「【”言葉の翼”を持ち、英語圏に貴重な足跡を残した”交わる筈のない”二人の男の物語。二人と関わる二人の女性の振舞いと、19世紀の意匠が印象的な作品でもある。】」博士と狂人 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”言葉の翼”を持ち、英語圏に貴重な足跡を残した”交わる筈のない”二人の男の物語。二人と関わる二人の女性の振舞いと、19世紀の意匠が印象的な作品でもある。】
ーある晩、PTSDに依る狂気に取り付かれた男:元アメリカ軍医師マイナー(ショーン・ペン)は、誤って罪のない男を射殺してしまう。その男には妻メレットと幼き子供が6人居た・・。
一方、スコットランドの貧しい仕立て屋の息子マレー(メル・ギブソン)が、その豊富過ぎる言語知識故に、夢叶い、オックスフォード英語大辞典(OED)の編纂責任者に抜擢される所から、物語は始まる。-
■印象的なシーン
・マイナーは精神病院に収監されるが、守衛の一人が大怪我をしたときに戦時を思い出し、正気に返りその男を救うシーン。
ーマイナーの姿を見ていた別の守衛マンシー(エディ・マーサン)は、その後、マイナーとメレットとのやり取りを取り持つようになる・・。ー
最初は拒絶していたメレットだが、マイナーからの謝罪の意を込めた援助の数々に徐々に心を開いていくシーン。
特にクリスマスのシーンが良い。マイナーが戦火で心を病んではいるが、元々は健全な心の持ち主であることが分かる。-
・マレーの辞典編纂過程で、17,18世紀の言葉のデータが決定的に足りない時に、マイナーから送られてくる膨大なデータ(紙片に記されている)。
そして、会う筈のない二人が初めて会うシーンと、その後の二人の間に育まれていく行く絆の幾つかのシーン。
ーマレーもそうだが、マイナーの驚愕の語彙力と読書量には、脱帽する。知的好奇心が擽られるが、残念ながら私には、概ね分からない・・。-
・マイナーとメレットが初めて会うシーンから、徐々に距離を縮めて行く過程。文盲だったメレットに少しづつ言葉を教えていくマイナー。
だが、彼女からの2通目の手紙を読んだ彼は・・・
-”あわわわ・・” 男だったら、物凄くイタイシーン。だが、マイナーの人間性と狂気性が分かる。現れるメレットの夫の亡霊・・。-
・マイナーがメレットの子供たちの名前を一人一人言いながら挨拶するシーンで、長女だけが、マイナーの頬を引っぱたくシーン。そして、その後マイナーが裁判にかけられた際に、メレットが彼を擁護する言葉を述べる際に、頷く姿。
ー”マイナーを時間がかかったが、漸く赦せたんだね・・。”
ここでの、韓国や日本に根付く”恨(ハン)”の文化とキリスト正教に基づく”赦し”の文化の違いを受け入れるかどうかで、今作への受け止め方は違って来ると思われる。-
・マレーの辞書編纂に犯罪者マイナーが関わっている事が分かり、任を解かれるシーンでマレーの妻エイダ(ジェニファー・イーリー)がオックスフォード大の関係者たちに ”特にマレーの出自、人種に偏見を持つ人物二人に向け” 話す言葉。
ーこのシーン、とても良い。怒りを込めた言葉を静かに笑顔を浮かべ話す姿。沁みる。ー
<二人に対する様々な横槍の中、妻の進言もあり、オックスフォード英語大辞典編纂の仕事に戻ったマレー。
そして、病院長の無理な治療により、強固症になってしまっていたマイナーが”ある人物”の行為で、正気に戻るシーン。
夫を殺されたメレット・イライザとマレーを支える妻エイダの言動がこの作品を、より感慨深く、見応えの有る作品にしている。
重厚で、見応えある作品であると思います。>
おはようございます。
日本、韓国に根付く恨の文化とキリスト正教の赦しの文化、その違いですね。
キリスト教とは関わることがほとんどないですが、赦すことのできる人間になれるよう、悔い改めます😅