「プロットが優れたサスペンス」去年の冬、きみと別れ 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
プロットが優れたサスペンス
岩田剛典は2016年の「植物図鑑」のときの演技に比べると、見違えるように上手くなった。真意を隠しながら仇敵にアプローチするというややこしい役柄をリアリティの感じられる演技でこなしていた。
猟奇殺人事件とその真相を追うジャーナリストという構図が、物語が進むにつれて徐々に崩されていくプロットは、とても優れている。「全員、ダマされる」というキャッチフレーズも強ち大袈裟ではない。
殺人の量刑は懲役5年から死刑まで幅広いが、放火も同じく懲役5年から死刑まである。二つが合わさった放火殺人となると、死刑になる確率が一気に上がりそうだ。この作品のリアリティはそういった法律的な側面にも裏打ちされている。
山本美月も相当に演技力が鍛えられていて、このややこしい作品でもなるほどと頷かせる演技をしていた。監督の演出も要所要所で作品の世界観から逸脱しないように気を配っているように見える。
プロットも役者の演技も監督の演出もとても優れた傑作だと思う。
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