「父と娘、母と息子、それぞれの親子に愛と祈りを」祈りの幕が下りる時 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
父と娘、母と息子、それぞれの親子に愛と祈りを
東野圭吾原作『新参者』シリーズ完結編。
原作は未読、TVドラマは未見、劇場版前作のみの鑑賞。
それでも劇場版前作はなかなか良かったが、今作はそれ以上!
良質ヒューマン・ミステリーを堪能させて貰った。
都内のアパートで、滋賀県在住の女性の絞殺死体が発見され、その部屋の住人も姿を消す。
捜査を進めると、被害者は同級生の女性舞台演出家に会っていた事が分かり…。
捜査線上に浮上した演出家の存在。
事件の真相なども全て、彼女の過去に関係する。
その哀しい過去。
それ故行われた殺人。
そして、親子愛…。
これはもう、『砂の器』だ。親子が各地を放浪する回想シーンなんてまさに。
東野圭吾は『真夏の方程式』でも『砂の器』を彷彿、本作ではさらにそれが色濃く反映され、人によってはまんまとか劣化とか感じるのも無理ないが、むしろリスペクトを感じた。
これだけでも充分見応えあったが、そこに、主人公・加賀の過去と思いがけない繋がりが…。
加賀が幼い頃失踪した母。
被害者と母の遺品に共通する日本橋界隈12の橋の名が記されたカレンダー。
母の晩年の恋人の存在。
加賀が日本橋署にこだわる理由。
加賀と演出家の関係…。
事件のキーは、自分なのか…?
阿部寛は円熟の好演。
意外や初共演の松嶋菜々子。あるシーンである人物を追い詰める気迫は凄みたっぷりだが、その佇まい、やっぱ超綺麗だな。
豪華実力派の中、小日向文世の父性愛が泣かせる。
最初は人間関係入り込み、加賀の過去などもTVドラマを見てないと今一つ伝わるものも伝わって来ない。
演出・音楽・台詞回しなどで少々大袈裟でクドイ点もあったものの、見ていく内に話の面白さに引き込まれていく。
東京~滋賀~仙台を股に駆け、過去と現在が交錯し、謎も捜査も話も快テンポ。
事件の真相が明らかになる後半は、涙腺と感情を揺さぶる。
ネタバレチェックして事件の真相や結末を語っても良かったが(一応念の為チェック)、やはりこれは見て感じ取って貰いたい。
敢えて言えるなら、
親の愛は偉大と言うが、ここまで出来るものなのか。
我が子の将来を見守り、祈る為に、ここまで…。
子供もその受け止めた親の愛や祈りを返す為に…。
韓国サスペンス/ミステリーがKO級のインパクトならば、
これぞ東野圭吾ミステリーの醍醐味。
哀しくも感動的な邦画らしいヒューマン・ミステリー。