劇場公開日 2018年8月3日

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「本当にいいスパイもの」ミッション:インポッシブル フォールアウト R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5本当にいいスパイもの

2025年6月1日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

第5作に続く第6作は、トムが56歳の時の作品になる。
そしてこの物語はローグネーションからの続き物となる。
第5作のレビューに、私は何故イーサンはイルサとの恋愛にならなかったのかを考えたが、それは伏線だった。
この秀逸さは物語全体の深みを際立たせている。
MIⅢで描かれなかった部分をこの作品で描いた。
ジュリアの看病からIMFメンバーとイルサの訪問
ジュリアはイーサンに謝辞を述べた後、イルサにイーサンを任せるように、あたかも交代するように退く。
その際、イルサがジュリアの耳元で何かを囁く。
この何かは彼らにしかわからない気持ちや情緒を感じる。
おそらく言葉では表現できないものだろう。
「自分がいるべき場所にいられる幸せ」
これに見合うものなど、この世界にはないのかもしれない。
それを見つけて使命にする幸せ
世界平和や困っている人々を救いたい想い。
日常に感じる平凡な感謝すべき普通の幸せの上に存在するかもしれない彼らの感覚
それは確かにいくらお金をもらっても合わないことだと同時に、もしそれを「自分ができるのであればやる」という大いなる意思は、もしかしたらマズローの5段階の人間の欲求の最上段である「自己実現の欲求」の、さらに上にあるものなのかもしれない。
さて、
この作品の物語そのものも素晴らしい。
出来事や出会う人々すべてが伏線となっている。
そしてどの世界にもある「現場」と「決定権者」との意見の相違は、現場を知る者がどれほど重要な情報を持っているのか知らしめている。
CIA長官エリカ 後半のオーガストの裏切りからエリカが誰も信用できないと考えたことに現れている。
つまり、
IMFは、オーガストの行動や証拠から彼の裏切りを見抜いていく。
エリカが派遣した部隊自体はCIAの正規部隊だが、オーガストがシンジケートの残党で再結成した「アポストル」の一員だったため、結果的にCIA内部に敵がいたという構図になる。
「シンジケートのメンバーがCIA部隊にいた」というよりは、「シンジケートの後継組織のリーダーがCIAに潜伏していた」という理解が正しいと思われる。
若干複雑で面倒くさい部分だ。
さて、、
このような複雑さなどは物語を面白くさせるが、余りわからなくても十分に楽しめるように設計されているのもこの作品の秀逸な部分だろう。
核爆弾2発の行方と起爆を阻止する最後のシーンは見ごたえ十分だった。
そこに仕込んだのが今回とタイトル「フォールアウト」
句動詞の「落ちる」という意味合いと名詞の意味合いの差がここにあった。
英語の "fallout" にはいくつかの意味があるが、この映画の文脈では主に以下の2つに絞り込める。
1,核爆発後の放射性降下物(放射能の「フォールアウト」)
映画の中で核兵器や放射能に関する脅威が重要なテーマになっているため、この意味が直接的な意味を持つ。
2,(出来事の)悪影響・余波・後遺症
前作『ローグ・ネイション』での出来事の「後始末」や「余波」が、今作のストーリーに大きく影響しているという意味がある。
この2作品を「続き」とした点は、007カジノ・ロワイヤルと慰めの報酬を彷彿とさせる。
当時ジェームズボンドに起用されたダニエル・クレイグ
この007に大きく影響を与えたのが「ジェイソン・ボーン」シリーズだったと言われている。
従来ありがちだった007というスパイ作品に大きな一石を投じた「ジェイソンボーン」
殺し屋と記憶喪失の組み合わせは最高に面白かった。
そしてこのミッションインポッシブルシリーズの5作目
2002年公開された「ボーン・アイデンティティー」
2006年のミッションインポッシブル3に登場したのがジュリアだった。
ジュリアがこの作品にも登場することまでは予想できなかったが、同時にイーサンのごく一般的な人間性を感じることができる。
愛する人を是が非でも救わなければならないという使命感は、どこの誰でも共感できる。
ミッションインポッシブルの脚本家は、ジェイソンボーンシリーズに大きく影響を受けた007カジノロワイヤルとシリーズ初の続編という形式を作ったことで、この手法を取り入れてみたのだろうか。
ジュリアは第4作のゴーストプロトコルの最後にも登場していた。
それはイーサンが彼女を見守るシーンで、ジュリアはカナダで医療活動をしており、イーサンとは表向きには別れていることになっている。
しかし、実際にはイーサンが彼女を守るために「彼女が死んだことにした」だけで、まだ彼女を想い続けていることが示唆されている。
ところが、
ジュリアは別の男性と結婚していた。
彼女が見つけた「幸せ」
同時にイーサンと再会した心の揺らぎ
その心の揺らぎを見落とさない夫
二人の関係をルーサーから聞かされたイルサ
自分に嘘を付けないのがこの恋愛感情
でも彼らはそれぞれ、折り合いをつけて行く。
この切なさ。
新海監督の真骨頂でもあるこの切なさという感情は、人の心を大きく揺さぶる最大の武器かもしれない。
そこに感じる「余韻」
それこそがこのタイトルの真の意味だったのかもしれない。

R41
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