「化物には化物を。きみの為に…」去年の冬、きみと別れ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
化物には化物を。きみの為に…
このキャスティングや、やたらと推しまくる予測不能なストーリー!衝撃のオチ!に偏見を持ってしまって、公開時はほとんど興味無かったが、実際見てみたら…、
一緒にレンタルしてきた邦サスペンスでは『不能犯』の方に期待してたのだが、完全にこちらの勝利。
なかなか面白かった!
フリーライターの耶雲は、1年前に起きた焼死殺人事件の容疑者であるカメラマン・木原坂の密着取材を始める。
翻弄される内、やがて木原坂は耶雲の婚約者・百合子に接近、そして同様の事件が起き…。
変わり者アーティストながら、まるで化物のような容疑者。
法の裁きからは逃れたものの、取材を続けていく内に、明確な犯行があったのではないかという確信を強めていく。
が、すでに化物の獲物として狙われ…と、一見まんまと罠に嵌められたようだが、
数多くのサスペンスやミステリーの映画を見てると、多少の察しは付く。
つまり、翻弄されていた側が実は巧みに罠を掛けていて、復讐する…というもの。
実際その通りで、途中から展開が読めてしまったが、それでも話に面白味が充分だったので、展開読めても肩透かし感は無かった。
それ所か、劇中の“復讐者”の如く、こちらの狙い通りに展開していって、最後まで面白く見れた。
この“復讐物語”の登場人物は、フリーライター、容疑者のカメラマン、カメラマンの姉、ライターの婚約者、ライターの担当編集者。そしてもう一人、ある女性…。
容疑者であるカメラマンの性格。
彼と彼の姉のある過去。
それに関わるある人物。
その過去の事件が異常な性格を形成した要因でもあるが、だからと言って容疑が掛かっている焼死事件の罪が帳消しになる訳がない。
犯した罪はおぞましい。
実際手を下した者も、そのおぞましさに魅了された者も、その場に居て止められなかった者も。
復讐は決して肯定されるものじゃない。
しかし、この罪深き化物に裁きを下すには、こちらも罪深き復讐の化物になるしかなかった。
見る前は難色を示したこのキャスティング。
事実途中までは、斎藤工や北村一輝に存在感があって、岩田剛典や山本美月は完全に力量不足と思っていたら、見事“演じ化けていた”。
岩ちゃんもなかなかやるじゃん!
でも最も凄みを発揮してたのは、浅見れいな。一番の化物だよ。
一応ネタバレチェックは付けたけど、どんでん返しストーリーなので、詳しくは言えない。
決して見て損はしない上々のサスペンス・ミステリーだったと思う。
「ん?」と思った開幕の“第2章”や、張り巡られた伏線が回収されるカタルシス。
遂に果たした壮絶な復讐劇の醍醐味。
やっぱり映画って、食わず嫌いは良くないね。
このラブストーリーのようなタイトル。
続きの言葉がある。
復讐サスペンスだが、見終わってこのタイトルと続く言葉を知ると、切なく哀しい愛のメッセージである事が分かる。
去年の冬、君と別れ、僕は…