鈴木家の嘘のレビュー・感想・評価
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ありきたりな本音なんてないし、自分勝手でいい人ばっかりじゃない。そ...
ありきたりな本音なんてないし、自分勝手でいい人ばっかりじゃない。それぞれが抱えている事、人間の根っこの部分がなかなかリアルで良かった。
しかし、表現しようとしている事はとても良かったのだが、バラバラな感じでまとまりが無いのが残念でした。
いい大人が自殺なんかして、みっともなくないですか?
なんて、正面から向き合った映画だろう。長男が自殺してしまうところから物語は始まるのだが、その時に覚えた違和感はあとで種明かしとなる。それを知った時、母親の愛情の深さに胸を打つ。原日出子ってこんないい役者だったっけ?って思いながら貰い泣きしてしまった。
気遣いすぎる妹の壊れかけた心も、繊細に描いていた。嘘をつくことで母を思い、それを通すことでつぶれだした自分の心を、自分で立て直そうとする行動にまた涙。「菊とギロチン」の時の演技は気が張りすぎていたきらいがあったが、今回はごく自然体に心情を表現できていて、とても好感が持てた。
そして、なんといっても岸部一徳だ。何もしてこなかった父、頼りない父、そう見えていて実はこのお父さんの背中の頼りがいのあることったらなかった。寡黙は、無能でも無関心でもなかった。どうしていいかの術はなくても、何とかしたい気持ちが大きく強く、崩れかけた家族を支えていた。大森南朋も含め、なんと皆芸達者なことだろう。そしてなんといってもコウモリ。好きだなあ、ああいうの。
嘘を重ねることで転げだしていくその先の展開も、けして悪夢にはならず、シリアスすぎず、妙味の笑いも挟む。最高のハッピーエンドとは思えないが、このあたりならいいだろうというところで柔らかく収まった印象。例えれば、坂道を転げたいびつな岩が、うまく踊り場で止まったような。そしてそこには、コウモリがパタパタ飛び回っているのだろうな。
つらい2時間半
俳優陣の演技は秀演。
でも長くて退屈。引きこもりの息子を抱える家族の葛藤
だが、深くうならせるような意味深い描写はなく、ただ
想定内の毎日の描写のみ。これで2時間半はつらい。
記憶喪失の母は家族の演技を完全に信じていたのに、
都合よく思い出すってあるのか?
総ては藪の中、霧は晴れないけれど、コウモリが帰って希望が見え始める
映画が終了し、明かりが点灯した時、場内はシーンと静まり返り、声を出すは一人も無く会場をみな粛々と後にして行った。
確かに、本作の鈴木家の長男が引き籠りの末に自死してしまった遺族の物語を見せ付けられたのだから、明るい表情で興奮して劇場を後にする者はないのは当然だ。
だが、この重苦しく、静かな時間こそが、観客それぞれの人達と映画との静かな語らい、対話の時間で有ったように思う。
観客のみんなが、それぞれの心の中で必死に自分の家族や、引き籠りや、イジメや、自殺、或いは急に家族の誰かと突然死別する事になったなら、自分はどの様に、心の整理をして行くのか?
本作の母親の様に、事件のショックで、記憶を一時的に失ったなら、この家族の様に、みんなも嘘をつくのだろうか?と真剣に、映画に向き合っていたのだと感じられた。
自殺した長男の母を原日出子が体当たりで演じているのは、観ていて辛いがとても好感が持てるものだった。そして母の弟を大森南朋が演じているのだが、本当に姉想いの人の良い弟を魅せてくれていた。
鈴木家の家長で有る筈の掴み処の無い父親を岸部一徳が見事に怪演している点も作品に深みが出ていたし、何故か父がバカな行動をするとほっと安堵出来るので良かったと思う。
そして、一番沢山の嘘を付かなくてはならなかった妹を演じていた木竜麻生がとても巧くて、今後が凄くい楽しみな女優さんだった。
本作の監督脚本を務めた野尻克己さんは、本作が長編のデビュー作と言う事だけれども、脚本が巧く出来ていた。家族と言う運命共同体で有り、近しい間柄で有るからこそ、言える事、言えない事、家族故に嘘を付かなくては成らない秘め事等、家族のそれぞれの立場から見える意識の相違がとても巧く描かれている作品だったと思う。
そしてエンディングの点と線と言うテーマソングもぴったりと鈴木家の嘘の裏に隠されていた切ない本心を良く表していてくれた。
本作は決して楽しい物語ではないけれど充分に味わい尽くせる秀作だったと思う。
総ては藪の中、霧も決して晴れる事も無いけれど、コウモリが戻ってようやく心を紡ぎ出す準備が鈴木家には整うのだった!
