「期待していたのとは何か違う」君の膵臓をたべたい おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
期待していたのとは何か違う
とてもきれいな絵で、「僕」と桜良が生き生きと描かれ、すばらしい作品だと思いました。人との関わりを避けていた「僕」が、桜良との出会いと別れを通して、大きく変容したことがとても丁寧に描かれていました。
ただ、期待していたのとは何か違う、何か足りないという印象でした。原作未読のため、そのよさがどこにあるのかはわかりません。しかし、少なくとも昨年の実写版のような感動は、本作では味わうことができませんでした。
実写版では、桜良の生きざまを通して「今を生きる大切さ」を描き、それが胸にずんと響き、自分の生き方にも影響を与えてくれた気がします。それに対して本作は、「僕」の成長を描いているように感じ、視線が「僕」に向かってしまい、どこか客観的に見ていたからかもしれません。結果、目が潤む場面はあっても、泣けるほどの感動はありませんでした。
また、ドストライク級にかわいいヒロイン桜良を、声優のLynnさんがこれまた魅力的に演じていますが、本作ではそれが仇となっているような気がしました。というのも、いかにもアニメのキラキラヒロインといった感じで、現実感が乏しく感じてしまったからです。むしろ、「僕」を演じた高杉真宙くんの、場慣れしてない素朴な演技の方が、本作にはマッチしているように感じました。ついでにいうと、心象風景ともいえるファンタジックというかメルヘンチックな描写も、アニメらしいといえばそれまでですが、正直なんだかなあという感じでした。
いろいろ書きましたが、実写版がよかったので、つい比較してしまっただけのことです。本作単体で見れば、十分鑑賞に値する作品に仕上がっていると思います。興味のある方は、ぜひ「僕」の中に咲いた桜を見てきてください。