「許すことと許されることのズレもテーマ」博士と狂人 トマソンさんの映画レビュー(感想・評価)
許すことと許されることのズレもテーマ
ショーンペンの新作!ということで、とりもなおさず鑑賞。怪優ぶり健在。
ところで「舟を編む」の英国版と軽い気持ちで見てはいけません、、、て冗談はともかく。
世界中に宗主国を持ち征服しきった自負心に溢れた1800年代後半の英国。その過去の栄光に威信をかけた辞書の大編纂プロジェクトが、このような歪なスキームで発進していたとは知る由もありませんでした。使われてこその言葉、生きた言葉の立体的編纂は到底専門バカの集まりのアカデミック村の長が頭を突き合わせても到底なしえなかったであろうことは想像がつきます。
辞書作りと並行して、自らのPTSD的精神疾患と被害者に対する罪悪感に苦しむ殺人者ウィリアムに惹かれていく未亡人の純愛ストーリーも走ります。あの時代、特に女性の識字率低かったんですね。軽くショック。そして徐々に夫を殺したウィリアムを許し愛してしまう素直なイライザに比べ、許されることで彼女の夫を2度殺してしまったとさらに苦しむところが宗教心も強いインテリ・ウィリアムであります。
言語の天才髭もじゃ男が二人、初対面にもかかわらず著作物の一節を暗唱して会話をつなぎ、あっという間に唯一無に友情を育んでしまうシーンが一番高揚感に満ちた明るい場面でした。
それにしてもジェニファー・イーリーって、メリル・ストリープに似てますね!焦りましたよ、まさかとは思ったけど。
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