「土屋太鳳と芳根京子の二人で一人感」累 かさね つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
土屋太鳳と芳根京子の二人で一人感
想像していたよりもかなり面白い作品だったね。
土屋太鳳と芳根京子の演技合戦が一番の見所ってことになるかな。二人とも抜群に上手かったとは言わないけれど、こういうのはバランスが大事なんだ。どちらかだけすごく演技が上手いと浮いてしまってダメになるんだよね。そういう意味でも二人のバランスは絶妙で、相乗効果ですごく上手く演じているように思えるんだ。
終盤の屋上でのやり取りはなかなか見応えもあったし、特に注目もしていなかった女優二人だけど、ちょっと気にかけようかなというくらいには頑張っていて良かったね。
物語の方は、かなり面白い作りになっていて、作品全体のクオリティは高くなかったけど、最後まで釘付けだったな。
まず、累がこれから進んでいく未来と舞台の演目の内容がリンクしているのが良いよね。
最初の演目は「かもめ」で、これは芸術を志す若者たちの青春群像劇で、女優を目指しているキャラクターも登場する。
「かもめ」のキャラクターが成長していくように、累も消極的で卑屈な性格から女優として成功する事を積極的に目指すようになる。あと恋愛も。
この時は、ニナは嫌な女で累のことを応援する気持ちだったはずだ。
ニナの病気がどんなものかわかったあと、後半の演目である「サロメ」が始まる。こちらは内容がすごく重要なので作品内で演目内容を教えてくれたのは親切だったね。
「サロメ」もまた累の未来とリンクする。気が付けば、あれだけ応援していたはずの累は、狂気の人物に変わり、嫌な女だったはずのニナに肩入れしていくことになる。
このように、顔だけでなく二つの舞台とリンクした立場入れ替わりの物語で、上手いストーリーだったと思う。
なんとなくナタリー・ポートマンの「ブラックスワン」が頭をよぎる、どことなく似た感じの作品だったけれど、二人の人間が一人の人物を形成するという、不思議アイテムの口紅を使ったファンタジックな逆転状態が斬新で良かったし、やっぱり最初に書いたように、土屋太鳳と芳根京子の演技の熱さのバランスが絶妙で、一人の人間が分裂して二人になったような、二人で一人感は最高だったよね。