「相変わらずアツイが、それ以上に古臭い。アカデミーノミニー全滅の本作をおっさんはこう観た。」デトロイト しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
相変わらずアツイが、それ以上に古臭い。アカデミーノミニー全滅の本作をおっさんはこう観た。
キャサリン・ビグロー。
男顔負け娯楽アクションの名手で、ついにはオスカー監督にまで上り詰め、その後の「ゼロ・ダーク・サーティ」という「女性映画としての、娯楽アクション社会派映画」を作り上げた。
それから数年。ビグローはいよいよ帰ってきた。
待っていました。
だが、アカデミーノミニー発表時にその作品名はない。
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「デトロイト」
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アカデミー賞最有力!!
のチラシが悲しく舞う。
だが本作を観ればそれも納得する。
とにかく出遅れ感、古さ感満載。
黒人映画としては、「それでも夜が明ける」、「ムーンライト」といったアカデミー作品賞をとった2作品と比べると、明らかに「映画」として古い。
それを悪いことに、今更な「手振れの至近距離で実録風のカメラ」が古臭くってたまらない。
もっと言うと、題材も、差別心理の「本当の部分」をついた「ゲット・アウト」が出た時点で、もはや古いと言わざるを得ない。
黒人映画を撮れば、オスカー獲れんじゃね、とまではさすがに思わないだろうが。製作陣の「いやらしさ」が露骨に見えている。それにしたって、出遅れ感はあるが。
これまでプロパガンダ映画と言われ続けてきたビグローだが、本作はついに明らかにそういう意図が見えている「舞台裏」には、そろそろ疲れる。
今年のアカデミーは、セクハラ問題もあり、「正直」を前面に出してくると思われる。
このへんが今年のアカデミーノミニー全滅の要因ではなかろうか。
黒人映画の好きなオレも、この題材を、こんなに実直にまじめに、アツく撮られても、既視感でしかないのだ。
うたい文句の「緊迫の40分間」にしても、そこにいた連中にも問題あるし、そこにいた女子二人も「娼婦」と言われても全くおかしくないため、近っかいカメラと展開だけの演出で迫っているだけで、なんらドキドキすることはない。なかには、殺してください、って言っているような輩まで出てくる始末。
暴動、尋問、裁判、と3幕構成もあまりうまくいっておらず、特に裁判はもうそういう結果だろうな、と分かるような話なので、字幕で終えてよかったろうに。アツイのはいいが、直球すぎて、映画として面白くないんだよ。
そんな作品だが、わずかな笑いもある。
やるだろうな、と思った一番いかれてる警官が、やっぱり撃っちゃうし、やるだろうな、と思った2番手のスケベ面の警官が、女子の「お約束」のワンピースを上から下まで引っぺがしたり、やるだろうな、と思った下っ端の警官がお約束通り「やってしまった」り。また他のシーンでも、署に呼ばれたボイエガに対し、いきなり取り調室の机を捜査官がたたきつけ、劇場が凍る、など。
追記
今年のアカデミーの黒人枠は確かに「ゲット・アウト」。だが、それも話題のみで終わることだろう。
「ゲット・アウト」が出てきて、黒人枠の特別枠はきっと終息すると思われる。
追記2
ジョン・ボイエガ。
背が高くないのがいい。
多分、キモは「『黒人』『若い女の子』は大人しくすべきだ、はしゃぐんじゃない」っていう規定概念を観客に提示しているのではないでしょうか?昨今の週刊誌やネットでの人格攻撃なんてそういうことですよね?