「☆☆☆★★★ 《やりがいは人を生き返らせる》 鑑賞前はお気楽なコメ...」ダウンサイズ 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
☆☆☆★★★ 《やりがいは人を生き返らせる》 鑑賞前はお気楽なコメ...
☆☆☆★★★
《やりがいは人を生き返らせる》
鑑賞前はお気楽なコメディー映画を想像していたら違っていた。
或る意味では真面目な反戦・反核運動及び宗教映画なのかもしれない。
人間の小型化計画。
これを実現させたのは、地球温暖化に警鐘を鳴らした科学者によるもの。
人間とはおかしな生き物だ。「メリットが有る!」…と思ったら、どんどんとこの小型化計画に追随し、人生を満喫する人達が後を絶たない。
主人公のマット・ディモンも、残りの人生を謳歌する予定だった…のだが。
訳有って彼の想いは打ち砕かれる…のだが!
そこに現れた1人の女性。
彼女の存在によってマット・ディモンは生きがいを取り戻して行く。
…と。ここまで書いたところで、ちょっとだけ監督アレクサンダー・ペインに関してググってみた。
これまでの作品だと、比較的低予算だったのだが。マット・ディモンを主役にし、ストーリー上で現実味を持たせる為に、必要と思える場面を撮って行ったらかなりの予算になった…との事。
そしてこの作品が、黒澤の『赤ひげ』に影響されている事も。
なるほど。マット・ディモンは元医者の卵だから、加山雄三にあたる役どころと言えるし。ベトナム人女性の彼女は『赤ひげ』での二木てるみを意識した役なのかもしれない。
彼女は、末期症状の女性と同居しているのだけど。彼が医者らしいと知ると、その女性の為にと彼に或るお願いをする。
その結果「笑って◯◯◯行った!」…と言われる。
このエピソードは。言われて観れば『赤ひげ』に於ける藤原鎌足と山崎務の2人のキャラクターを併せたエピソードの様な…と言えば穿ち過ぎか?
終盤に向かい、真の小型化計画が始まったコロニーが登場するに及び。ハリウッドの娯楽映画で有りながら、いよいよ映画は宗教的な話になって行く。
何しろ◯◯の◯舟計画が進んでいたのだ!
このコロニーだが。何処かベトナム戦争末期に、アメリカで広がって行った反戦運動を彷彿とさせる。
だからこそのベトナム人の彼女なのか?と思い。監督の情報をウイキペディアで見たのだが、特に反戦・反核等の運動をしている情報はなかった。
…しかし共同脚本でも有る本作には、間違いなく地球温暖化に対する警告と共に。マット・ディモンがベトナム人の彼女に連れられて目にする壁の向こう側(国境の向こう側)には。小型化計画には本来あり得なかった【貧困】が確かに存在していた。
この辺り等は、声高に叫ぶ事は無くとも。何処か現在のトランプ政権の移民政策に対する挑発とも受け取る事も出来ないだろうか?
エンドクレジットの背景にはレオナルド・ダ・ビンチの有名な絵が。
ダ・ビンチは「受胎告知」や「岩窟の聖母」「最後の晩餐」等の宗教画を残した人。
正直に言うと、ダ・ビンチに関しては特に詳しい訳ではなく。有名な絵画程度ならば多少は知っているだけの知識。
映画は確かに、宗教的側面や地球温暖化・反戦・反核。それと現状のトランプ政権に対し、何らかのメッセージを内包させている様に見える。
人類初の小型人が!ってところも…皮肉っちゃ〜皮肉(-_-)
それら多くのエピソードが一本の映画として観た場合に。どことなくバラバラになっていて纏まりが無い印象を観客に与えてしまっている気がするのが、ちょっと勿体ないと思ってしまった。
ところで、もしも自分がマット・ディモンの立場になって小型化するのか?しないのか?となった場合どう決断するのかなあ〜?…と、ちょっと考える。
自分にとって大事なモノ。個人的には【映画】【競馬】【パチンコ】(ここ数年は無くても良いかなあ〜…だけど)【プロレス】
この中の一つでも、小型化した社会に無いのならば答えは「NO!」だ!
2018年3月6日 TOHOシネマズ日本橋/スクリーン9