「原作からの改変の鮮やかさよ」去年の冬、きみと別れ AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
原作からの改変の鮮やかさよ
売れたミステリー小説の映画化で、原作を読んだ観客を驚かせるのが難しいのは当然だ。はなから諦めて原作のトリックを忠実に再現する場合もあるし、策を弄した揚げ句に小説の魅力を失ってしまう不幸な例もある。
そんな中、「去年の冬、きみと別れ」の改変は実に鮮やかだ。書き連ねたいのはやまやまだが、原作のトリックの核心部分を残しつつ、「映像化不可能」と言われた要素を巧みに組み換えて別の仕掛けを創造した、と評する程度に留めておこう。原作ファンでも「そこをそう変えてきたか!」と驚嘆すること請け合いだし、未読の人ももちろん楽しめるはず。
「イニシエーション・ラブ」のトリックの改変は(当たり外れのある堤幸彦監督の映画であることを考慮しても)相当うまくいった稀有な例だと思うが、本作もそれに匹敵するか、超えるぐらいの成功例に数えられるだろう。脚本・大石哲也&瀧本智行監督のコンビにお礼を申し上げたい。
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