んだが。最もこの監督らしさが出ていたのが、奨励会の退会が決まった直後の描き方。
街のど真ん中にて、人生の泥沼に溺れてしまうのを味わう本人。
本来ならば、こんな場面の様な映像こそが、この監督らしさに溢れているし。終盤での主な登場達を、プロ編入試験と並行して描く演出力は流石!と思わせる。
だけど…だからこそ…と言っていいのか分からないのだが…。
もうクスリに溺れるのは無しにしましょうや!監督。
今後と期待してまっせ〜(๑˃̵ᴗ˂̵)
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2回目の鑑賞
思い出すままに(台詞は正確では無い)
恩師の先生は「人に寄り添える人になって欲しい」…と言った。
プロ編入試験を勧めた藤田には「将棋に人の良さが出てる」…と言われた。
奨励会の同志には「ここは止まり木なんだ」と言われ。妻夫木聡演じる、挫折した奨励会員には「瀬川さんは良い人だ!」…と言われる。
彼は更に、「プロになる人は他人を負かす将棋をする…自分はやりたくない(確かそんなニュアンス)」…と言って去って行った。
いい歳をして家に引きこもっていたのに。それでも父親は「好きな事をするのは良い事だ!」と言って、絶えず背中を押してくれた。
生涯のライバルで有る悠野(健弥)には「もう他人の為の将棋は止めたんだろ!」…と言う。
しょったんには人望とゆう無限の力が存在した。
それもこれも、人の心を思いやり寄り添う気持ちを持ち。夢を見続けて諦め無かったから。
だから周りの人達が、彼の夢を自分達の夢として動いてくれた。
1回目の鑑賞の際には、原作である回想録を読了していた為に。色々な変更箇所が気になってしまいましたが。本日2回目を鑑賞するにあたり、なるべく原作は意識しない様にしながらの鑑賞。するとすんなりと物語に入って行けた。
特に、最後のプロ編入試験合格の下りに於ける盛り上がりは。1回目の時にも、危うくウルウルさせられたものですが。今回は涙腺が決壊寸前に。
いやいや!危なかった(。-_-。)
題名に有る《泣き虫》は。本人自身が回想録に書いています。
作品中に何度もしょったんを戒める次男の兄。
幼い頃に彼から何度も殴られ、泣くとその暴力は収まったと回想している。
泣く事で嫌な事が収まるからこそ。いつしか将棋の勝負に負けた時には。トイレに駆け込んでは、その事実を消し去りたくなったのか?トイレで泣く様になって行く。
人の心を分かる人のしょったん。
勝った時には相手を思いやり。負けた時には、
相手を不快にさせる事なく静かにトイレで泣く。
そんな心優しいしょったんだったからこそ、周りの人たちは彼の為に集まって来た。
特別に凄い事はしていない。大体、将棋の世界観を映像化すると。動きが無いにも関わらず…。それでいてこのクオリティーですから。
間違いなく良作です。
2018年9月7日 TOHOシネマズ西新井/スクリーン6
2018年9月11日 TOHOシネマズ西新井/スクリーン4
2018年9月7日 TOHOシネマズ西新井/スクリーン6