「オックスフォード英語辞典誕生秘話」博士と狂人 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
オックスフォード英語辞典誕生秘話
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19世紀、オックスフォード英語辞典誕生秘話。オックスフォードならさぞ大学の権威筋が編纂したものと思っていたが独学で言語学をマスターしたジェームズ・マレーが編集主幹というだけでも意外なのに精神を病んだ殺人犯ウィリアム・マイナーが協力というのも驚きでした。もっとも彼はエール大学の医大生だったころアルバイトでウェブスター辞書の改訂版製作に関わっていたので辞書に関して造詣が深かったと思われます。
邦画の「舟を編む」も辞書編纂の話だったが、冒頭の右の定義がユニークで惹きこまれてしまったが本作は英語だし、出典や用例に拘るのであまりピンとこなかった。
何故マレーらが過去に遡って語彙を追っているかというと、1066年のノルマン人によるイングランド征服後1362年までフランス語を公用語にされていた、16世紀の後半になると、さらにラテン語、ギリシア語をはじめ、ヘブライ語、アラビア語などの流入も進んだ。母国語の再定義はまさに英国人のアイデンティを復活させるための偉業だった訳である。
それでも、どこの国でも権威を笠に足を引っ張る輩はいるから編纂作業は順風満帆と言う訳では無いし、スキャンダルが絡んでも不思議はない。
ウィリアム・マイナーの精神錯乱は南北戦争従軍時の今でいうPTSDが原因だから同情の余地はあるものの罪もない人を撃つなんて悩んで当然、看守は嘔吐していたが自身の陰茎を斬り落とすなんて酷いシーンに付き合わされた。
総じて、編纂の背景や苦労はわかったものの感傷的に描き過ぎているし、観ていて愉しい映画ではありませんでした。
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