「酒鬼薔薇聖斗に感染は生じるか」友罪 マユキさんの映画レビュー(感想・評価)
酒鬼薔薇聖斗に感染は生じるか
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主に4つのスレッドによって構成されているマルチスレッド方式の物語で、元雑誌記者の益田のスレッド、連続児童殺傷殺害の犯人で出所した青柳のそれ、子どもを引き殺した息子を持つ父親、山内のそれ、医療少年院で青柳を担当した「先生」、白石のそれ。
益田は中学時代の親友の自殺の引き金をひいた「罪」に悩み、青柳は過去に起こした事件の「罪」に苦しみ、山内は息子の過失の「罪」に苛まれ、白石は仕事に没入し、愛娘に向き合わなかった「罪」を後悔する。
社会学者の宮台真司の言葉を借りれば、この物語の鍵は「ミメーシス(感染)」だ。益田が自らの罪と向き合おうとする姿勢が青柳にミメーシスを引き起こす。息子が家族を持ち、自分の罪を償おうとする姿勢が山内にミメーシスを生じさせる。流産した娘の姿が白石にミメーシスをもたらす。
そして益田へのミメーシスは青柳という矛盾を孕んだ、しかし自殺した親友の姿が投影される存在そのものによって引き起こされる。ミメーシスの循環が、この重苦しい物語にわずかな希望として示される。
この映画が、酒鬼薔薇聖斗に向けたメッセージだ。
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