博士と狂人のレビュー・感想・評価
全102件中、41~60件目を表示
言葉に救われた者にしか分からない、が
作中に登場したように「言葉は生きている」し、「脳は空よりも広い」し、「読書をしている時間は何者にも追われない。自らを追う」と思う。
この作品は二人の博士を中心に紡がれている。しかし私は、その二人を献身的に支える女性に魅了された。初めは文語を持たずただパートナーの死にうちひしがれていたものの、時の流れと共にマイナーによって言葉を教えられたことで、強く美しい女性へと変わっていったイライザ。「愛が呼ぶものは愛」失ったものをいつまでも追い続けない強さが見られる言葉となった。ロンドンでの安定した生活を捨てる勇気をパートナーと共にし、辞書編纂を始める際は「今から迷いを捨てて」と言葉をかけるエイダ。この二人の存在はとても大きかったように思えた。
評価を2.5にしている理由は、終わり方でたる。最後まで完成させて終わるのかと思いきや、Aの完成の時点で盛り上がる編纂者たち。最後にはマレーとマイナーの別れやマイナーの釈放を持ってきていた。今作品を人間ドラマだと考えるのであれば良いが、言葉の存在や歴史について着目していたと思っていた私としては疑問が残るものとなった。
英語辞典のドキュメンタリー
オックスフォード大学で英語辞典を作った人(人達)のドキュメンタリー作品。 まず編集責任者の語学力を紹介するシーンが有るが、英語はもちろん、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ギリシャ語、ラテン語、・・・いくつ言ったのかわからなかったが、20以上だったと思う。 まず、そんな凄い人がいた事におどろいた。 誤って人を殺した医師がボランティアでサポートするのだが、彼の読書量がまた凄い。 この殺してしまった人の奥さんに償いをする中で・・・と言う話。 博士達がオックスフォード英語大辞典の出来るまでの過程を描くとともに、ロマンスも絡め見応えある作品だった。
才能をおそれる。
「畏敬」には、おそれる、という言葉が入っているけれど、狂気のような才能を前にすると、人はおそれてしまうのかもしれない。 人がもつ役割と情熱が重なる美しさと、おそれや嫉妬などの気持ちからくる攻撃の対比に胸が痛み、感動がありました。 「舟を編む」とはまったく異なる辞書製作。世界初は、苦しく、先が見えず、理解が得られず、それだからこそ尊い。 人は言葉によって世界をつかむけれど、だとすれば辞書は世界を拡げてくれるツールで、それをつくる方々への感謝が生まれました。
天才は異次元
この作品を見て、凡人の私は住む生活が違うと感じ、現実だけどふと別の世界のファンタジーのようなものすら感じる。 博士と狂人二人の異次元の二人が二人しか分からない境地で共鳴していく世界観。現実離れしてるようで実在で神秘の世界に引き込まれる感じがする映画でした。 ただただひたむきに己の信じる道を進み続ける二人は平行線のようで繋がってるようで二人にしか理解できない世界観。でも見てる人が心打たれる。 多分各々そういう面を持ってるからこそ憧れて共感するのではないかと感じました。
邦題からはどんな作品か想像がつかなかったんですが重厚で見応えのある...
邦題からはどんな作品か想像がつかなかったんですが重厚で見応えのある作品でした。ショーン・ペンの凄まじい演技とメル・ギブソンの二人に魅力されましたしエディ・マーサンも素晴らしかった。世界最大の辞典作りを通して描かれる友情と、もう1つのテーマでもある「赦し」にも心をゆさぶられました。大臣のシーンも胸熱だったなぁ。
下調べ必須作品
この作品は前もって原作を読むか、ある程度下調べをしてから鑑賞してください。 シェイクスピア時代までさかのぼるような、全ての言葉を収録するといった英語辞典の作業なんですが、頻繁に出てくる英単語のやりとりは、字幕があってもチンプンカンプンでしたし(殆どの方がそうだと思いますが)、ストーリー展開も早くて、感情移入ができないままに終わってしまい、とても悔しい思いしか残っていません。 精神を患ったショーン・ペンの役どころが見事だったし、彼を慕うメル・ギブソンも良かったのですが、なんせ作品の流れについて行けず、置いてけぼりを食らった感。 これは下調べをしてから再鑑賞しますよ。 すばらしい作品だということはわかりました。
時代背景を知っておくとさらに楽しめる
