アフターマスのレビュー・感想・評価
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肉体を封印し、抑えた演技で人生と戦うシュワちゃんの新機軸
高額の制作費を注ぎ込んだハリウッド活劇に出演する機会もなくなったシュワルツェネッガーが、このような人間ドラマに軸足を移して居場所を求める姿は非常に興味深いものがあるし、真の意味での彼の“人生の闘い”を感じずにいられない。
とはいえ、題材としてはかなり衝撃的だ。冒頭で妻と娘の到着を待ちわびて鼻歌歌いながらシャワーを浴びる彼が、急転直下、地獄の底まで叩き落とされてしまう悲劇はやりきれないものがある。劇中、航空会社の弁護士に「誰も謝罪しようとする者がいない」と正論を叩きつける場面はシュワちゃんの静かな”凄み”を感じる名シーンと言えるだろう。
その後の顛末は観客の反応を二分させるものがあるだろうが「based on true story」とある以上、描写することが避けられないシーン。彼らにはまた別の出会いや決着もありえたのだろうか。様々なボタンの掛け違いが鑑賞後の重い余韻となって留まり続ける。
実話だから一層虚しい復讐劇
本作は実話に基づいた悲劇の連鎖の物語です、実際の事故は2002年7月1日)に、バシキール航空2937便と、DHL611便が、ドイツ南部の都市ユーバーリンゲンの上空で空中衝突した航空事故、事故調査によれば管制に当たっていたスイス・チューリッヒ航空管制センターの接近警報装置(コンフリクト・アラーム)が、事故の約30分前から機器メンテナンスのため作動していなかった上にレーダーや電話回線の不調が重なったことが大きいようだ。勿論、管制官が複数いれば余裕ある対処が出来て事故を回避できたかもしれない・・。
得てして事故は設備トラブル、ヒューマンエラーが意図せず重なる場合に起きるのでしょう。
筋肉派のシュアちゃんにしては抑えた熱演でした、実話だから一層虚しい復讐劇、観ていて辛いだけでした。ただ、実話では服役後ロシアに戻った主人公は多くの子供の命を奪った管制官を刺殺した英雄として処遇され、北オセチア共和国の建設副大臣に任命されたそうだ。
映画では殺した管制官の息子に殺されそうになるお決まりの負の連鎖、復讐の虚しさを強調した終わり方だったので納得です。
タイトルなし
飛行機事故で妻娘を亡くし、事故の責任者である管制官を殺害してしまう実話ベースの話。アーノルド・シュワルツェネッガーが珍しくアクションなく演じ、実話ベースだけに全体的に暗く救いがない。
『あなたとは違うと云う復讐と収束』
自宅(CS放送)にて鑑賞。実話ベース。二機の飛行機が空中で衝突、乗客乗員全271名が犠牲になった不幸な事故が発生。妻と身重の娘を亡くした被害者の男と事故に繋がる直接の原因となる過失を犯した男、事故による二人の苦悩と葛藤をじっくり描く。“ローマン・メルニック”役のA.シュワルツェネッガーの特に塞ぎ込んだ演技に無理があった。対照的に“ジェイコブ〝ジェイク〟・ボナノス(パット・ディールマート)”を演じたS.マクネイリーが素晴らしく、彼の演技が無ければ、ウンッと評価を下げていた。微かな希望を残し、復讐の連鎖を絶ち切るラストも好み。65/100点。
・クリスマスシーズンだった事故発生直後から始まり、約半分過ぎに一年後へと続く。何度か登場する上空の青空に描かれる飛行機雲、ラスト近くでは交差し別方向へと二本の飛行機雲が伸びて行く。神の視線を思わせる真下を見下ろすラストカットも深い余韻を残す。
・実話ベースでヒューマニズムを揺さぶられるのは、C.イーストウッドが撮りそうな題材だが、彼が作れば恐らく後半からラストの展開が大きく変わっていたのではと思われる。
・冒頭に表記されるテロップの通り、本作は'02年7月1日21時35分、バシキール航空2937便(機体:Tu-154M、乗客60名・乗員9名)とDHL611便(機体:ボーイング757-23APF、パイロット2名)がドイツ南部のユーバーリンゲン上空にて、両機の乗客乗員71人全員が死亡した衝突事故に着想を得た物語となっている。鑑賞後、野次馬根性からどこ迄が真実か調べてみて、少々驚いてしまったが、敢えて詳細はこの場に書かないでおく。
・本作の殆どのロケはオハイオ州コロンバスで撮影された。コロンバス市には、“ローマン・メルニック”役ののA.シュワルツェネッガーのボディービルへの貢献を評し、ブロンズ像が設置されており、40年以上に亘り、ボディービルイベントとして世界最大規模の"Arnold Sports Festival(Arnold Classic)"が開催されている。亦、“クリスティーナ・ボナノス”のM.グレイスはコロンバス市出身である。序盤、家族を迎えに空港に行ったA.シュワルツェネッガーの“ローマン・メルニック”が、当該機の延着を知り、問い合わせからチケットカウンターへ向かう際、逸る気持ちから太った男とぶつかるシーンがある。この太った男は('99年~'16年迄の任期であった)オハイオ州コロンバス市長、M.B.コールマンのカメオ出演である。
・劇中に登場した真珠のネックレスの慰霊碑は、ドイツのユーバーリンゲンに実在し、地元のアーティスト、Andrea Zaumseilによって設置された。
・上述の通り、“ローマン・メルニック”を演じるA.シュワルツェネッガーの演技には少々失望したが、出所後、11年振りとなる墓地で、拳銃を突き附けられた際の面貌──深く刻まれた顔中に拡がる無数の皴、白く染まった不精髭、苦虫を潰した様な渋い複雑な表情は真に迫っており、前年の少し似た苦悩し続ける役どころだった『マギー('15)』よりも総体的に本作の演技の方が佳かった。そして「この問題に正解も間違いも無い」 「誰も謝ろうとしない、誰一人」と云う一連の彼の科白(問い掛け)は、彼自身がこの先背負い続けていくであろう十字架と共に万人の胸にに重く圧し掛かり、考えさせられる。
建設現場の現場監督ローマン・メルニックは、数カ月ぶりに帰ってくる妻...
建設現場の現場監督ローマン・メルニックは、数カ月ぶりに帰ってくる妻と身重の娘を迎えに空港へ向かう。しかし、妻と娘が乗った飛行機が空中で衝突事故を起こしたという衝撃の事実を聞かされる。事故による生存者はゼロ。家族を奪われたローマンは航空会社に謝罪を求めるが、表面的な補償のみという航空会社の心ない対応に憤りを感じていた。事故の真相を追いつづける中で、ローマンは事故に大きく関わる1人の航空管制官の存在を知る。1年後、ローマンは名前と住所を変えた元管制官ジェイクを妻子の前で刺殺してしまう。10年の刑期を経て釈放されたローマンは墓地で元管制官の息子に銃を突きつけられてしまう。謝罪の言葉を発したローマンを少年は撃たず「何処かに消えてくれ」と言い放たれてしまう。
図らずも被害者と加害者が入れ代わってしまう葛藤を絵がアイた作品。
素晴らしかった
映画秘宝10月号で紹介文を書く用にサンプルDVDで見た。シュワ映画とは思えない文芸的とも言えるシブくストイックな映画だった。シュワの演技力がすごくて驚いた。悲しみに耐えている男の様子が大きいな背中からにじむようであった。人生や社会にはどうにも取り返しのつかないことが起こってしまうもので、そんな事件にきちんと向き合った素晴らしい映画だった。
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