「トランスフォーマー meets E.T.」バンブルビー しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)
トランスフォーマー meets E.T.
本作は「トランスフォーマー」シリーズの前日譚であり、時代設定は80年代。映画は主人公が朝起きるなりウォークマンのスイッチを入れるシーンから始まる。作中、80年代洋楽が鳴りまくり、テレビゲームのブロック崩し、LPレコード、カセットテープ、80年代西海岸FMラジオ、「マイアミ・バイス」など当時のアイテムが山盛り出てくる。
そんな時代設定のせいか、本作はまるで「あの頃」のスピルバーグのSFジュブナイル映画のようだ。
子どもが主人公、異世界からやって来た友達、冒険、ボーイ・ミーツ・ガールの物語、背景にある家族との葛藤、などなど。
さらに言う。
本作は、製作総指揮としても関わっているスピルバーグの「E.T.」へのオマージュではないか。
宇宙から来た友達は初めは話せないが、徐々に言葉を獲得していき、主人公とコミュニケーションを深めていく。
「E.T.」では、主人公は自転車を走らせたが、本作ではフォルクスワーゲン・ビートルが疾走する。
そしてラスト近く、バンブルビーと少女が互いに指を延ばして触れさせるシーン!
そう、本作はトランスフォーマーによる「E.T.」なのである。
ほかの映画へのオマージュも出てくる。全体的な雰囲気は80年代に多くの青春映画を撮ったジョン・ヒューズ監督の作品に似ている(作中、バンブルビーが観ていた映画は同監督の代表作「ブレックファスト・クラブ」である)。
また、塔の上での闘いは「キングコング」、ハリアーが浮かび上るのは「トゥルーライズ」(主人公たちを追う軍人は、やはり「あの頃」のシュワルツェネッガーそっくりだ)、弟君がカラテをやってるのは「ベスト・キッド」、などなど。
やたらとハナシが肥大化していた「トランスフォーマー」シリーズを、青春映画に“トランスフォーム”させたことは評価したい。
ハデなSFXシーンよりも、ヒューマン・ドラマに軸足を置いた脚本も納得。
80年代テイストも楽しく、主人公の造形や、メカ好きな彼女の居場所であるガレージのたたずまいも素晴らしい。
ただねえ。
例えば、クライマックスに家族が現れるのも唐突感が拭えず。もう少し家族との葛藤、特に親の視点からも描いていたら、とか。
イヤミな金持ちの女の子と、学校でのやり取りもあれば、とか。
修理工場の人たちが、クライマックスで主人公に協力したら、とか。
伏線らしい伏線は「飛び込み」ぐらいで、もう少し脚本を掘り下げられなかったのかなあ、という思いがある。
惜しいな。