本作は、時代背景を知っておくとさらに楽しめる。英国は、英語辞書(英英辞書)を作ることに、なぜこんなに熱心だったのか。時代背景は、以下の通りだ。 産業革命(1760~1830年)によって、世界の覇権がオランダからイギリスに移った。植民地は、アメリカ大陸、インド大陸をはじめ、世界中に広がり、最盛期には世界の1/4の面積および人口を占めた(本作の中でもセリフあり)。つまり、英語はこの時期に急速に世界に広がった。世界の1/4の人口が英語をカタコトで話し始めたということだ。彼らを植民地として統括する大英帝国として、"正しい英語" を普及することは必須であり、かつプライドがかかっていたということ。 そして、オックスフォード大学の学者に任せていたが、絶望的な敗北、つまりちっとも進まない。誰かいないかと白羽の矢を立てられたのが、スコットランドの仕立て屋の息子で独学による学位ももたない研究家だが多くの言語に堪能なことは有名な主人公マレー。"正しい英語" を確立する、という目標に対し、主人公は、「言葉は少しずつ変遷する。だから、全ての世紀の本を読むことで、すべての単語で、過去からの意味の変化を記録する」 という壮大な策を実行する。学者だけでなく、書店や学校といった、言葉に触れる場から 1,000人のボランティアを募って進めるも、17~18世紀に関する裏付けがほとんどとれずに、作業はまったく進展しない。そんな中、殺人を犯し犯罪病院に入院している元学者マイナーから、大量の引用が届き、作業が進みだす。ふたりは、協力し合って、「英語を大空へ押し上げる」 行為が実を結び始める・・・という話。元学者と元学者が犯した殺人の被害者の妻との関係の変化が並行して語られ、あっという間の124分。 辞書を作る話と言えば、邦画には名作 「舟を編む」 がある。あれを観た人は本作にもすんなり入りやすいように思う。(かといって、事前にみないとわからないということは決してない)「辞書作りなんてことに必死になるのか」 という思いもあるだろうが、逆に考えると、「どんなことでも、全身全霊を込めて取り組む話は、映画にすると人の感動を呼ぶ」 ってことじゃないだろうか。 引用から辞書を作り上げようという映画だけに、心に響くセンテンスが目白押し。「Art:その意味は、『闇を恐れることなく、真実を見つめる』」、「人生は肝要と慈悲の下にある」、「言葉の翼をもてば、世界の果てまでも飛べる、私たちの頭の中は、空よりも広い」 等、次から次への繰り出される。それがまた、元学者と被害者の妻の関係と関連して、心に響くんだ。 ぜひ、観てください。どちらかといえば、"静かな淡々とした映画" の部類に近いかなと思うけれど、観て損しないと思います。 おまけ1 イライザ役の女優(ナタリー・ドーマー)、とても魅力的でした。 おまけ2 ちなみに、英国の時代背景をみている際に、下記のような記述を目にした。英国によって、海底ケーブルがいかにして敷かれたか、だ。 ----(ここから引用)----- イギリスでは鉄道と電信は同時並行的に発達した。電信は、鉄道の情報を送るために必要であった。シンガポール経由でイギリスにもち込まれた、マレーシア原産のガタパーチャというゴムに似た個体の素材は,海底の高い圧力・低温でも,ゴムと違って長年にわたり可塑性があるため,海底通信ケーブルが実現した。イギリスは帝国を形成したからこそ,海底通信ケーブルの敷設が可能になった。1857年に初の電信に成功,イギリスの電信ネットワークは,オランダ,ドイツ,オーストリア,サンクトペテルブルクにまで及び、さらに1866年には,大西洋を横断する海底通信ケーブルが敷設された。平均水深が4000~5000メートルと深く,大型の蒸気船での敷設が必須。つまり,蒸気船の大型化も意味したのである。1865年にはインドとの,1872年には,オーストラリアとの電信ができるようになり、世界は,イギリス製の電信でおおわれた ----(ここまで、「世界史研究最前線」(京都産業大・玉木教授)のホームページから引用)----- これはこれで、実現までの苦労と達成したときの喜びがしのばれる。いつかきっと、誰かが映画にしてくれるだろうと期待する。面白そうじゃないですか?!
実はかなり深いんだろう⁈
鑑賞してから,かなりの時間が経っちゃっているが、色んな人のレビューとか見ると,只単にショーン・ペンが好きだから…なんて巫山戯(ふざけ)た理由でのレビューは許されないものかと思わされていたので、少し遅れ,あまり記憶がアヤフヤ状態のレビューになる事を許して欲しい。 趣旨から,馬鹿デカい事(人が本当の意味を知る為)の所謂「辞書」を創る事を、あんなに濃い内容になって居たなぁ⁉️何てテキトウ(適当)な記憶が残った事&未だ出来て1年半位らしい,雰囲気?を気に入った“キノシネマ"という映画館で観た事を,私事で申し訳無いが、自分自身の為にも記録させて戴きました。
前半はよかったが…
辞書作りに励む博士と用例収集を手伝う狂人の話。ふたりに友情が芽生えて狂人の狂気が薄れ始めたまではよかった。それ以降の展開は、頭に疑問符が躍るばかりでよくわからなかった。事実に基づいて作った結果なんだろうけど。
なぜ未亡人は夫を殺した狂人への「愛」が目覚めたのか?院長の治療の目的は何なのか?よくわからないが結果として狂人は壊れ切ってしまい、同時期に博士が狂人を組んでいたことが偉い人にバレてしまい、なんやかんやでとりあえずふたりが救われたところで劇終。
同じ辞書作りの映画でいえば舟を編むはとても面白かった。何が合わなかったのだろう。
博士がメル・ギブソン、狂人がショーン・ペン なかなかお二人ともイイ...
