「このような作品があるから映画は素晴らしい。」悲しみに、こんにちは uttiee56さんの映画レビュー(感想・評価)
このような作品があるから映画は素晴らしい。
両親を亡くして叔父夫婦に引き取られた少女の日常を延々と映し出していく映画。叔父夫婦は虐待などとは無縁の模範的な養父母であり、実子と同等の愛情を姪にも注いでいる。徹頭徹尾子供の目線で日常を写し取っていくという点では「泥の河」や「マイマイ新子と千年の魔法」に似ていると思うが、本作はより大人との関係を描いていること、大人の目線から見ると手の掛かるわがままな子供を描いているという点で、それらの作品と異なっている。そして、大人の目線からはそうであっても、子供の目線からは子供なりの理由があることが手に取るようにわかるのである。
ストーリーに起伏が乏しいのでやや退屈であり、昼食後の眠くなる時間帯に見たこともあって少し寝てしまったが、結末ではボロボロ泣いた。邦題の「悲しみに、こんにちは」の意味は、映画の始まりではなく、終わりで明らかにされたのである。
もちろん、泣かせの演出は一切なし。子供の目線で日常を淡々と描いているだけである。ここにあったものは映像でしか表現できない世界であり、このような作品があるから映画は素晴らしい。
(ちなみに原題は「1993年の夏」である。これは正しい邦題変更であると思う。)
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