「まあ頑張ったほうかと。2人が救われたと信じたい」ハード・コア Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
まあ頑張ったほうかと。2人が救われたと信じたい
幅広い役柄で活躍する、山田孝之が自らプロデュースし、主演も務めた作品。中規模の全国公開ながら、(主演が当たり前の)佐藤健の共演が話題である。
山田が長く温めてきた漫画「ハード・コア 平成地獄ブラザーズ」を映画化すべく、兄弟役として佐藤健に声をかけ、出演が実現した。個性派の荒川良々の演じる牛山役も、あえて山田が狙ったもの。
監督には、テレビ番組「山田孝之のカンヌ映画祭」で一緒にカンヌ出品を目指した、山下敦弘監督と「映画 山田孝之3D」(2017)以来の再タッグ。ホントこの2人は仲がいい。
主人公・権藤右近(山田孝之)は、社会のズル賢さに折り合いをつけられない、不器用でまっすぐな男。肉体労働の日雇いで暮らしている。反対にソツなく生きる、弟の左近(佐藤健)はエリート商社マンで、兄の不器用さを心配して見ていた。
そんな右近が心を許すのは、仕事仲間の牛山(荒川良々)だけ。ある日、右近と牛山が廃工場で見つけた、壊れかけたロボットは、現代科学を超える驚くべき性能を持っていた・・・。
ロボットは"ロボオ"と名付けられ、空を飛んだり、右近たちが探していた埋蔵金をいとも簡単に見つけ出す。
やはり自分が社会と折り合いを付けて生きているからだろうか。面白い設定だけれど、なかなか共感しにくい。右近と牛山のぶっ飛びエピソードも、2人のまっすぐさゆえで、尋常ではない。
ロボオは右近と牛山に影響を受けはじめ、社会という窮屈な枠組みから救い出す行動を取りはじめる。結末は、"ウソ!?"と思うほど、あっけない肩すかし。この解釈は分かりにくいかも。
信じたいのは、2人が(別の世界で)最終的に救われたんだろうということ。
ちなみに原作(ストーリー)の、狩撫麻礼(かりぶ まれい/Caribu Marley)は今年1月に亡くなった。エンドロールでも追悼文が流れる。
"狩撫麻礼"といえば、松田優作の主演・監督で1986年に映画化された「ア・ホーマンス」があるが、これは原作というには、似ても似つかないほど映画と異なる。
またペンネームを"土屋ガロン"へ改名した「ルーズ戦記 オールドボーイ」は、韓国にて朴贊郁(パク・チャヌク)監督によって、「オールド・ボーイ」(2003)として映画化。カンヌ映画祭審査委員大賞を受賞している。さらにスパイク・リー監督がハリウッドリメイクしている(2014)。
改めてご冥福をお祈りします。
(2018/11/24/新宿バルト9/ビスタ)