「ミステリー失格」去年の冬、きみと別れ TRINITYさんの映画レビュー(感想・評価)
ミステリー失格
中村文則の原作もミステリーとしての結末が無理矢理だったがストーリーが一部変わっているとの事だったので一応鑑賞。映画でも無理矢理感は変わらずひどい仕上がりだった。
意外なオチがあればなんでも良い訳ではない。
そもそも現代の殺人事件では遺体は解剖され歯型やDNA等で被害者の身元の確認が行われる。
身元不明ならともかく、予想される被害者がいる段階で照合され本人確認が行われ被害者が別人と判明するものだ。
そこをごまかしたいならもっともっと昭和の初期に設定せねば説得力のカケラもない。基本を無視した殺人ミステリー作品に価値はない。
せめて昭和初期の放火殺人事件の殺人犯として斎藤工が冤罪で収監されている老人で死ぬ間際に手記がでてきて墓の遺骨のDNAが別人とわかり冤罪がわかる設定にしてあれば納得したが、これでは単なる基本を無視した駄作ミステリーだ。
自殺志願者が死ぬよりましと殺人に協力するなんて設定も無理矢理。
説明セリフいれれば誰もが納得するとでも思ってんのかね?
解体間際のビルの廊下電気がついてるのも納得いかん。部屋だけならまだ発電機て事で納得するけど、共有部分とかおかしすぎるわ。
クレイジー姉さんが自分の殺した人間の恋人に、暗くていかにもなんかされそうな解体ビルにのこのこついて行くのも無理矢理。
クレイジーな姉さんだから自殺願望があってノコノコついていって襲われて『やっと死ねる』とか言ってニヤリと笑うのかと思えば、怯えて悲鳴あげてるし。
解体ビルの恐ろしげな雰囲気で襲うと格好良いよね?的な設定だろうけど。暗いトンネルで襲ったほうが、よっぽど自然で説得力あるし。
無理矢理な所が言い出したらきりがない。申し訳ないが私にはこの手の嘘くさい部分を多目にはみれません。
加えて終始、力んだ能面の演技の主演にもしらけざるをえない。最初から力んで怒りをたたえた顔して怪しさバンバンだして取材申し込とかないっしょ。
あれでは僕怪しいですよ感はんぱない。
本日三本鑑賞したが『15時17分、パリ行き』以外『空海』『去年の冬、きみと別れ』2本もの駄作を見てしまって少々気分が悪い。
映像としては美しく北村一輝も斎藤工も素晴らしかっただけに残念。
中村文則の小説を映画にするならぜひともこんな駄作ではなく『掏模』をハードボイルドタッチな映画にしてほしいものだ。