劇場公開日 2019年3月22日

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「小さな戦士(バンブルビー)が世界(シリーズ)を救う!」バンブルビー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0小さな戦士(バンブルビー)が世界(シリーズ)を救う!

2019年3月22日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

興奮

シリーズ1作目はあんなに興奮したのに、マンネリに陥ってすっかり飽きてしまった『トランスフォーマー』。
『~最後の騎士王』は大きく数字を落とし、シリーズ存続の危機の中、スピンオフ。しかも主役は、他のオートボットより比較的小柄なバンブルビー。
不安でしか無かったが、実際見てみたら…、
これが面白い! シリーズで一番良かったかも!
やったぜ、ビー!

何が良かったって、シリーズが進むにつれ、ごちゃごちゃごちゃごちゃ支離滅裂になった話から余計なものを根刮ぎ剃り落とし、非常にシンプルで見易くなった点。
ああ、もう、本当に、すっきりさっぱりした!
で、その話がまたいい。
『トランスフォーマー』と言えばゴリゴリのVFXロボット・アクションだが、テイストを変え、青春映画風にトランスフォーム!

母星サイバトロンの危機から逃れ、地球にやって来たバンブルビー。
一人の少女と出会う…。

女子高生のチャーリー。
車の整備など、機械いじりが趣味。
大好きだった父の死を引き摺り、再婚した母とは関係がぎくしゃく。新しい家族にも馴染めない。
学校でもいじめに遭う。
孤独な少女。

小柄だが、バンブルビーは勇敢な戦士だ。時々若気の至りで無茶し過ぎだが。
しかし、故郷を遠く離れ、独りぼっち。
仲間も居ない。
身体中、故障している。
敵ディセプティコンにも追われている。
幾ら勇敢な戦士でも、怖い。
彼もまた孤独を抱えている。

孤独な者同士が出会って…。
定番だが、一人と一体、少女とロボットの交流が、シリーズでこれまで描かれた事の無いくらい丁寧に描写。
ハートフルに、ユーモラスに、そして感動的に。
終盤危機に陥り、必死でチャーリーを守ろうとするバンブルビー。
チャーリーとて同じ。囚われたバンブルビーを果敢に救出に向かう。
高飛び込みが得意なチャーリーだったが、父を亡くしてからやらなくなり…。終盤のあのシーンの高飛び込みにはやられたね。ちょっとウルッとしてしまったぜ。
勿論、ラストシーンは言うまでもなく。
と言うか、『トランスフォーマー』で初めて、こんなにも感動させられるとは…!
泣かせるぜ、ビー!

そんなの『トランスフォーマー』じゃない!…と言うなかれ。
迫力のVFXやロボット・バトルは存分にあり。
入れ替わり立ち替わり、目が疲れるほどのド迫力アクションではなく、スケールもダウンしたものの、しっかりと見せ場と興奮を抑え、ロボットとロボットの一対一の対決、バンブルビーの闘いぶりをじっくりと堪能出来る。
カッコいいぜ、ビー!

そう、本作はバンブルビーの魅力をたっぷり見れる。
バツが悪くなるとすぐ車に変形したり、
ガレージでおとなしくしててと言われたのに、家の中に入り込んじゃってメチャクチャにしたり(予告編でもお馴染み)、
チャーリーと一緒にいじめっ子に仕返ししたり、
パントマイムな動作も含め、
可愛いぜ、ビー!

チャーリー役、ヘイリー・スタインフェルドも負けてはいない。
孤独を抱えているものの、芯は強く、そこは若手実力派さすがの演技力でしっかり体現。魅力もたっぷりで、個人的に『トゥルー・グリット』以来、最高の役だったと思う。
彼女に気がある隣人の青年メモ役のジョージ・レンデボーグJrもナイスな役回り。

前日譚だけあって、ファンなら嬉しいリンクネタもいっぱい。
バンブルビーが声を失った経緯。
ラジオを介して話す事が出来るようになったきっかけ。
“バンブルビー”という名の由来。
お馴染みの車体に変形した理由。
全ては、一人の少女との欠けがえのない大切な出会いと交流…。

まるで、ジョン・ヒューズの80年代青春映画、はたまた製作総指揮のスピルバーグの『E.T.』のような、何処かノスタルジックで懐かしく…。
時代設定が80年代なので、80年代カルチャーもふんだんで、特に楽曲は洋楽好きなら堪らないだろう。
本家にも笑いはあるが、ベイさんのユーモアセンスはベタだったのに対し、こちらは絶妙なユーモア。
チャーリーと家族の復縁のドラマでもある。
少女とロボットの交流を軸に、青春映画要素、家族ドラマ、ユーモア、SFロボット・アクション、スリル、シリーズネタや80年代カルチャーを詰め込み。
全く破綻せず、シリーズ屈指とも言える極上のエンタメに仕上げたトラヴィス・ナイト監督の手腕に拍手!
とても実写映画初とは思えず、見事シリーズに新風を吹き込んだ。
日本を舞台にした『KUBO』や『トランスフォーマー』も元ネタは日本の玩具で、つくづく日本と縁あり、何だか親しみを感じる。

『~最後の騎士王』で、もうここまでかな…と思った『トランスフォーマー』。
ところがどっこい!
本作の好評のお陰で、シリーズ再起の予感が。
シリーズ第6弾は勿論、
他のオートボットのスピンオフも出来そう。
冒頭のサイバトロン星での戦争の話も出来そう。
今、敵キャラを主役にした作品も人気なので、ディセプティコンのスピンオフなんかも…?
バンブルビーの続編も…あ、でも、これはこれだけの方がいいな。

シリーズ見た事無い人も、シリーズのファンも楽しめる。
もう一度。やったぜ、ビー!
小さな戦士(バンブルビー)が世界(シリーズ)を救った!

近大
2019年3月22日

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