「万人受けはしないが、ヴェンダース好きには見逃せない実験作」アランフエスの麗しき日々 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
万人受けはしないが、ヴェンダース好きには見逃せない実験作
冒頭に映し出されるパリの街並みは、静止画かと思われるほど美しいが、その一方で若干の冷たさすら感じる。徐々にカメラは郊外へと移り、一軒の屋敷の庭先へ。タイプライターに向かって作家が紡ぎ出す「愛について」のあれこれの言葉を、目の前に立つ創造上の男女が演じていくという趣向。彼らは恋人?友人?それとも何かのカウンセリング?やがて二人は作家の創造という範疇を超えて、自発的に言葉を語り始める。
再現映像もなく、ただ言葉だけで延々と語られる会話は時に抽象的で、耐え難い。が、ヴィム・ヴェンダースは代表作『ベルリン・天使の詩』でもナレーションの詩を背景に、天使たちが彷徨い続ける絵をつむぎ出していたのを思い出す。本作もまた、その声の響き、詩や戯曲のような言葉たちが、俳優の表情、そして庭先の木々や陽光とともに穏やかに談笑し、跳躍しているかのよう。決して万人受けではないが、ヴェンダース好きには見逃せない実験作。
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