「大傑作!」去年の冬、きみと別れ お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
大傑作!
若いころ、千冊以上も推理小説ばかりを読んでいた時代が、私には、あります。
その私が言うのですが、これほど素晴らしくも凄みのある推理小説に出会ったことが、いまだかつてないと思える、そんな作品が原作です。
ただ、おそらくはこの圧倒的な小説に直面して、映画人たちは途方に暮れたことでしょう。
文字だからこそ成立する話。無理なものは無理だ……と。
しかし、文学の世界からの挑戦状だと感じたであろう映画人たちが、おそらく何年も頭を捻り、悩み抜き、完成させた本物の映画こそがこの映画なのだと思います。
映像があるからこそ、一瞬で成立しうる「説明抜き」の納得・得心。
美しくも凄惨な映像群によって観客に示し、哀感はあくまでも清く哀しく、言葉に尽くせない作品に仕上がっていると感じました。
小説を凌駕した映像。
その一例が、たとえば執筆家の秘密の書斎に踏み込んだ時に編集者が見た風景だったりするわけです。
映像だからこそ、一瞬で事件のすべてが理解できる。
観客の心にモヤモヤしていたものを解消させてしまえる映像力。
こういうのを観ると、映画ってのも捨てたものじゃないな、と感じるのでした。
ネタバレになることを恐れて、歯に物が挟まったような書き方しかできませんが、この映画は昼飯夕飯を抜いてでも観なくてはと思える大傑作だと思います。
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