「戦後平和主義の香り」宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第三章「純愛篇」 曽羅密さんの映画レビュー(感想・評価)
戦後平和主義の香り
小学生の時に映画館で『宇宙戦艦ヤマト 完結編』を観ているのだが、ヤマト世代は筆者よりももう少し上の世代であり、筆者はファーストガンダム世代である。
保育園児の時からガンダムは観ていて、小学生時代はガンプラ作りに明け暮れていた。
ヤマトも再放送で観てはいるはずだし、おおよそのあらましは知っているのだがガンダムほどの思い入れはない。
とは言え、新作の総集編である劇場版『宇宙戦艦ヤマト2199 追憶の航海』とその続編となる完全新作の『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』は映画館で鑑賞している。
そしてその流れから本シリーズも第一章から観始めた次第である。
本シリーズは劇場アニメ『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』とTVアニメ『宇宙戦艦ヤマト2』のリメイクになっているらしいが、全く内容を覚えていないので第一章から新鮮な気持ちで観ている。
前作で直撃を受けたヤマトはやっぱり破壊されていなかったわけだが、物語の展開上わかってはいても、あれだけの直撃を受けて無傷でいるのはやはり御都合主義に見えてしまう。
集合超兵器「レギオネル・カノーネ」を機能麻痺させた敵を殺さない波動砲の使用法も科学的な根拠が都合のいいように映る。
またこれは第一章から全体的に感じることなのだが、人間関係や友情の描き方に週間少年ジャンプ的な子どもっぽさを感じる。(実は昔のジャンプは『ブラックエンジェルズ』や『コブラ』など青年向けの作品も連載されていた)
大帝ズォーダーから3隻のうち1隻を助けると難題を出された古代が雪を探す場面で大上段に彼女への溢れる愛を語るシーンも、観ているこちらがこっぱずかしくなるくらいハリウッド映画的だ。
その後のやぶれかぶれな雪を救おうとする古代の行動も解せないし、なんだかよくわからないうちに助かる展開も無理がある。
さらにその古代の行動にズォーダーがちょっと感心してしまうって、ええ?お前それぐらいで動揺するちっちゃいボスキャラなのか!と突っ込みを入れたくなる。
ズォーダーの問いかける人間の愛は「エゴ」という信念も既に使い古された命題に思えてしまう。
なおズォーダーの化けていたレドラウズ博士は名前がアナグラムになっていたらしい。Zworder→Redrowzなのだろうか?
キャラクターの絵柄は完全に松本零士的なものからはかけ離れてしまって、現代的なデザインを反映して若干目が大きい。
ただヤマトをはじめとするメカデザインはオリジナルを踏襲しつつも洗練されたアレンジが施されているので、これから大規模な艦隊戦などが増えていく場面でより活躍に期待が持てる。
なお1点、ヤマトが着陸する際に船体下部にある第三艦橋で着底して全重量を支えているように見えるが、安定も悪く物理上困難ではないだろうか。
本シリーズはシリーズ構成と脚本を福井晴敏が担当している。
筆者は彼の小説は読んだことはないが、『亡国のイージス』や『終戦のローレライ』『機動戦士カンダムUC』シリーズなどの映像化作品を比較的観ている。
福井の作品は戦争を題材にしたものが多いが、内容を見る限り微妙に戦後平和主義の香りがする。
本作も同様だが、福井作品で登場人物が語る台詞にどこか現実感がないのはそこに原因があるのではないかと思っている。
それでも本シリーズがどのような結末を迎えるのか興味はあるので続けて観ていくつもりである。