「朝ドラヒロイン、迫真の演技対決!」累 かさね しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
朝ドラヒロイン、迫真の演技対決!
原作は未読です。
土屋太鳳と芳根京子。共に朝ドラ主演で国民的女優になったふたりの初共演作と云うことで興味津々で観に行きました。
様々な感情が渦巻き絡み合っていました。役になり切ったふたりの俳優魂に引きつけられました。これぞ人間的迫力。
「大奥」しかり、昼ドラしかり、愛憎ドロドロ、本性を剥き出しにしてぶつかり合う物語は無条件に面白い!
土屋太鳳は、劇中舞台でのニーナやサロメ役もこなしながら得意のダンスも披露するなど、凄まじいバイタリティー。しかも累と入れ替わった後では天性の演技力を持っている設定なので、それをどのように体現すれば良いかと、試行錯誤の毎日だったんじゃないかと想像しました。
一方の芳根京子も、劣等感から抑え込んでいた欲望が、ニナと秘密の関係を続けていく中で肥大し、暴走していく累・サイドと、累に自分の居場所を奪われていくことに焦燥し、嫉妬と憎悪が徐々に剥き出しになっていくニナ・サイドの両方を巧みに演じ分けていて、圧倒されました。
醜ければ劣るのか。美しければ優れているのか。見た目と心の両面からアプローチして、人間の底知れぬ欲望や羨望、嫉妬を炙り出していく過程が秀逸でした。
優劣や美醜とはいったい何か。問いに籠められた意味を考えるに連れて価値観が揺さぶられ、怒涛のクライマックスへ雪崩れ込んでいくカタルシスに酔い痴れました。
[余談]
見事なふたりの演技に水を差していたのが、舞台監督役の横山裕でした。彼が出て来ると、何故か画面が面白くなくなりました。そもそも、役どころであるカリスマ性が全然感じられない。惹かれる要素が皆無。「破門 ふたりのヤクビョーガミ」の時みたいな、ちゃらんぽらんな役の方が向いているのかもしれないなと思いました(ファンの方に怒られそう)。
※修正(2023/08/27)