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「大草原の大きな家」マザー! kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
大草原の大きな家
住み始めたばかりの詩人(ハビエル・バルデム)とは親子ほど年の離れた妻(ジェニファー・ローレンス)が家の修繕に精を出す。そこへ次から次へと訪れる不条理な客人たち。最初は整形外科医であり、詩人の熱烈なファンだという男(エド・ハリス)。見終わってから考えると、禁煙だというのに平気でタバコに火を点けるところ以外は彼が一番まともな客人だったが、理不尽な事件の発端でもあった。妻はそんな彼のジッポライターを隠してしまったことが原因なのだろうか、様々な珍客によって彼女の人生も狂ってしまう。
翌日訪れた、図々しさの極である彼の妻(ミシェル・ファイファー)が前半ではもっとも苛立たしい客だった。自分のファンだからというだけで、親切心も甚だしい詩人もどことなく秘密がある雰囲気。やがて2人の息子もやってきて、兄が弟を殺してしまうという衝撃の展開。人が良すぎる詩人は自分たちの家で葬式まで執り行ってしまうのだ。まだ修繕も完了しない中、家の中もズタズタにされてしまうが、スランプ中だった詩人もこの災難をネタに新作への意欲を沸かし、また、性生活から遠のいていた彼は子作りにも励みだす。
前半だけでも不条理感たっぷりで、車も無さそうだし、どうやってこの家にたどり着いたかも、なぜか妻だけがずっと裸足だったのかも一切説明がない。時は流れ、傑作となる詩を描き終え、妊娠して順調になった妻はさらに不条理な世界を体感する。自分が初めて読んだハズの原稿なのに、編集者から祝いの言葉、さらには取材陣も訪れるという・・・。それからが怒涛の訪問客。家の中は荒らされ放題で、暴徒化した人々にデモ隊やそれを阻止する警官隊。ついには戦争まで起こってしまったり、処刑を行うテロリスト。そして、人々の死を追悼する教会まで出来上がってしまうのだ。順番が定かではないが、なんだか凄いものを見てしまった気がする。狂ってしまい、破滅へと導かれた家だったが、最初から創り直せばいいと一点張りの詩人。戦争の荒れ狂った中、出産してしまった妻も創造の女神と崇められ、悪い気もしなかったのも束の間・・・狂信者たちによって赤ん坊は食いちぎられてしまったのだ。何とおぞましい展開。
ネットでの解説サイトをチェックすると、旧約聖書のメタファーだということも納得できました。ただ、産まれてきた子を食うカニバリズムは聖書とは関係なく、中盤のトイレの中の異物や、ラストの心臓なんてのも無縁のもの。序盤で壁が心臓のような鼓動を感じるのも、家が生きていることを表しているのでしょうか。地球のメタファーだと捉えることもできるようですが、そんなことは抜きにしても、とにかく破壊的なシークエンスは強烈なインパクトがありました。さらに、大切なクリスタルがこんな具合にループして、新しい女とやり直す詩人の哲学的なこと・・・悪夢を見てしまいそうですけど、まさしく心臓をつかまれるほど凄い映画でした。特に親切心に付け込んで悪意を蔓延させるようなことは国家間で起こりそうな大問題。まぁ、全ては理解できませんでしたが、何かを感じ取ればOKってことで、大好きな作品の一つになりそうです。
こちらこそいつもありがとうございます。確かに満点少ないですが、素晴らしかったです。ダーレンは元々好きでしたが、本当天才ですね。この世の不条理の原因がまさか神とは。これからも批判にめげない作品を製作する監督だと思いました。