【劇パン購入推奨】鈴木家の幸せを願わずにはいられない
見て良かったかと言えば、間違いなく良かった。見るべきかと言えば、絶対に見るべきだ。しかし、この映画を感動すると言っていいものか。人に勧めていいものか。点数なんか付けていいものか。
要するに、エンターテイメントとして評価していいのかどうか、自分には判断がつかない。ここでつけた点数も、とりあえず便宜上付けてみただけのものに過ぎない。
予告ではコミカルな印象を受けた本作だが、実際にはほぼほぼ鬱展開で進行したように感じた。笑える場面はあるけれど、全体のトーンが重すぎるのだ。
映画は加瀬亮演じる引きこもりのお兄さん(30)が、自室で首吊りをするショッキングなシーンから始まる。この場面のことを思うと上映終了後も息が苦しくなった。PG12でも甘すぎると思う。
その遺体を、原日出子演じるお母さん(55)が発見する。これがほんとに明るくていいお母さんなんだけど、左腕から血を流しながら気を失って倒れてしまう。お兄さんの四十九日の日にお母さんは目を覚ますが、お兄さんが自殺した日の記憶が欠落していた。
そこで、岸部一徳演じるお父さん(65)と、木竜麻生演じる妹ちゃん(21)は、お兄さんは死んでおらず、引きこもりを脱してアルゼンチンで働いているという嘘を、とっさについてしまう。この場面で、劇場では笑いがどっと起こったのだが、自分はボロボロ泣いた。嘘が、あまりにも優しすぎて。
もちろんそんな嘘がいつまでも続く訳がなく、嘘がいつ破綻するのかを観客は固唾を呑んで見守り続ける事になる訳だが、その間にも自死が遺族をどれほど苦しめるものであるかを映画は容赦なく描いていく。
最後には、鈴木さん一家の今後の幸せを願わずにはいられなかった。鈴木家を実在する家族のように観客に思わせた時点で、この映画は映画として成功していると言って差し支えないだろう。
【劇パン購入推奨】
劇パンの情報量は非常に多い。監督デビュー作の単館系映画では恒例とも言えるシナリオ全文掲載もあり、非常に読み応えがある。
劇パンに載っていた言葉が最高だったので紹介しておく。
「アイドルを起用する邦画は、カットが多く、セリフが短く、風景や音楽を多用という演出が多いです。
そんな邦画に食傷気味の人は、『鈴木家の嘘』の木竜麻生さんをどうぞ。」
−−−ひろゆき(元2ちゃんねる管理人)
劇パンによれば、この映画は監督の実体験をもとにしたものだという。ならば妹ちゃんこそが監督の分身であり、本当の主役だ。この映画が映画として成立しているのだとすれば、それはひとえに妹ちゃん役の木竜麻生の魅力によるものだろう。
(2018/12/3追記)
木竜麻生さんが第40回ヨコハマ映画祭にて最優秀新人賞を受賞されたとのこと。おめでとうございます。
包丁は引いて使いましょう
引きこもりの長男が自宅で首を吊り自殺、それをみた母親が手首を切り49日間意識不明になり目覚めるも件の記憶をなくしており、長男は元気にやっていると嘘をつく家族の話。
コメディタッチでつくられているもののメインストーリーは案外マジメで、ノリはイマイチ、笑える様なギャグもあまりない。
仕事でアルゼンチンにいる筈の長男の部屋が飾られていたり、そもそもアルゼンチンかぶれでもあるまいし実際にこれで欺される母ちゃんも、これで欺せると考えた家族もヤバいよね…だから霊媒師ってことかな。
良い話だしつまらなくはないけれど、ノリや演出が自分の好みではなく中途半端に感じてハマらなかった。
すばらしい映画でした
大変いい映画でした
家族を亡くすという内容からけっして楽しい気持ちにはなりません
観た後は放心状態になります
でも各所に散りばめられたくすっとなる笑いによってつらい気持ちが助けられます
デビュー作でこんなすごいの作ってしまって
次、どうするんですか 監督さん
是非観てほしい映画です
それぞれの向かい合い方
ずっと心の底に押し殺してきた想いや感情。
率直に悲しみを表現できない自分。
どうして…?、自分のせいなの…?と投げかけても、決して答えの見つからない問い。
