「子どもの瑞々しい感性を見事に映像化」悲しみに、こんにちは ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
子どもの瑞々しい感性を見事に映像化
監督自身の子ども時代の思い出を映画化した作品。瑞々しいという言葉がピッタリと当てはまる作品だ。
90年台前半のスペインが舞台となっている。エイズで母親を失った少女が、叔母の家に引き取られ、新しい家族に馴染んでいくまでを子どもの視点に徹底して寄り添っている。カメラの高さもほとんどが子どもの目の高さに置かれ、終始観察的な(監督の言葉で言うとホームビデオ的な)目線で、ひと夏の思い出を映像に焼き付けている。
母親はエイズで亡くなっているのだが、作品中にその言葉が出てこない。主人公の少女の目線で語られるので、まだ理解の及ばない言葉であるからだ。しかし、母親が何か周囲から「敬遠される」ような理由で亡くなったことだけは、主人公にも空気感のようなものでわかる。
とにかく空気感のようなものに、とても敏感な映画で、やさしい雰囲気もトゲのある空気も高い精度で伝わってくる。
これが長編デビュー作だそうだが、素晴らしい才能だ。
コメントする