「この映画はゴッホへの愛か、狂気か。正気とは思えない技法で制作された、アニメーションのマスターピース。」ゴッホ 最期の手紙 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画はゴッホへの愛か、狂気か。正気とは思えない技法で制作された、アニメーションのマスターピース。
近代芸術を代表する画家、フィンセント・ファン・ゴッホ。
彼の死後に発見された手紙を弟テオに届けるため、パリへと向かった青年アルマンだったが、ゴッホに縁のある人々から話を聞くうちに、次第に彼の死に対し疑問を抱くようになる。
ゴッホの死の真相へと迫るミステリー・アニメ。
ゴッホの主治医だったガシェ医師の娘、マルグリット・ガシェを演じたのは『グランド・ブダペスト・ホテル』『ブルックリン』の、名優シアーシャ・ローナン。
6万5,000フレームにも及ぶ映像を、油絵を繋ぎ合わせることでアニメーションにする、という常軌を逸した技法で表現した、これまでに全く観たことのない芸術作品。
あまりに自分の知っているアニメーション、もっと言えば自分の知っている映画とはかけ離れた映像表現だった為、とにかく度肝を抜かれた。
あまりに凄すぎるヴィジュアルに驚くあまり、映画の冒頭は全くお話が頭に入ってこなかった😅
ゴッホのことを知らない人は居ないだろうが、彼の生涯について詳しく知っている人は少ないのでは?
ちなみに自分は「耳を切り落として自殺した人。生涯で一枚しか絵が売れなかったが、死後に評価されてレジェンドとして扱われるようになった可哀想な人。」くらいの知識しかなかった。知っている絵も「ひまわり」くらい。
んだもんで、登場人物や描かれる風景などが実際のゴッホの作品を下敷きにして描き起こされたものだと後から知ってビックリ!
「黄色い家」や「夜のカフェテラス」などの作品が、そのままアニメーションの舞台になっているって、そんな映画有り!?
常識では考えられない情熱で作られた、正にゴッホに対するラヴ・レターのような作品です。
ヴィジュアルの凄みは世界でもオンリーワンなのに対し、物語はちょっと残念。
手紙の配達なんて面倒くせーよ、というスタンスの若者が、徐々にゴッホ自殺事件に対し興味を持ち始め、だんだんと探偵のように調査をしていき、遂に真相らしきものへと辿り着くというストーリーラインは面白い!
…が、オチが弱い😔
史実の上でもはっきりとしていない事柄を扱っている以上、真犯人はおまえだっ!的な決着をつけられなかったというのはわかるんだけど、やっぱり映画的にスッキリするような結末が欲しかったところ。
同じ人物でも、観察する者によって受ける印象は異なる。ある者は礼儀正しい紳士だと言い、ある者は異常な背教者だと言う。
これは人間関係における真理であると同時に、その価値を信じる人にとっては宝だが、理解し得ない人にとってはガラクタだという、芸術というものに対するメタファーのようだ。
探偵のように振る舞うアルマン。ゴッホの死後に彼の身に起きた悲劇を追及する彼に対し、渡し船の主人が生前彼に対して良き友人であったのかと問い詰める。
これはゴッホが生きている間には評価せず、死後になってようやく彼を持ち上げた評論家たちに対するカウンターとも受け止められる。
夏目漱石の小説「草枕」の主人公も画家だが、彼は仕切りに探偵について悪態をつく。
探偵に「屁の勘定」をされては堪らない。とこう言う。
ここにおいて、探偵とは当然評論家のことを比喩しているのであろうが、この映画の制作者も「草枕」からインスパイアされたのかな?とちょっと思ったりしました。
オチが弱いのがちと欠点だけど、ゴッホの絵画のようなヴィジュアルがもたらす不穏な雰囲気は、終盤まで物語の緊張感を持続させてくれるので、アーティスティックな作品ながら退屈さは一切ない。
どうなるのか気になって、常に前のめりになりながら鑑賞していた。
こんなヤバい映画は観たことがなかったし、今後こういう映画が生み出されるとは思えない。
狂気すら感じられるゴッホへの執着から目が離せない。
人によって合う合わないはあるだろうが、絶対に観て損はしないアニメーション界のマスターピース!
ぷにゃぷにゃさん、コメントありがとうございます😊
今まで観てきたアニメの中で一番クレイジーな作品でした💦
ちなみに本作はアカデミー賞にもノミネートされているほどの意欲作ですが、ピクサーの作品『リメンバー・ミー』に敗れ受賞を逃しています。『リメンバー・ミー』相手がじゃ分が悪かったですね😖
興味がお有りでしたら是非一度ご覧になってみて下さい!損はしないと思います♪
えええー、こんな作品があるの知りませんでした!
ストップモーションアニメよりクレイジーかも?
ゴッホの自殺の真相かー。
たとえフィクションでも気になりますねー。