「鬼慟哭」友罪 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
鬼慟哭
原作小説未読。なのでラストの結末が小説とはどう違うのかは不明。唯、唯、主演生田斗真の慟哭が何度も何度も映し出されるので、そういう意味では確かに女性客の異様な多さは、このシーンを愛でるというスタンスなんであろうことは容易に想像出来る。とはいえ、確かに、男前が、あれだけの慟哭を表現するのだから絵になる。特にアイドルも歳をとれば顔だって弛んでくるから、その深い皺が良い表現手段として生かされているのである。
金属加工工場のあの過酷さは、リアリティがあったのに、何故に寮内の掃除が行き届いている様は全くリアリティが感じられない。男、しかも所謂DQNがいるような場所なんだろうから、もっと床とかにゴミとか散乱しているだろうし、その辺りのゴミ屋敷振りをもっと演出してくれると、荒みきった環境に拍車が掛かるのだと思うのだが・・・
色々難癖は付けたが、総じて流石俳優陣の質の高さは紛うことない。大変素晴らしい演技である。勿論、都合良い所とか、こんなに色々な問題がサンドイッチされているような関係性はないんだろうから、そういう意味では如何にあり得ない話をさも現実のように作り込むストーリーデザインは小説の通り、秀逸である。勿論、こんな究極の状況に置かれる人はそれ程はいない。だからこそ想像力を逞しくして生きるより仕方がないし、その正しい選択は誰にも分からない。だから本作でもその明確は答えを出しているわけではなく、しかしあまり頭でっかちにならないよう、感情と理性をなんとかバランス取りながらも生きていくことをまるで針のむしろのように続けていく示唆に、何とも言えない重しを乗せられたような胸のつぶれる気持ちを頂いた様な気がする。今までの監督作品の中でも非常に解りやすい作品であった。
唯、一点、あの動画が抜かれたトリックはきちんと観客に知らせて欲しかったなぁ・・・