博士がメル・ギブソン、狂人がショーン・ペン
なかなかお二人ともイイお年になられたようで
最近のショーン・コネリーが亡くなって以来
私の好きだった人たちも歳をとるんだと勝手にショックを受けてる
物語はオックスフォード辞典を作る事になる博士と
その編纂に協力する事になる狂人のアメリカ人との関係を描いている
テーマとしては法的な罪の償い
被害者の家族が許してるのに贖罪は必要か?
一見狂人でも人の役に立つ事もあるのに
人を有効利用できない社会の有り様は
本当に考えなきゃいけない問題だろうな
能力を社会の為に役立たせるという目標を除いたら
何の為に社会的な制裁があるんだろうね
狂人でも社会の為になる事もあれば
まともでも社会の役に立たない人も居ると思う
考えさせられた一本だった
もし愛なら、そのあとに続くものは・・・
世界最高峰の辞書といわれる「オックスフォード英語大辞典(OED)」誕生にまつわる驚きの真実の物語の映画化。
19世紀半ば、英国オックスフォード大学で進められていた新たな辞書編纂作業。
しかしながら、膨大な単語の量に作業は頓挫しかけていた。
これまでの言語学者だけでなく、新たな視点を盛り込んで作業に拍車をかけるべく選ばれたのが、独学で多数の言語を極めたジェームズ・マレー(メル・ギブソン)。
彼の編纂方針でカギとなるのが、用例採取。
過去の文学・文献の中から、その単語の用例を抜粋し、語意の変遷を明らかにしようというものだった。
しかし、用例採取は容易ではなく、マレーは民間人の助けを借りることにした。
そんな中、マレーのもとに多数の稀少用例を届け出るものがいた。
その彼は、米国南北戦争で精神を病み、妄想による精神錯乱から殺人を犯して英国の精神病院に収監されている米国元軍医ウィリアム・チェスター・マイナー(ショーン・ペン)だった・・・
といった内容で、辞書編纂の中心を担うマレーと、塀の中から協力するマイナーのそれぞれの物語が交差していくさまが描かれていきます。
マレーは、辞書編纂の中心作業を担うが、在野の言語学者であり、貧しい家の出であることから大学などの高等教育を受けていない。
さらには、イングランド人で占められる言語学者のなかにおいて、彼のスコットランド育ち、スコットランド訛りは蔑みの対象になっている。
マレーにはそのようなハンディキャップがあるが、映画ではもう一方のマイナーに比重が置かれて描かれます。
映画の巻頭は、マイナーの殺人とその裁判の顛末であり、この時点では、彼の特異な言語能力(読書力と記憶力)は明示されていません。
精神病院に収監されてから、看守のマンシー(エディ・マーサン)から、本を贈られ、その本の間に辞書編纂の協力者を求める案内が挟み込まれたあとに、マイナーの秘めたる能力がわかることになります。
殺人を犯したマイナーですが、誤殺であるがゆえにそのことを深く後悔しており、被害者の遺された妻イライザ(ナタリー・ドーマー)と遺児たちのことが気になり、自身の米軍退役後の年金を彼女たちに贈ろうと決めるわけですが、その仲立ちをするのが看守のマンシー。
マンシー役のエディ・マーサンは『おみおくりの作法』の主役のひとですが、ここでも味のある演技をしています。
当初、マイナーの援助をかたくなに拒否していたイライザですが、マンシーの仲介でマイナーと面会。
やはり最初は拒絶の態度ですが、次第に軟化。
マイナーから字を教えてもらうまでに至り、心が絆されていきます。
絆されたイライザが、マイナーに贈る短い文が、この映画の肝です。
「If love....Then what?」 もし愛なら、そのあとに続くものは何?
