「斎藤工はまだマシなほうのモンスター」去年の冬、きみと別れ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
斎藤工はまだマシなほうのモンスター
いきなりの第二章。と、のっけからのトリッキーさに、もしかしたら数秒間眠ってしまったかと思い焦ってしまいました。これはビリー・クリスタルの『彼と彼女の第二章』を第一章から観なければと思い、第一章を探し求めていたことと似ている(いやいや全然)。
猟奇的な写真家・木原坂雄大(斎藤工)、その姉・木原坂朱里(浅見れいな)、週刊誌編集者・小林良樹(北村一輝)、そして新進気鋭のルポライター・耶雲恭介(岩田剛典)とその婚約者・松田百合子(山本美月)の織りなす複雑怪奇な心理クインテットとも言えようか。真実を積み重ねようにも、それぞれに嘘や秘密があるためアンバランスさという虚構をねじ曲げてしまったかのようだった。
人が燃える瞬間をカメラに収めようとする異常性。その木原坂姉弟の凄惨な過去に小林が絡んでくる。それを暴こうとするものの、恋人を監禁されてしまうという悲劇のヒーロー。うーん、何だかワケが分からん・・・といったストーリーから一転、小林が耶雲の過去を洗い出してからが怒濤の逆転劇となるのだ。
虐待?近親相姦?人のものを欲しがる性格といった木原坂雄大一家の過去も大きなミスリード。そこへ根底の異常性欲者と異常姉弟愛といった闇の部分に復讐劇が絡んでくる。そして5人が5人ともモンスターであったという驚愕。終盤になって、二回も恋人を奪われたんかいっ!リーアム・ニーソン以上だわ!と勝手に感じたのも事実。
金沢も舞台となっているので少々加点。原作は未読だけれども、フリーライターの「僕」目線であるところから映画の脚本は見事だと思う。言ってみれば、僕こと耶雲視点から小林視点に変化するのが絶妙だったからだ。第二章から始まった仕掛も視点変化を意識したからなのだろう。久しぶりに邦画サスペンスに魅了された。