ただ、一人一人がそれぞれ、向き合ってみないことには、前に進むことは出来ない。
僕は、物語の境遇と似た家族を知っています。お父さんが、娘の死について、噛みしめるように僕に説明してくれたことを忘れられません。まるで、自分を罰するかのように、そして、娘のことを決して忘れないで欲しいと願いを込めるように。
残された家族や周りの人々の気持ちは、それぞれ異なるのかもしれない。でも、映画のイヴちゃんのように、家族が知り得なかった一面を見つけられれば、鈴木家のように案外一歩踏み出すことが出来るかもしれない。
そして、答えはきっと、残された人は生きて行くということ。
余談ですが、僕の田舎にも、降霊術を生業とする人がいました。僕の親友の父親は、降霊の途中で吹き出してしまって、霊媒師に笑わないよう注意されてたそうです。
時には嘘をついても良い
家族が自殺したという重いテーマを描ながらも、それをユーモラスに、時にクスッと笑わせながら力強く描いた作品
グイグイと引き込まれながら、彼ら家族の問題を我がことのように感じ、見入ってしまった
父(岸部一徳)と母(原日出子)と長男(加瀬亮)、長女(木竜麻生)の4人家族の鈴木家
ある時、引きこもりの長男が自殺する
それを見た母は気を失い、目覚めた時には長男が自殺したという記憶をなくしていた
そこで、長女は「お兄ちゃんは
アルゼンチンにいる」と母に嘘をついてしまう…
日本は、自殺が多い国として知られている
朝、会社に行きたくない人が電車に飛び込み、通勤電車に遅延が発生するのは日常茶飯事だ
しかし、そうやって、毎日のようにどこかで誰かが自殺している割に、正面から自殺と向き合っている映画はとても少ないように思う
この映画は、そんな自殺を真正面から描いている作品だ
そこにはちゃんと理由があって、これがデビュー作となる野尻監督は、家族が自殺した経験があるという
だからこそ、残された家族の描写には、監督の思いが反映されているんだろうぁ
と感じるところが、随所にあった
その中で思ったのは、もちろん、自殺した本人も、生きていくのに相当辛いことがあったんだろうと思う
けれど、残された家族も、その現実を受け入れるのに辛くて長い時間を費やさなければいけないということ
長女はお母さんのことを思って、とっさに嘘が出てしまったけれど
長女自身も、その時は現実を受け入れきれてなかったのでは
ということ
そして、みんなが息子の自殺に責任を感じつつ、少しずつ現実を受け入れていくようになるのだが、その時間がとても辛いということ
その「辛い現実との向き合い方、受け入れ方」にリアリティがあって
なるほど、「経験者は語る」なんだなぁと思ったし、だからこそ、共感できる作品になっているんだなと思った
それも、ただ辛いだけなく、時に笑ってしまうような場面もあったからこそ、観ているこちらが救われた
そして、そんな笑いと同じぐらい大切なのが会話だった
時には相手を罵ることになってしまっても、会話は大事だと思った
会話は、人を癒す効果があるのだ
だからこそ、部屋に閉じこもって会話をしなかった長男は自殺してしまったのかもしれない
辛いことがあった時、無理にその現実と向き合って受け入れなくて良い
時には、嘘も方便だ
と思えた作品
日本で暮らす私たちにとって、それがある日突然、自分の身に降りかかってくることかもしれない
だからこそ、多くの人に観て欲しいと思う
今年の必見作
パイプ椅子に、なんだか古くて黒が出てないプロジェクターでの上映と、試写会にしては最悪の環境だったが、見事な作品だった。
これがデビュー作とは思えない手慣れた感じの演出、相当に練られた脚本、そして素晴らしい演技陣。
とても深刻なテーマなのに、笑いを散りばめて、語り切った。
大森南朋、昔は相当へたくそな役者と思っていたが、アウトレイジ最終章で吹っ切れたのか、この作品では出色だった。
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