イライザから赦しを得ることなど許されるはずもない、そんなことは自分自身を許せない、と考えていたマイナーは、こののち苦悩と狂気のどん底へと落ちていきます。
心身共に衰弱したマイナーのもとを訪れるマレーの言葉が、マイナーを救います。
「If love....Then...LOVE」 もし愛なら、そのあとに続くものは、やはり愛だよ。
辞書づくりの映画と思わておいて、帰着点は愛。
かなり、じーんと胸に来るものがありました。
言葉は生きている
映画評を読んで興味を持ち、鑑賞。 この時代に辞書を作るということは、全て手作業であり、相当な苦労があったはず。長い年月がかかり、その間にまた新しい言葉が生まれたり、ひとつの言葉に新しい意味が生まれて以前とは異なった使われ方をしたり。 そうすると初期の頃に作った部分が古くなってしまうな、、、と思ったものの、よく考えたらこの時代は今のように情報流通が激しくないから、言葉の変化もゆっくりだったんだな。 夫を殺された未亡人が犯人と心を通わせる部分についてはなんだか無理矢理な感じだけれど、マイナーの精神症状の変化を描写するためのストーリー展開として必要だったということで、容認。
言葉と心
実話だけに、偶然の2人が出会うところが運命を感じます。人間の醜い「地位」と「権力」は戦争・研究・創作…なんの分野にでも存在して、自分に嘘をつくことが後に自分を苦しめちゃうのかな。 言葉があるから心が存在するのか、心があるから気持ちを言葉にするのか… 難しいテーマです。興味深い作品でした。
髭が、鬱陶しい!(笑)
ようやく観ました。
英語も出来なきゃ、原作も知らない、
英和辞典作った学者の話としか。
正直、話と言うかストーリーがかなり散漫
に感じました。後、編集で調整していると感じるシーンがあり、感想としては「普通」
先入観として、辞典作りに焦点を充てていると思っていたので、マレーとマイナーが出会うまでが長いと感じました。
個人的にメル・ギブソンとショーン・ペンの人物像を同じくらいに扱っている為、辞典作りと精神疾患の患者のストーリーが同時進行で話が散漫に感じたのかと。
そもそも、マレーがいきなり辞典作りの責任者に抜擢されて話が進むので、辞典作りへの情熱に対する描写が弱く感じ、(言語学に強い一般人てだけ。)また、何故マイナーが辞典作りに協力する気になったかが唐突でした。
後、未亡人がマイナーに愛情を持ってしまうのですが、旦那殺した相手に、同情や境遇を赦してしまう感情はあってもあそこまで一途な感じになるかな?
仮に持ったとしてもあからさまに態度に出さないのでは?(原作通りと言われればそれまでですが。)
まあ、典型的な感想で、思ってたの違う印象。いい意味で裏切られたと言う事もなく、かと言って悪かったと言う程酷くも無い。なので「普通」です。
美術、演技などは、言うまでもなく素晴らしいです。
観れてよかった!
あまり下調べをせずにOED編纂のノンフィクションということだけを念頭に観たので、戦争や精神病の要素など心が痛くなる描写もあったことに驚きましたが、かなり印象に残りましたし鑑賞後も深く考えさせられました。
夫を殺害した犯人に恋に落ちるということが私には想像し難かったのですが、これは宗教による考え方の違いでしょうか。他の方のレビューをチラッと拝見して「赦すこと」と「赦されること」にそれぞれ壁があること、神に対する思いなど、なるほどと後々思いました。
大学の授業でOEDの素晴らしさを語ってくれた教授がいましたが当時は理解できず、OEDを使って英単語の 起源を調べる課題も中途半端に嫌々ながら仕上げてしまいましたが、鑑賞後は居ても立っても居られず”art”など調べてしまいました。
大好きな英語の奥深さ感銘し、戦争の恐ろしさを痛感した、そんな映画でした。出会えてよかったです。
直近では一番
109系が邦画に肩入れしているので、大概キノシネマにお世話になってます。で、ショーン・ペンのならず者が好きではないし、メル・ギブソンの自傷チックなとこも好きではないので全く期待せずに行ったら、良い映画でした…
ナタリードーマーって何かで見たことある顔ですが観たことなかったです。彼女がムサイダブル主演に一服の清涼で、博士の取り巻くが良くって、あの人はホーンブロアーかな?良いですね。看守も良い。お薦めできます。
精神病患者のリアル
過去の精神病患者に対する誤った治療や、精神病患者が辿る不安定がよく描かれています。
とくに、正常を保っているときの状態。
精神病患者は、ずっと異常な世界にいるわけではないという描写が素晴らしい。
ショーン・ペンの演技も凄い。
言葉のルーツを紐解くという作業が二人を近づけ、友情からリスペクトに発展し。
博士を取り巻く人々も、芯からの理解者。
考えに相違はあっても、折り合おうとする姿勢が、それを説明する言葉たちが美しい。
何が彼女の心を打ったのか、なぜ赦しを超える愛に発展したのかは、本人にしかわからない感情でしょうが、これが小説以上に観る者を圧倒するわけです。
最後までハラハラしながらも、エンドロールの最後まで余韻を楽しめる作品でした。
全102件中、41~60件目を表示